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智慧の実を食べよう。
300歳で300分。

「ほぼ日」創刊5周年記念超時間講演会。

智慧の実を食べた人々2
MAYA MAXX(2)
〜長老も私たちも。
  「あの場」、すべてが描かれた〜

講演当日、舞台の袖に用意された
ライブペインティング用の
真っ白いキャンバスの大きさは
横4.5メートル×縦1.8メートルでした。

長老の話を聴きながら、
MAYA MAXXさんはどのようなことを考え、
どのように絵を描いていかれたのでしょうか。

前回に引き続き、MAYA MAXXさんに
うかがった話をお届けします。


●ギリギリの体験だと思った。

── ライブペインティングが
   佳境にさしかかったところで
   小野田さんの講演となりました。
   2匹の長老のサルを描き終えていたぐらいでしたか。
 
MAYA MAXX(以下、MM)
   そうかな。
   長老それぞれにいろんな面があるんだろうけど、
   小野田さんの体験っていうのは、
   もう1回死んだような体験だから。
   もう生きてるっていうことが、
   いかに楽しくて素晴しいかっていうことは、
   もう、飛び抜けてるんじゃないかな。

   ひとりでフィリピンのルバング島で
   戦い続けるという状況におかれてね、
   ご苦労なさったと思うんです。
   ものすごいギリギリだよ。
   私たちではそんな極限の状態を
   どうにもできないような
   すごいことをしてるんだけど、
   社会の中でのできごとじゃ
   なかったっていうところで、
   スポイルのされかたとかが
   ちょっとまた違うんだろうなって気がする。


●「私たち」も描き加えた。

MM 左右にサルを描いてみたときに、
なんか足りないなと思ったんです。
「何がいいかな」って考えて、
やっぱり、「長老の話を聞いている私たち」
っていうのを、
入れないといけないんだなと思って、
それで描き足したんです。


 
 
── 若いですよね、このサル。
表情が若い。
 
MM 若いでしょ。やっぱり。
同じように見えるけど。そうなんだよね。
なんの違いか、わかんないんだけど‥‥。

私は、絵がすごい上手に描けるタイプじゃない
と思っているんです。
自分が描けるように描いて、今まで来たんです。
どういうことかっていうと、
「その時に自分がおかれている状況」が、
そのまま絵になるの。
だから「このサルがどうして年を取って見えるのか」、
「このサルがどうして若く見えるのか」
っていうのは自分でもよくわかんない。
 
── 左右のサルの絵が遊んでいる感じが、
観客のほうが緊張をしていて、
ステージの上で楽しんでいる長老たちを
あらわしてもいますよね(笑)。
 
MM うん、長老たちは
どこかから苦しみも楽しみも、
楽しみみたいな雰囲気に
なっていくんだと思う。

その中でも谷川さんはいちばん若くて、
ステージをすごく盛り上げて。
観客とすごく一体化してた。
それもやっぱり角がとれてきた人の感じだよね。
だけど、やっぱり吉本隆明さんの、
なにも気にしてない感じ
っていうのもありだし(笑)。
 
── MAYA MAXXさん自身も
ここの若者に入ってるんですか?
 
MM もちろん! もちろん!
糸井さんも入ってる(笑)。
長老以外はみんなここ。
我々はやっぱり、
長老たちのおっしゃってることを
ほんとにわかることはできないんですよ。
まだそこまでの経験もないし、
理解できる素材がないから
そのことについて、
あまり深く考えても
仕方がないことなんだって思う。

私は個人的には、「へぇ、そうなんだぁ」って、
思っておけばいいと思ってるんです。
そのときの、自分の判断は、判断として
いちおう置いといて、
自分が生きていく間に
それが変化するかもしれないし。
だから、その地点、その地点で、
「へぇ、そうなんだ」で、
いいんじゃないかな、って思ってる。
素直に受け取ってるってことだから。
少なくともこの講演に関しては、
「え? そうなの?」とか、
そういう気持ちで聞いたらもったいないよね。
「何だかよくわかんないけど、自分の中に、
 まずは入れてとおく」
っていう感じでありたいと思います。


●「その場に来る」
 「その場にいる」ことが大事。


── さらに絵に文字を書き足していかれたと
思うのですが
この文字にはどのような意味があったんですか。


 
MM 「MEET SPACE
 MEET SOUL」

っていう言葉が好きなんですよ。
「場に出会って、楽しみに出会う」っていうこと。
まさにあの場がそうじゃん(笑)。
 
── この「300歳で300分」の場に出会えた。
 
MM うん。あの場にいないと、
あの「生の魂」を見ることは
できなかったわけでしょ。

そこの「場に来る」、
「場にいる」っていうことが
いちばん大事なことで。
そこから、自分の考えとか感覚とかで、
それをキャッチするなり何なりすればいいんだけど、
まずその場にいることができなかったら、
何もできないし、っていうのがある。

