アースダイバーの経験論!
経験論について プロフィール
質問:
中沢新一さんの「体でものを知る姿」について
さらにくわしく、お話をおきかせいただけますか?
おもしろいものを書く人の共通点は、
「よく食べる」
「足腰が強い」
書くことは体力というのがぼくの経験則です。
取材に同行すると、ものすごく早足なんで、
ついて行くのに精一杯。
それから、一緒にチベットに行った人が
言ってましたが、
標高四千メートルや五千メートルで
みんなが高山病になる中で、中沢さんだけ、
ひとりでカレーをパクパク食べていたそうです。
「中沢さん、
 高山病は平気なんですか?
 頭、痛くありませんか?」

「うん、痛いよ。
 でも食わなきゃしょうがないだろう」

そういえば諏訪に取材に行ったときにも、
ウナギ屋と蕎麦屋をはしごしました。
中沢さんが頭だけでなく
体でものを知る人だということは、
近くにいるとよくわかります。
中沢さんは頭だけではなく
体でものを知る人だと言いました。
足腰が強いその底力は、幼少年期から
お父さんの中沢厚さん(民俗学者)の
フィールドワークに
よく連れて行ってもらっていたりする中で
培われたり伝授されたものなのかもしれません。

おじいさんは水産学者で、
高名な歴史学者・網野善彦さんを叔父に持ち、
お父さんは民俗学者にして共産主義者で、
中沢家は山梨の知的センターのような
ところだったようです。
その実家では民俗学、共産主義、日本史などの
議論が戦わされていたのではないでしょうか。
早熟の天才・新一少年は(笑)
そういったなかで幅広い知識を
自然と身につけていったのかなと
想像をたくましくしています。登山が好きで、
高校時代には、山梨近隣のアルプスの山々を
踏破しているみたいですし。タフなんです。
『アースダイバー』の初回は
みんなで自転車に乗って出かけたのですが、
すごい速度でぜんぜん止まらなくて……。

とにかく、
いろいろな場所を直に見にいく方です。
現場での直感を大事にしているからこそ、
書物の知識だけではない話が出るのだと思います。
また、すごく鋭敏なアンテナを
持ってるなと感じることが多かったです。
本のなかではリストに登場するだけなんですけど、
新宿の成子天神社に行ったんです。
夏の暑い日でした。
奥のほうの山を指して
「あれ富士塚なんだよ」
って教えていただいたとき、
いままで何回か来たことがあったのに
はじめて気がついたんです。

しかも、お正月しか
そこは入れないのですが、
そのときたまたま草刈をやっていたようで、
門が開いていたんです。
まわりを見まわすと作業の方々が
木陰でおやつの時間で休んでいました。
入ろうかどうしようか迷ったのですが、
これもお導きと思い、みんなで
ミニ富士山を上ってお参りをしたんです。
そのあとその神社で飼っている
尻尾の長い鶏の小屋の前で、
中沢さんが「コッケコッコー」とやると
鶏もつられて鳴きだすというおまけまでありました。

こういうのって、
心がオープンな状態に
なっているから起きるのかなぁと、
僕は勝手に解釈しています。

(次回に続きます。)
photo
Photo : 大森克己
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2005-07-15-FRI

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