おさるアイコン ほぼ日の怪談2007

怪・その12
「突然あらわれた霧」

私が小学生だったとき、
父の実家へ遊びに行った、
その帰り道のことです。

父の実家から自宅へは、高速道路を通るルートと
一般道を通るルートと2つのルートがあります。
そのときは夜も遅く、道も空いているということで
一般道ルートを通ることになりました。

高速を通るときは、田舎とはいえ、
主要道路を走るので外灯もあり、
対向車もありといった具合なのですが、
一般道ルートの場合、
田んぼの中の一本道を
しばらく走ることになります。
辺りは一面の田んぼで
人家も道沿いには全くなく、
はるか向こうに人家の明かりと、
航空障害灯の明滅が見えるだけです。

私は自宅近辺では味わえない
そこの「暗さ」が楽しみで、
そこを通るときはいつも車内から
外の様子を観察していました。

その日もいつものように主要道路から外れ、
その一本道に入りました。
普段、その時分に帰るときには
最初から最後まで一台の車にも出会わないことも
多かったのですが、
その日は前に一台の車がいたので、
少しがっかりしたことを覚えています
(道の「独り占め」ができないので)。

道の半ばに差し掛かったころでしょうか。
突然、車の辺りに、
さあっと霧が立ち込めてきたのです。
父の実家は関東平野の真々中で、
辺りには山など存在しません。
また、通常の霧であれば
徐々に周りが見えなくなるといったように
段階があると思うのですが、
そのときは霧の中に
「すぽっ」と入ってしまったように
突然辺りが真っ白になったのです。

父親もとまどったようで「何だ?」と言いつつ、
車のヘッドライトを頼りに
慎重に車を進めていきます。
しかし時間にして十秒程だったでしょうか。
突然、霧が晴れました。

父も母も私も、「なんだったんだろうね?」と
首を傾げていましたが、そのとき、私はふと、
あることに気がつきました。
「お父さん、前の車、いなくなっちゃったよ?」

霧の中に入る前には見えていた
先行車のテールランプが、
どこにも見当たらないのです。

前にも言ったとおり、その道は一本道で、
脇に入る道としては
車の通れない細いあぜ道があるだけです。
霧の中に入った後に加速したとしても、
ものの十数秒で目の届かない場所にまで
走っていったとも考えられません。
田んぼに落ちたとしても、
転落するときに音とか、
悲鳴とかがするはずですが、
全くそんなものは聞きませんでした。

一体、あの「霧」は何だったのでしょうか。

(taru)

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2007-08-12-SUN