質問:
小説を書く時は、
何が問われていると思いますか?
「問題を解いて正解がある」
というクセはなかなか抜けないもので、
「正解」からどれだけ自由になって
仮説を作ることができるのかが、
小説を書くことだと思います。
「因果関係」も
ひとつの仮説の作り方にすぎないんです。
現実にあるものの中で
「正解」や「理屈」で説明がつくのは
ほんの一部分にすぎないわけですから、
こういう事実と
こういう事実がつみかさなって、
こういう意外なことが出てくるというところを
時間をかけて考えると……
いつも考えつづけてないと
なかなか考えのモードは変わらないものだけど、
そこのところはさっき話した
民主主義の浸透と同じで時間がかかるんです。
時間をかけないで
変わるものなんてたいしたことないし……
それでそうやっていつも考えていると
小説を書くことができるようになると思うんです。
楽器も絵も最低限の練習が必要だけど
文章は誰でも書けるから……
小説家と役者と歌手には、
練習しなくてもうまい人がいるわけですけど、
つまり
「練習してうまくなる種類のものではない」
と考えたほうがいいのかもしれない。
 

小説なら「文章を練習した人」より
「縛りから自由な人」
になれるかどうかが問われているような……。

 

明日に続きます。

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2005-07-28

Photo : Yasuo Yamaguchi All rights reserved by Hobo Nikkan Itoi Shinbun 2005