FISHING
釣りに興味のないひとに、
何を話せばいいのだろうか?

年末年始の「ほぼ日」は、
何かお役に立つようなことを!
(やろうとしたけど、無理だったかな?)
 

齋藤海仁さんの、
1999年のお年玉的なコラム。


1.この1999年は、有名なアンゴルモアの大王が、
なんかしにくる年らしいのですが、
ヤツから(             )を守りたい。
この、(  )の中にコトバを挿入して、
そのことについて、考えとか意志とか理由とかなんでも、
たっぷり書いてください。


(  希望   )
恐怖の大王などという
メタフォリックなものに対しては
抽象的に答えざるをえません。
それを死の恐怖と言い換えるなら、
心をよき計画で満たすことです。
どんなに長生きしても達成できず、
いつ死んでも悔いが残らないような
壮大なヤツでね。


2.「ほぼ日」の読者に、どういうことを期待してますか。
よく読者に筆者への注文をたずねたりしてますが、
ここでは逆なんです。


特にございません。


3.いっちばん好きな食べ物はなんですか?
おせちに飽きている読者に、教えてください。
できたら、いますぐ食べたいと思わせるくらいに、
たっぷり、強くおすすめくださいませ。


いっちばんと言われると困りますが、
好きな食べものは魚です。

1. 晩秋から年の暮れにかけて鴨居沖で釣れるマダイ。
越冬に向け、栄養豊富な甲殻類をたっぷり食べるため、
脂の乗りは最高。釣りたての新鮮な身は、
甘い脂がほどよく効いたジェリー状の食感がたまりません。
そのへんで買える鯛とは明らかに味が違います。

2.真冬に磯の際で釣れる真っ黒なカサゴ。
突き出した下唇、くすんだような体色と、見てくれは最悪。
だが、甘辛く煮付けて、
ふっくらとした白身に煮汁が染み込むと、
リッチな味わいのアメ色のトロみが出てくる。
ほっぺた、くちびる、目のまわりなどが秀逸。

3.アオリイカの刺身。
イカそうめんが合うヤリイカなどとは違って、
厚めの刺身でいただくと、
より一層、コクと透明感のある甘さが味わえる。
釣りたてはモチモチの食感も◎。
今シーズンは大発生していますよ。

4.芦ノ湖のワカサギ
ワカサギといっても、湖よって味が全然違う。
一説には、芦ノ湖の栄養状態は
ワカサギにとって絶妙という。
釣ったものをボートの生け簀に入れておき、
ごはんだけを持参して、
その場で天ぷらや唐揚げで食べれば、
ワカサギも空気も景色もすべてこの上なし。
今年も釣りに行こうっと。

カワハギ、ヒラメ、オニカサゴ、金黒メバルなどなど、
ほかにもおいしい魚はたくさんありますが、
きりがないので、このへんでやめておきます  


4.ヒマでこまっている、正月の読者のみなさまに、
ヒマのつぶしかたを伝授してください。
本なら書名とか、なるべく具体的にお願いします。


本なら、ということなので、
おすすめの釣り文学を紹介させていただきます。

1.メルヴィル「白鯨(上・下)」新潮文庫
釣り人の傾向のひとつに大物志向がある。
より大きな魚を釣りたいという人はロマンティスト。
そういう人にはこの「白鯨」がぴったりだ。
捕鯨が「釣り」といえるかどうかはさておき、
これ以上ない大物をねらう意味で、
釣り文学の最高峰といえる作品。

2.ピーター・ベンチリー「JAWS」早川文庫
決してホラーやサスペンスではない。
JAWSは正真正銘の釣り文学。
これも大物相手だが、ロマンというより、
冒険小説的要素が強い。
映画の方が有名で、もちろんビデオでも見られる。
個人的には、映画の中でフェンウィックというメーカーの
真っ白な竿を使っているのが印象に残っている。

3.開高健「根釧原野で幻の魚を釣るということ」
文春文庫「私の釣魚大全」収録
ふつう、釣りは趣味であり、生業ではない。
だとすれば、
釣りに求められるのは非日常的世界への旅立ちである。
これまで読んだ釣り紀行のなかで、
最高のカタルシスを与えてくれた珠玉の短編。

他にもたくさん本は出ておりますが、何はともあれ、
実際に釣りに行くのがいちばんです。
暇なんて言葉を忘れてしまうほど、
楽しいことがいっぱい待っていますから。

斎藤海仁

1999-01-02-SAT

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