YAMADA
おとなの小論文教室。
感じる・考える・伝わる!

Lesson877
読者の声―自分の可能性を否定されたときに



「この道向いてない」と言われたとき、
自分を信じるか、信じないか?

自分を信じるほうが勇気がいる。

信じれば、その道で
また真っ向勝負を挑まねばならない。
もっと傷つくかもしれない。

でも、人は伸びる。

向いてないはあてにならん。

という先週のコラム
「自分の可能性を否定されたときに」に、
たくさんのおたよりをいただいた。

「向いてない」と言われたとき、
読者はどう考えたのだろう?


<あるときから音楽が大好きに>

初めてお便りします。
あまりにも膝を打ってしまう内容だったので。

ピアノ教師の母によって、
私はピアニストになるべく、ピアノを習わされていました。

周りは皆ピアニスト志望、私は落ちこぼれ。
小学生のとき、音楽の先生から

「あなたは音楽に向いてない」

とズバリ言われました。
母の意向もあり、中学・高校と
何とか劣等生ながらピアノを続けました。
「どうせ私は向いてないんだし」
と斜に構えていた学生時代でした。

大学も卒業し、ピアノ教師として働き始めました。

「向いてない私がピアノを教えていていいんだろうか?」

罪悪感と、自問自答の毎日でした。
お金をいただく以上、これではいけないと、
社会人になってからようやく

自分の意志で勉強を始めました。

すると、
学生時代分からなかったことや、
知識としてしか入ってなかったことが、
とてもよく理解でき、

音楽が本当の意味で大好きになりました。

実際に生徒を指導することで、
「なぜ音楽に向いてないと言われたか」
も分かりました。

「向いてなくても、
続けると見えてくるものがあるから無駄ではない。」

劣等生だったおかげで、
出来ない子の気持ち、どこが分からないのかが分かる。
現在、幼稚園や保育園生活で外れてしまう子に
音楽で関わる仕事もしている。

未だ「音楽に向いてない」から勉強も続けています。

「向いてない」が今はいい意味で私を支えています。

(落ちこぼれピアノ教師)



ズーニーです。

「人に教える」ことが、
自分も伸ばした、というところがいいな。

新人がいる職場は活気がある。

教えるためには、
自分がずっと続けてきたことは何だったのか?

「自分の頭で考えざるをえない」

からだ。教えるために考える、
考えることで、
噛んで、消化されて、血肉化する。

ずっと自分がやってきたことの意味を発見する。

あと3通紹介して、きょうは終わろう。


<いつのまにか信じる方向が変わってた>

まさに「向いてない」と言われていました。
職場で上司から、

「あなたは、こういうことをしておけばいいんだ。
いろいろ自分で決めたり動いたり、
必要以上に他に関わるな」

と言いわたされました。
私はなにもできないんだと
いじけたり落ち込んだりしていました。

今の職場につくまで2年、仕事の資格をとるまで5年。

今回のコラムを読んでふと思い出しました。

「けど、この仕事につくまでや、
資格をとるまでの年月を振り返って、
自分はこの道でやるんだと信じて、諦めなかった。」

向いてないなら違う方向に行けばいい、
親からはそう言われていました。けど、

「変えずにやったのは自分を信じてたからなんだ。」

仕事につく前、亡き恩師に
言われていたことを思いだしました。

「諦めず続けなさい」
「自分の信じたままをいきなさい」

いざ仕事を始めたら、いつのまにか
私は信じる方向を他人や周りに変えていました。

そして、自分を信じなくなっていた。

私、自分を信じることを取り戻します。

(ペンギンのあし)


<伸びしろを出すには>

伸びてるひとは
目の前のことに出し切ってるいつも

もしかしたら僕は出し惜しみをしてるから
燃えるものも伸びるものも
出ないのかもしれない

出し惜しみやめてみたら
意外と伸びしろがでるのかもしれない

(icuteachersband)


<続ける>

続けるのは大変です。
このまま努力を続けても、実になる保証なんてない。
その道を選んで歩み続ける自分をどこまで信じられるか、
葛藤の連続です。

自分の足元がぐらついていて、
「この先やっていけるのか」
「そもそもこの選択が良かったのか」
疑問が出てくると、

「向いていない」という言葉が刺さるのです。

そこで支えになるのが、

「今まで続けてきたという事実」の積み重ねです。

不器用だろうがなんだろうが、
とにもかくにも歩みを止めずここまで来た。
それは紛れもない自分自身の歩みですし、
奪われることもないものです。

可能性を否定されるのは将来を否定されることです。

そこで立ち止まって
今を見つめなおさせてくれるものは、
「表現したいという思い」、
「今まで歩んできた手ごたえ」など、

奪われることのない自分のものです。

またそういうものを育てるのが、

「続ける」

ということ
のように思います。

(たまふろ)


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2018-05-30-WED

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