YAMADA
おとなの小論文教室。
感じる・考える・伝わる!

Lesson61 「問い」で会議の流れを変える
--結果を出す!文章の書き方 (12)議事録



「議事録をとって。」

社会人に成り立てのころ、
そういわれてドギマギした。
何をとればいいんだろう?

そこで、話を聞いていて、
重要そうなことを、書き漏らすまいと、
次々メモしていった。
会議に参加するどころじゃない。必死だ。

急いで書くので、メモはぐちゃぐちゃになる。
ワープロで清書する。
時間がかかった。
でも、配るとき、自分でも、
「こんなの配る必要あったのかなあ?
だれも読みかえさないだろうなあ」と思った。

案の定、それは、先輩たちのファイルにしまわれ、
以降、役立った形跡はない。
やっぱり時間の無駄だった。

それは、議事録というより、
ランダムな発言録だった。
以降、いろんな人が議事録をとって配ってくれるのだが、
やっぱり、読み返さない。

議事録って何を書くんだろう?
時間の無駄? 気休め?
かなり長いこと、「ギジロク」が謎だった。

小論文で、「論点」というものがわかったとき、
「そうか! 言ってることを書くんじゃないんだ!」
あることがひらめいた。
次にあげる議事録の例、
まず、ざっとナナメに見てほしい。

<議事録>秋の区民祭り 第2回会議


議題:区民祭りのねらいは?
   参加者にどういう価値を提供するのか?
日時・場所 2001.9.11(火) 14:30〜17:00
区民会館
出席者 榊原・小泉・柏野・菱川・山田
前回までの流れ
・区民祭にどんなアイデアがあるか?
 各自、案を持ちよってブレスト。
・アイデアの善し悪しを決めるには、
 「祭りのねらい」を決めるべき。
・菱川・山田で、「祭りのねらい」たたき案を
 出すことになった。

本日の会議の位置付け・流れ
ねらい決定の会議。
菱川・山田のたたき案をもとにメンバーで検討し、
最終的に、ひとつのねらいを打ち出す。
・山田、菱川の仮説提示→検討。
・各種地域イベントの成功例VTR視聴、
 失敗例データ読み込み。
・ねらい決定のための討論→決議。

議事の要点
1.ターゲットはだれか? 昨年、参加が著しく悪かった
  10代・20代に、来ようと思わせる企画であること。
  かつ、毎年、楽しみに来ている中・高年層にも
  歓んでもらえること。
2.ゴールをはっきりさせたい。区民祭を楽しんだあと、
  ゴールとしてどんな気持ちなり、
  状態になっていればよいのか?

本日の決定事項

世代間交流をねらいとする。
例えば、高齢者と子ども、
10代と40代というように、
違う世代間に、自然と会話が生まれ、
交流が図れる場と機会を提供する。
今後の課題・次回の予定

「世代間に交流が生まれる場とは?
  それを具体化する案は?」


・次回会議は、菱川・山田それぞれに、
 世代間交流とは何か?の構造化、具現化のアイデア、
 を用意し、メンバー全員でたたく。
・ 他メンバーも、一人1案持ってくること。
 (22日13:00〜区民会館)

議事録を書く一番のポイントは、

議題を、「問い」の形にして、
頭に大きくはっきり書く。


これにつきる。
ここが、いちばんむずかしい。腕の見せ所だ。
なぜかというと、
会議をしたり、ちょっとしたミーティングをしたり、
人と会う時、
私たちは、事前に「問い」を確認する習慣がない。

あなたは、今日だれかとミーティングしましたか?
「その時、何を話したか?」 と聞かれれば、
ああ言った、こう言ったと、発言は思い出すだろう。
では、「何について、話していたのか?」
論点を、一つの疑問文の形ではっきりさせてください、
と言われたら、これが、本当にむずかしいのだ。

議事録は、若手に頼まれることが多い。
あらかじめ、議長さんが、
この「問い」をはっきりさせてくれたら、
書くほうもすごく楽なのだが、
たいてい、そんなことはない。
「秋の区民祭について」などと、漠然とした形ではじまり、
出席者が、おもむろに話しながら、
なんとなく、会議終了時、ある方向に着地している。

あなたも、会議、ミーティングに出ていながら、
「いったいこれは、何の会議?」
「いま、何について、話してるの?」
「私は、何で呼ばれてるの? どう絡めばいいの?」
と、思ったことは、一度や二度ではないだろう。

いい発言を、おもむろに書き付けるだけなら、
議事録は、時間の無駄、やめた方がいい。

出席者が、「何を」話したかではなく、
「何について」話しているか? 
発言の裏にある、「問い」に注目して聞き、メモをとる。
いい発言をする人、
また、会議の流れを変えるような発言をする人は、
必ず、「いい問い」を持っており、
そこまでの「問い」の方向を、
ググッと良い方へ転換させているはずだ。
その「問い」が何かを考えよう。

最終的に、今日の会議は、
結局、何について話されていたのか?
それを考えて、ひとつの疑問文にして議事録の冒頭に書く。

これができれば、
議事録をもらった出席者たちも、

「おお! そうそう、
 今日は結局<ねらい>を決めたんだな。
 そういうことか。
 わけがわからず、話し始めて、
 最後は、世代間の交流を大事に…うんたら、かんたら、
 声の大きい方へ落ち着いたが、
 あれは、ねらいの決定会議だったんだ。」

と自分たちのやってたことの位置付けがわかり、
とても助かるだろう。

実際書いてみると、
この問いを割り出すのが、相当むずかしい。
だが、すごく頭の筋肉が鍛えられる。

「議題」を「問い」の形にして、はっきりさせれば、
あと、議事録はすいすい書ける。

まず、「問い」に対して、どんな「答え」を出したか?
が本日の決定事項だ。おしまいに書けばいい。

「問い」と、「答え」の間には、
その問いをどんな手順で検討したか?(会議の流れ)
その問いに答えを出す上で、何を大事にしたか?
(議事の要点)を、優先順位を決めて、
大きなものから3つ程度書けばいい。
細かいことはいらない。優先順位をつけるのが仕事だ。

グレードアップのポイントとしては、
その会議の、ひとつ前と、ひとつ後の展開を
書いておくことだ。

前回までの流れと、今後の課題・次回の予定が、
議事録にはっきり書かれていれば、
流れと関係の中で、
出席した人も、今日の会議がなんだったのか?
すっきりわかるだろう。

そう、会議の位置付け。それも書いておこう。
つまり、「問い」に対してどうする会議なのか?
問いに対して、一つの答えを出すのなら、それは、
「決定のための会議」という位置付けになる。

一方、「問い」に対して、
あんなのもある、こんなのもある、と、
次々案を出すだけで、とくに答えを決めない会議なら、
「ブレスト」だ。

議長さんが、今後の課題・次回の予定や
メンバーそれぞれがやってくることを
示してくれなかったら、聞きにいこう!
聞きにいって、書いてあげると、みんな助かる。

こういう議事録を配れば、みんなよく読み、
会議の準備のとき、読み返し、
次の会議のとき、持ってきて、
机の上に置いているだろう。

会議やミーティングを成功させる秘訣は「問い」にある。

「問い」に着目した議事録が、書けるようになれば、
自分が会議をするとき、
ずっとうまく切り盛りできるようになる。
だけではない。
メンバーの会議への意識を
グッとアップさせることができる。
「え? 議事録の書き方だけでそんなに変わるの?」
と半信半疑のあなた。
請け合いです。お試しあれ!

2001-09-12-WED

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