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“WONDER SCHOOL !”
ほぼ日刊イトイ新聞 presents 超時間講演会。



(※前回にひきつづき、
  川勝平太さんと糸井重里の会話をおとどけ!)
川勝平太さんプロフィール
川勝 英国留学先のカレッジでは、たまたま、
日本人は、実質上私ひとりでした。
それで、なんとなく、
日本の代表みたいになってしまうのですね。

「ジャパンはどうだ?」とか、
ことあるごとに、尋ねられるでしょう?

そうしたら、ぼくは、
日本のいいところを言いますよ。

実際、イギリスにいる間は、
そう思っていたのです。
しかし、帰国して、自分の住んでいるところに、
彼らがぼくを泊めてくださったように、
ホームステイをさせられるかどうかを
考えると……恥ずかしい。

たぶん、そのときから、私は生活景観の
「美」を意識するようになったと思います。

ぼくがイギリスで教わった先生は、
後に浩宮皇太子殿下が
イギリスに留学されたときの指導教授で、
立派な方でした。
その先生は皇室とのご縁で、
日本には何回も来られたあと、
ぼくにこう言われたことがあります。

「東京、日光、京都、
 奈良、鎌倉などは見た。
 今度、三か月滞在する。
 本物の日本を見たい」と。

イギリス人は、経験主義者ですから、
能書きよりも、自分の経験に重きをおく。
自分の見たことしか信用しない。

そんな人に、どんな日本を見せればいいのか?

考えて決めたのは……
岩手県、瀬戸内海の島、それから、日本海。

まず、関東平野をつっきって、
福島を越えて、
宮城を通って、岩手に入りました。

福島県あたりまでは、
郡山などの都会が目立ちますが、
宮城県、岩手県に入ると、
東海道の景観とははっきりと違ってきますね。

岩手に入ると、秋だったということも、
ありがたかったのですが、
里山の景観は実にきれいでした。

奥羽の山系、それから秋の風情の田畑……。
先生は、食い入るように見ていらした。
「やった!」
と思っていました。

岩手は、曲家(まがりや)と言って、
鉤型の家が民家ですよ。
馬が一緒に生活できるようになっている。
岩手の人は、それほど馬が好きなのですね。

イギリス人も大の馬好きなので、
競馬場にも案内しました。
岩手県の地方競馬場は、
さすがに馬を愛する県民だけあって、
岩手山を望む
すばらしい眺望のできるところにあり、
子どもや家族が遊べる
緑の公園と施設を誇っています。

その競馬場がオープンするときに、
植樹祭があったとみえて、
イギリス大使がお祝いに来て
植樹したと名前が記されていました。
イギリス人以外の外国人は、
来ていなかったですね。

「あ、彼は私の弟子です。
 ケンブリッジでの教え子です」

そんなこともあって、感激してくれましたね。

岩手の牧場、競馬場の景観、稲作の景観、
イングランドには山がありませんが、
岩手山、早池峰山などの山々が
紅葉に染まった景観。いずれも申し分なし。

その後、瀬戸大橋を列車で渡って、
直島というちいさな島に船で案内し、
そこに泊まりましたが、
やっぱり深く感動していらした。

多島海として、
瀬戸内海ほど美しいところは、
世界にありませんね。

例えばギリシアのエーゲ海は、
きれいですが、山は禿げ山ですし、
栄華の去った遺跡でしかありません。
カリブ海にも、
いくつかきれいな島がありますが、
となりの島は遠くて見えない。

ところが、瀬戸内海は、島影がいっぱいあり、
歴史があり、文化があり……
瀬戸の景色はどこも絵になります。

日本が、イギリスのジェントルマンから見て、
あなどられるような国ではない、
と言いたい気持ちが、どこかにありましてね。
まぁ、彼がきれいだと感激してくれるたびに、
単純に、心からうれしかった。

その後に行った日本海の町は、
途中も街中も
パチンコ屋ばかりだったから残念でしたが。
  (明日に、つづきます!)





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