おさるアイコン ほぼ日の怪談2007

怪・その10
「携帯電話の写真」

おととしの冬、主人の兄が亡くなりました。
義兄は、我が家からは車で8時間ほど離れた
日本海に面した町で、
離婚してひとり暮らしでしたが、
突然の心臓発作で孤独死しました。
遺骨は一族の墓があるその町に埋葬し、
初盆には主人がお墓参りにも訪れています。

そのひと月後、
主人の買ったばかりの携帯電話が突然壊れ、
通話不能で、データ(電話帳、画像など)も
すべて残ってません、とお店の人に言われ、
新品に交換してもらいました。

新品を持って帰宅した主人が
「待受け画面が寂しいから、なんか画像送って」
というので、
春に旅行した北海道の画像をメールで送り、
彼の携帯に保存された内容をみると、
北海道の風景の画像ファイル以外に、
もうひとつ、画像が入っていました。

それは、義兄が眠る、
山の中のひっそりとしたお墓の画像でした。
主人が撮ったものですが、
壊れた携帯に保存していて、
消えてしまったはずでした。
それに、もし残っているならば、
その写真の前後には友人の結婚式や
ペットの画像もあったのに、なぜこれだけ?

義兄は寂しかったのかもしれません。
私たちは今年のお盆に、
またお墓参りに行きます。

(OH)


 
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2007-08-12-SUN