お客さまとの出会い

field/dreamで独立するまでは、ぼくは
オンワード樫山という会社に身を置いて
服づくりに携わってきました。
すべて百貨店経由で販売していたので、
お客さまと直に接する機会は
ほとんどなかったのですよ。

店を構えてお客さまを迎え入れる、
という経験は、
field/dreamがはじめてだったのです。

field/dream1号店は、自由ケ丘でした。
ほんとうにぼくのお店に
来てくれる人がいるんだろうか・・・?
開店の前日は、不安で眠れませんでした。

開店当日、店の入り口に並んでくれたお客さまを見て、
ぼくは涙が出そうになりました。
実際に買い物をして下さった方の後ろ姿に
「ああ、ありがとうございます」と
何度もふかぶかと頭を下げたものです。
お客さまが、わざわざ
服を見るために足を運んで下さるというのは、
ほんとうにありがたいことです。

その後も、名札をつけて
店員として、ちょくちょく
店に顔を出しているんですよ。

「ああ、この方はfield/dreamがぴったり似合う人だ」
と思えるようなお客さまが
服を買って下さっているのを見ると、
ほんとうにうれしいです。
そういうお客様には、
自分の「社長」という身分を明かして、
なんと、お食事に誘うんです。
そして、お客さまを10名くらい集めた
お食事会を開くんです。
いままで何回やったかな?
自由ケ丘のあたりの、
イタリアンレストランなんかにお集まりいただいて、
洋服だけに限らず、いろんな話をお伺いしているんです。

よく人から
「子供服はつくらないんですか?」と、
聞かれるのですが、はっきり言ってしまうと、
つくるつもりはないんです。

それは、母親としてではなく、
女性として服を選んでほしいからなんです。
自分の服を選ぶためにお店に来たのに、
子供服が目に入ってしまったら、
女性は母親になってしまうでしょう?
ぼくは、女性でありつづける素敵な女の人に、
服を着てもらいたい、と思う。
男性にも同じことが言えると思います。

自分の役割に着せる洋服ではなく、
自分自身でいられるような服を
選んでほしいと思っています。
第一回 ぼくの好きなトラッド

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