文字がなくてもよかったんだけど
けっこう絵ってね、
文字が入っていると見る人が
ホッとすることもあるんですよ。

見る人をホッとさせる必要も
なかったりするんですけど。
やっぱりみんながいっぱいいる現場で
描いているでしょ。
作品として描いてるんだけど
なるべく、わかっていただけるようにするには、
心を開いたほうがいいなと思って。
 
── 文字があると自分の中で
どこに納めるかって、
ヒントをもらえた気がします。
 
MM そうそうそう。
ヒントになるんだよね
「それでいいんだ」っていう。

絵に文字を書くっていうのは、
文字のほうが
わかりやすいことがあるから書くんです。
基本的には文字で表現できないから
絵を描いてるんで。
だけど文字で言ったほうが、
みんながおんなじように
わかる場合があるんですよ。

多い少ないはあるんだけど、
ある程度、おなじような感覚を
共有できるっていうのは、
文字の持ってる強さですね。


●谷川さんの口から
 自分の名前が出るなんて‥‥。


── 谷川さんの講演では
MAYA MAXXさんへの
オマージュがありましたねー。
 【註】
 谷川俊太郎さんは、
 講演当日ライブペインティングをする
 MAYA MAXXさんへのオマージュとして
 「さる」という詩を読まれました。

 
MM うーん、もうなんか嬉しかったよ。
谷川さんは自分で演出もされるじゃないですか。
だからやっぱりその場でね、
こいつこんな大きな絵描いてるよ、
っていうのは、いいことだと思われたのかな。
嬉しかったですよね。

谷川さんの口から
自分の名前が出るなんてさ。
学生のときは考えたこともなかった。

だって中学校の教科書に、デビュー作品の
『二十億光年の孤独』って詩が出てたりして。

谷川俊太郎さんが、
まだ30代だったと思うよ。
今、もう70だよ。
でも若いよね。
 
── デビューも早いですからね。
 
MM 谷川俊太郎さんの講演を見ていると、
人ごとじゃないぐらい、
なんか共感を得ましたよ。

みんなが喜んでくれるなら
歌も歌っちゃえーみたいな。
あの感じ。
もうみんなが喜ぶんならもう、
絵でも描いちゃえみたいな。

大昔の原始人みたいな時代に、
集落があって、
そこでみんなが今日は
マンモスが捕れたから、
お酒とかを出してきて、
飲んだり食べたりして。
そのときに、たまたま歌が
うまいヤツが歌を歌ったり、
ま、そこで絵を描いたりは
しないだろうけど(笑)。
そのときの様子を、
誰か絵のうまいやつが絵を描いたりして、
ラスコーの壁画とかになってるわけじゃん。
そういう感じだと思うんだよねー。


●「自分の絵」ではなく「その場の絵」。

── 描きあがったときに、
なんか感じるものって、ありました?
 
MM ライブペインティングって
家でひとりで絵を描いてる状態とは、
まったく違うんですよ。
絵を描くことのスタンスは、
誰がそこにいたって、関係ないんですけど。
やっぱりいっぱい人がいて、
いろんなことを話したり、
見られたりしながらやってるわけですよね。
そうすると、「自分の絵」じゃなくて
「その場の絵」なんですよ。

今回の絵はもう最たるものでしょうね。
長老がいらっしゃって、
糸井さんがいらっしゃって、
それでお客さんがいらっしゃって。
ひとつのものに向かって、
いろんな人の努力があって。

そういう場を、
あの絵にしたっていうことで、
やっぱりひとりでアトリエで描いてる絵とは、
ぜんぜん違うんです。

同じように見えるかもしれないけど、
自分の中はぜんぜん違う。

あの場に自分がいて、
しかも、聴いているだけではなく
自分のいちばん得意なことで
参加ができたということは
やっぱりものすごく大きいですよね。
そうしてあの絵ができた。
自分でもすごくいい絵だと思う。
だから、あの場にいれて良かったなと思う。


 
── 今回はイベントのモチーフのサルの絵で
スタートを切っていただき、
会場全体の雰囲気を表現した絵で
ゴールを飾っていただいたと思います。
本当にどうもありがとうございました。

ほぼ日コンプリートBOXは
MAYA MAXXさんが会場で
描きあげてくださった絵をモチーフとした
特製ボックスに入れてお届けします。
どうぞお楽しみに!!

ほぼ日コンプリートBOXの詳細はこちら
※完売しました。ありがとうございました。


【智慧の実関連ニュース】
Amazon.co.jpでも取り上げられています。
(darlingの特別コメントもあります)
本はこちら  DVDはこちら

2003-11-24-MON

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