おさるアイコン ほぼ日の怪談2006

怪・その12
「大きな人が」

姉の友人A子さんの話です。

高校生だったA子さんは
修学旅行で、とある県のとある旅館に泊まりました。

A子さんは大浴場の清掃係を任されていたので
他の生徒のお風呂の時間が終わった後、
浴場の後片付けをしなければなりませんでした。

そのため、一番最後に浴場を出た彼女は
ひとりで、脱衣所で髪にドライヤーをあてていました。

鏡の前でドライヤーを使っている最中に、
ふと足元が気になって
視線を落としたA子さん。

その瞬間から、体が動かなくなってしまいました。

あまりに突然だったので、
頭の中はほとんどパニックに。

下を向いたまま金縛りのまま数分が過ぎ、
ドライヤーの音だけが響いていたのですが

「ぴたり」

という音が聞こえました。

A子さんはすぐに、「誰かがいる」と直感しました。

というのも、視界には入らなけれど
自分の左側のちょっと離れたところに、
大きな人が立っている気配がしたからでした。

「ぴたり  ぴたり ぴたり ぴたり ぴたり」

足音を立て、大きな人がすぐ隣に来ます。

怖くなったA子さんは、しかし、
勇気を出して視線を、前の鏡にむけました。

でも、自分の隣には誰も映っていません。

そして視線をもう一度、自分の足元に戻しました。

そのとき、彼女は見てしまったのです。

人間の足首から下だけが、一組。
自分の足のすぐ前を歩いていくのを。

平均より大き目のサイズの足が、ゆっくりと

「ぴたり  ぴたり ぴたり ぴたり ぴたり‥‥」

(S)


「ほぼ日の怪談」にもどる もう、やめておく 次の話も読んでみる
2006-08-11-FRI