おさるアイコン ほぼ日の怪談2005
怪・その18
「錆びた冷蔵庫」

子供の頃の話です。
私の住む町のはずれに薄暗い森がありました。
よくそこでかくれんぼなどをして遊んでいたのですが
あるときひとりの行方がわからなくなりました。
皆で手分けして捜しましたが、
夕方になっても見つかりません。
森のなかには不法投棄された粗大ゴミがいっぱいで
そのひとつひとつを
例えば箪笥や埋もれたテーブルなどを開いたり
ひっくり返したりしながら名前を呼んでみるのですが
時折鳥の羽ばたく音が聞こえるばかりで
返事はありません。
誰かが「もう家に帰ったんじゃないの」と言い、
僕らはきっとそうだろうと賛成して、家に帰りました。
その夜、僕は冷蔵庫の夢を見ました。
森の隅に流れる川沿いの草むらで
錆びた冷蔵庫が倒れているそんな夢でした。

翌朝になると親達が騒いでいました。
あの子は家に帰っていなかったのです。
僕らは親と一緒にもう一度森に行きました。
僕はひとりで川沿いに向かいました。
草むらのなかに冷蔵庫はありました。
まったく夢と同じでした。
ドアは上にむいていて簡単に開けることができました。
あの子はいませんでした。
かわりに赤い血で
「たすけてたすけてたすけて」と壁中に書かれていました。
(mt)

2005-08-18-THU
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