おさるアイコン ほぼ日の怪談2007

怪・その15
「旧館は半額」

まだ私が地方担当の営業をしていた頃の話。
2か月に1回、
出張という形で得意先を回るのが常でした。

その日は春先。
安いビジネスホテルを予約してあったので、
午後7時にはチェックインしました。
たまたまその日はキャンペーン期間とかで
「旧館」に泊まれば半額とのこと。
出張費が限られている下っ端営業マンの私は
迷わず「旧館」に泊まることにしました。

案内された部屋は、
テレビがいまどき珍しい、
赤い14インチのチャンネル式。
申し訳程度においてあるテーブルと椅子も、
私が生まれた昭和40年代を思わせる
年代物でした。
廊下の一番奥の角部屋だったので、
ちょっと嫌な感じもあったのですが、
私はこういう「怖い類いの話」には
あまり興味がなく、縁もゆかりもなかったので、
かび臭いニオイのほかは
あまり気にしませんでした。

さてその日、
一人でやることも特になかったので、
シャワーを浴びて夜11時くらいには
ベッドに入ってしまいました。
ベッドは掛け布団を入れても
床からひざくらいまでしかない低いものでした。
とにかくかび臭いのと古い感じの臭いが
気になってしかたありませんでしたが、
どうやら寝入ってしまったようです。

気がつくと、部屋の真ん中あたりが
うっすら青くなっていました。
寝ぼけているのかな、と目を凝らすと、
そこにはツギハギの着物を着た
おかっぱ頭の女の子の顔が
正面に見えました。

まず女の子が部屋の中にいる事がおかしい‥‥、
それに低いベッドで
左腕を下に寝ている状態から見ているのに、
その高さに顔があるのって‥‥。

そのときの感想は「え〜、なんで、オレ〜?」。
ちゃんと確認するのが怖くて、
寝返りをうってしまったので
その後はどうなったのかわかりません。
翌日ホテルに聞いてみる勇気もなく、
この手の話によくある「オチ」的な
後日談もありません。
やっぱり確認したほうがよかったのでしょうか。

(しのけん)

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2007-08-15-WED