| 糸井 | 松井さん、病気をされたとは言っても、 見た目は、健康そうな感じがありますね。
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            | 松井 | いや、健康ですよ。今は、何も問題ない。 テニスも、シングルスで
 五セットマッチやって、そのあと、また、
 ダブルスやったりしているんですから。
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            | 糸井 | (笑)それはちょっと やり過ぎじゃないですか?
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            | 松井 | その気配はあるよね。 | 
           
            | 糸井 | やり過ぎは、よくないですよね。 | 
           
            | 松井 | そうですね。 でも、何かをやり出すと、
 けっこう、その世界に
 没頭しちゃう特質ですからね。
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            | 糸井 | そうしないと見えないものも、多いですけど。 | 
           
            | 松井 | そう。 テニスはテニスでね、
 その世界が見えてるんですよ。
 例えば、松岡修造は、
 プロを育てるならいいけど、
 ある年齢以上の、
 もう筋力もないような世代の人に、
 教えられないだろうと思うよね。
 でも、ぼくは、その世界にいるから、
 教えようと思えば教えられる。
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            | 糸井 | テニスは、どのぐらいのペースで? | 
           
            | 松井 | 時間が空いていれば、週二くらいは。 土日に空いてれば、
 土日は必ず、朝から晩までやってます。
 
 学問は体力だから。
 体力がなくなったらおしまいね。
 だから、体力勝負です。
 
 ちなみにぼく、あさってからアメリカでしょ?
 ヒューストン行って戻ってきて、
 五日だけ日本にいて、
 また今度は
 カリフォルニア行きなんですけど、
 これなんて体力ないとできないですね。
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            | 糸井 | よーしわかった。結論はそれだ! | 
           
            | 松井 | (笑)いや、ほんとですよ。 そりゃもう、体力がいちばんです。
 
 キューバに行って
 フィールドワークしたりするのでも、
 一日中、ただひたすら、歩きまわったり、
 飯も食べないでいたり……
 これは、すべて体力です。
 
 だから、テニスをやることも、
 学問をやることに
 つながっていると思っている。
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            | 糸井 | ええ、わかります。 | 
           
            | 松井 | 脳のなかで、内部と外部を 区別するような生命──
 それが知的生命体の
 定義みたいなものかけど、
 それが生まれてくると、
 外界を認識するわけでしょう?
 
 そうすると、
 外界が存在したことになる。
 
 そして、外界を投影した
 内部モデルにある普遍性を求めるんですけど、
 なにしろ、この世界、
 この宇宙そのものが、特殊だから、
 「普遍」をどんどん導きだしていくと
 迷路に陥る。
 
 だってそりゃそうでしょう。
 この宇宙の物理定数は、決まってるんだから。
 重力定数とか、
 プランクの定数とかでも、
 その数字に、必然性はないんですよ。
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            | 糸井 | ある数字であるっていうこと自体が もう特殊だってことか。
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            | 松井 | そうです。 | 
           
            |  | (明日に、つづきます!) |