アースダイバーの経験論!
経験論について プロフィール
07 質問:
カイエ・ソバージュ・シリーズ、
ものすごくおもしろいですよね。
カイエ・ソバージュは、
ほんとうにおもしろかったです。
今までの中沢さんの仕事の
総まとめという感じを受けました。
二十年近く書き続けてきた
中沢作品の全体への
すばらしい解説になっていると思います。
中沢さんの本は
ぜんぶ読んでいると思っていたのですが、
そのときになって
半分くらいしか読んでないことに気づいて、
あらたにすべて読みました。
すると昔の著作のバックグランドに
すごく一貫したテーマを感じました。
そのひとつの中心テーマが
先ほどお話をした「無意識」です。
選書本が全体的に
薄く読みやすくしようという流れの中で、
カイエ・ソバージュ第五巻に関しては
「もう、中沢さんに
 好きなだけ書いていただきたい」
ということで、
五巻目の『対称性人類学』は
中でも特に分量が多いし
内容もドスンと来るものです。
中沢さんのこれまでの歩みを総括して、
これからどういう方向に行くのかを
宣言したすばらしい本なんです。
実際に
中央大学で行われた講義にも出席しましたが、
頭がぴりぴりするような
切れ味のいいものなんですね。
「人間は言葉を使ってものを考えます。
 だけどたとえば『コップ』と言っても
 現実のコップというのは無限にあるわけで、
 『コップ』という観念自体は
 空っぽのままなんです。
 つまり人間は宿命的に空っぽのものを……
 神のような概念を考えざるをえません」
というようなことを、
中沢さんはドーナツの絵を描きながら
説明するわけですけど、
自分がこれまで持っていた疑問が
解けるというか、「あぁ、そうだ!」と
納得するような瞬間が何度もあって、
ほんとにすごかったんです。
暴力はなぜ発動されるのか。
神のような存在を
否定できない感覚は、なぜ生まれるのか。
国家とはいったい何なのか。
権力というのはなぜイヤなのだろうか。
ぼんやり感じていた疑問に
いちいち答えてくれるような講義でした。
おおきな問題をかなり
明確に答えてくれるという魅力がありました。

(次回に続きます。)
photo
Photo : 大森克己
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2005-07-25-MON

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