YAMADA
おとなの小論文教室。
感じる・考える・伝わる!

Lesson6  メンバーに指示を出す
----意味・流れ・関係で伝える、仕事のやりがい----


「さいきん、部下の目が死んでる」
「仕事の分担を告げたら、とたんに雰囲気が悪くなった、
 メールをあけたら文句がいっぱい」
 
こんな、お悩みのリーダーさんはいませんか?

リーダーでなくても社内・外のいろんな人に指示を出す。
仕事でなくても、家族やサークルで、人に指示を出す。

「あなたに、この仕事をお願いします」

一瞬でやる気をなくさせる
やる気を奮い立たせる
この差はどこから生まれるのでしょうか?

根本的な問題は、小論文ではとても解決できません。
でも、同じことを伝える時のテクニックなら、
何か、お役に立てるかも。

今日は、「やる気を引き出す伝え方」を
あなたと探っていきたいと思います。

●今日の結論●
・相手に「流れ」・「関係」で伝える
              ↓
・すると相手は「意味」が発見できる
              ↓
・だから、やる気になる

なんじゃこれ? はい(笑)、順に説明します。

●いっそくとびに「なぜ?」は難しい
異動を告げられる・仕事をふられる
こんな時、だれもが知りたいのが、
「なぜ? 私が?」
という理由です。

生真面目なリーダーほど
「なぜ、あなたに、この仕事をお願いするか?」
を説明しようとしますが…。
この問いはレベルが高いので、
イッキに結論をだそうとすると、

「人が足りない、他にいなかった」となしくずし。
「きみは仕事ができるから」と意味不明のおだて。
または、会社の論理で押し切る。
あげく「仕事だから。会社はきみ中心に回っていない」
とねじ伏せる。

…これでは、メンバーの目は死ぬかも。

そんな時は、急がば回れ。
こんな図を頭に描いて、深呼吸。
自分と部下のにらみ合いから、
ちょっと目を外に向けてははどうでしょう?



▲ 過去→現在→未来へ流れる時間軸と、
個人→集団→社会へ広がる空間軸
時間と空間のマナ板に、
今、出そうとしている仕事を冷静にのっけてみるのです。

(*「グループ」のところは、
  うちのチーム・セクション・プロジェクトメンバー・
  会社などいろいろに考えてOKです。)

●「断片」でなく「つながり」に着目する
昨日、今日、明日
私、グループ、社会
その「つながり」に着目して話すと、
「意味」が出てきます。

逆を考えてみると、わかりやすいです。
まったく「つながり」がなかったとしたら、
どうでしょう?

「あなたがこれまでやってきたことと、
 これからやることはまったくつながってない。
 これからやることは、
 あなたの未来にまったくイキない」
「あなたが、これからやる仕事は、
 うちのチームに影響しない、
 社会とも関係していかない」

こういう状況だと、多くの人が
「意味」を発見できないのでは?

情報通や、物知りでも、
断片、断片の話では、意味をなしません。
「つながり」を見つける力が必要です。
ヒントは、次にあげる6つです。

流れ(過去→現在→未来)
1.相手の歴史
2.グループの歴史
3.社会の歴史

・相手はこれまでどんな仕事をしてきて、
 現在どのようなかけがえない個性を持ち、
 将来どうなっていきたいか?
・グループは、どういう背景をもって、
 現在どんな問題・可能性を抱えており、
 どこを目指すのか?
・この世の中は、どういう背景をもって、
 いまどんな問題・可能性を抱えており、
 どうなっていくか?

関係(社会→うちのグループ→相手)
4.社会とグループ
5、グループと相手
6.相手と社会

・グループの取り組みは、社会とどう関わっているか?
・相手がこれからやる仕事は、
 グループにどう影響するか?
・ゆえに、相手がこれからやる仕事は、
 社会(顧客)とどう関わるか?

以上、6つの視野に、これから
お願いしようとする「仕事」をのっけてみると、
どこかに、「意味」が出てきます。
6つ全部できなくても、
一つだけでも、もりこむと、説得力がでるのでは。
例えば、

<2の例文−会社の流れ × あなたの仕事>
○今まで、うちは親会社の言いなりだったが、
 提案型に変えていこうとしている。
 きみに親会社との窓口をしてもらうのは、
 そうしたうちの会社の将来を見据えてのことでもある。
 地味な仕事だが、まずよく
 親会社のことを知ってもらいたい。
↑「流れ」の軸で、将来とのつながりが見える、OK。
↓逆に、次のだと、流れが見えない「断片」なのでバツ。

×きみには、親会社の窓口になってほしい。
 先方の要望やクレームをよく聞いて、
 文書化して、はやく提出すること。
 できるだけ、先方に足を運んでほしい。
 地味な仕事だが、若さでがんばってもらいたい。

<4の例文−社会 × グループの関係>
○これから、きみに入ってもらうプロジェクトは、
 地方都市5班に分かれて、地元の協力者を募集し、
 組織化していくことだ。
 現代では、人のつながりが希薄になり、
 地域社会が機能しにくくなっている。
 このプロジェクトは結果的に、
 地域の人同士をネットワーク化していく役目も果たす。
↑社会とプロジェクトの関係が見える、OK。

●理想のシート

やる気を引き出す指示の出し方としては、
次のような文章構成が理想的です。

1・自分たちの仕事の延長にあるテーマをめぐって、
  今の社会はどんな状況か?
2・そのような社会背景とリンクして、
  うちのグループは、何を志すか?
3・その中で、あなたの役割は何か?
  それは、あなたがこれまでやってきたこと
 (あるいは、あなたの個性、将来と)と
  どうつながるか?
4・あなたの取り組みは、社会(顧客)にどう関わるか?

最初は関係が発見できなくても、
なれてくると、時間と空間のひろがりの中に、
今直面している問題との関係が、
次々発見できるようになります。

つながりはもともと用意されてないし、
正解もないので、自分で発見していくことが大事。

メンバーに、必然性をつめよられて、
窒息しそうになったら、
「流れ」と「関係」の図を思い出してみてください。

2000-07-05-WED
YAMADA
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