YAMADA
おとなの小論文教室。
感じる・考える・伝わる!

Lesson835
   「自分の頭で考える」、まずそれ!



ほんのちょっと、
孤独になったり不安になったり面倒だったりするのを
がまんして、

「自分の頭で考える」

それだけでいいのにな。
それだけなのに、なんでこの人はしないのかな?
と思うことがある。

3000字から7000字程度の文章を読み、
まず200字に要約する。

そのあと筆者の言わんとすることに対して、
自分自身の考えを、

論拠となる事実(実体験・知識・見聞等)→
考察(自分の頭で考えた道筋、独自の分析や掘り下げ)→
結論(筆者のとりあげた問題に対する自分自身の答え)。

の3段構造で600字で書く。

これを自分なりのペースを決めて
コツコツ30本ぐらいやると

考える力・書く力がかなりつく。

「自分の頭で考える」、まずはそれ。

自分の足で歩いていけることに似て、筋肉もいる。

全く運動していないとき、
急な階段を上るはとてもムリでも、

ただの2週間でも毎日運動して、うっすら筋肉がつくと
そんなに苦じゃなく上っている自分がいる。

3ヵ月もたつともう別人のように
上れることが自然になって、

「以前の自分は、この程度の階段を
なんで途中であきらめたり、
迂回してタクシーにのろうとしたり、
したんだろう?」と不思議になる。

考える基礎筋肉をつける前に、
エスカレーター的な方法に手を出すのは、

わたし個人は、どうしてもいいとは思えない。

世の中には良いものもあれば「悪徳」なものもある。

占い、新興宗教、各種セミナー、
それらのなかには良いものもあるのだろうけれど
悪徳なものもありトラブルがあとを断たない。

そういうトラブルにはまって苦しむ人のなかには、

自分の足で歩いて目的地にいく頭の基礎体力も
つけないうちに、エスカレーターにのろうとした
と思える人がいる。

表現教育を通して、現代の人をみていると、

「自信がほしい。」

という人がとても多い。
若い人にも多いが、大人にも、中年にも幅広くいる。
自己肯定感がほしい、承認欲求が満たされない
という人もとても多い。

そういう人こそ、「自分の頭で考えて」、

まずは、自分の生活を1ミリ2ミリとより良くしていく、
身のまわりの人々との関係性を上向かせる、
さらに学校や職場で成果を出すことを、

コツコツやって、
失敗したら何でか、自分で考えて改めて、またトライして、

やがて、ちっちゃくても成果が出たとき、
うっすら考える筋肉もできてきて、

その積み重ねで、「自信」は得られるのではないだろうか。

自信だけを即効で得られるようにエスカレーターにのって、
かりに得たとしても、
人生の上り坂は、その先へ行くほど急だ。
脚力はさらにさらに、
必要になってくるのではないだろうか。

「エスカレーターがあるのに、乗ったっていいじゃないか」
という人もいるだろう。
「自分の足で歩けない人の支えとして、
エスカレーターを提供しているのだ。
このエスカレーターがなかったら、
この人は自殺したかも、犯罪者になったかもしれない」
という提供側の人もいるだろう。

たしかにそうなんだろう。
反論の余地もない。
でも、これだけは言える。
私が表現教育を通してみてきた限り、

「考える力はみんなにある!」

いま筋肉が萎えている人も、
鍛えればかならず、自力で考えられるようになる!

うっすらでも考える筋力がなければ、
藁をもすがる思いで手を出したエスカレーターが
良質か、悪徳か、の判断もできない。

まったくちがう目的地に連れて行かれても気づけない。

「あなたには考える力がある。」

そのいい頭で、ぜひ、自分の生活にかかわることを
考え続けていってほしいと私は思う。


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2017-07-12-WED

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