言葉の戦争と平和。
米原万里さんとの時間。
(「これでも教育の話」より)

17  日本の特色を聞かれたら







こんにちはー!
みなさんからのメールを、冒頭にご紹介しますね!!!

「とっても田舎でほそぼそと暮らしていますが
 時々この地域に
 海外から公のお客さまがあるときには、
 わたしに、通訳のような役がまわってきます。

 何度か経験を積ませていただくうちに感じたことは
 『もしかすると戦争ってたぶん
  通訳のひとのせいということもあったのでは?』
 ということです。そしてつねづね
 『一つの国ともう一つの国がどういう関係にあるかは
  通訳にかかっているところがあるなあ』
 と思っていましたので

 タイトルをみてゾゾッとしました。
 日本語と英語とを行き来しながら
 両方のことばや考え方が自分になってしまい
 一方のことばの領域だけにとどまる場面が要求されると
 めまいがすることもあるのですが
 こういう状態に『そうそう!』に
 うなずいてくれるひとが、まわりに少なく
 コドクも感じてしまうこともありました。
 世界のあちこちで
 くらくらしておられる読者さんからのメールに
 励まされています。

 米原さんの文章は新聞の週末版で何度か
 読ませていただいたことがありますが
 日本のひとみたいなのに、
 ふしぎな書き方をされるなぁと思っていました。
 その謎がほぼ日でとけました」

「いち」さんからのメールでした。
今日は、日本のことを外国の人に紹介するとしたら、
何が誇りなんですか、といった話題になってゆきますよー。








米原 外国人に自分の国について話す時は、
相手によって、違いますからね。
でも、日本にやってくると、まず、
「水道の水は飲めるか」ってすぐ聞かれます。

日本にやってきた人にとっては、
「ミネラルウオーターを買ったほうがいいか、
 水道の水を飲んでもいいかどうか」
というのは、だいじなことでしょう?

そうすると、
「ああ、日本の水道水はだいたい飲めますよ」
っていいますね、大阪は別にして。
糸井 ちょっと自慢ですね。
米原 自慢です。
「日本という国は非常に工業先進国で
 開発が進んでいるけれども、
 日本の総面積の85%は山で、
 だから、水が汚れる暇がない」
と言います。
糸井 斜めだからですね。
米原 そのことで、
日本という国が、ちょっとわかるでしょう?
糸井 結果的には、ぼくの言っているのと
同じようなことをいって‥‥(笑)
米原 そうなんです。
糸井 ぼくは、今、農業の方に、ずいぶん
頭の中を向けちゃっているものですから、
そうやって日本を見ると、
すごくありがたい国なんですよ。
米原 そうなんですよね。
糸井 これがうれしくてねえ。
ついつい四季とか
言いたくなっちゃったんですけどね。
米原 いや、ほんと。
これだけ環境汚染が進んでいるのに、
日本って湿気が多いから、いざとなったら、
農業国としてやっていけるんですよね。
糸井 東京都の面積の7倍の
あいている畑があるんです。
米原 あ、そんなに!
糸井 水が絶えず供給されているんですね。
台風一つだって、あんなもの、
なかなか来ないですからね。
で、全部斜めにちゃんと地下でも
流れていくような仕組みになってて見事ですよ。
四季があるから、温暖の差を利用して
いろんなものをつくれる。
米原 そうですね。
本当にいろんなものがつくれる。
それで、寒流と暖流があるから、
お魚にも、いろんな種類があるし。
糸井 その山というのは、
今までの農業のパターンだと、
利用しにくい場所と思われたんですけど、
実はそっちの方が向いているということが‥‥。
米原 ええ、棚田のお米の方がおいしいですよね。
糸井 よくご存じですねえ、やっぱり通訳しているから?
米原 いや、違うんです。
私、棚田のお米を取り寄せているんです。
糸井 つまり、たっぷりやり過ぎるもの、
というのは、だいたいダメなんですよね。
米原 そうです。人間もそうね。
糸井 まったくそうなんです。
ちょっと余談ですけど、
急斜面で牛を飼うという牧場があるんです。
一番ひどいところだと、
45度の傾斜のところに牛がいるんです。
これはねえ、牛、実はご機嫌なんです。
米原 ああ、筋肉も鍛えられるだろうし。
糸井 自分の生きる力が呼びさまされるんです。
牛って暇ですから、別にどこかへ行くのに
時間かかってもいいですし‥‥。
米原 ああ、そうか。
糸井 見ると、牛歩でいく道が、
ちゃんとできているんです。
そこで育った牛のミルクは、うまいんです。
米原 そうでしょうね。
狂牛病の原因って、結局、
お乳を搾り過ぎのせいでしょう?
糸井 えさなんですけどね。
米原 150%とっているんでしょう、実際は。
糸井 もともと言えば、
いっぱいミルクを出すというのが
いい牛を育てたということで、
それで賞をもらうような体系が
できあがっていた‥‥。
でも、今いった牛は、従来の枠組みで
優秀とされる牛の8割ぐらいしか出ないんです。
米原 その方が絶対いいんですよね。
糸井 そう。
おいしくて、高く売れるからいいんです。
米原 ああ、結局ね。
糸井 捨てなきゃならないミルクを
絞る必要はないんですよ。
そう考えると、さっきの85%の山間部は
全部オーケーなんです。野菜にしても何にしても。
米原 本当は腹八分の方がいいんだけど、私も。(笑)
糸井 全くそうです。
米原 なかなかそれができない!
糸井 その面でいうと、
日本は、すてきなんですよ。
自動車の輸出がどうであろうが、
何かもともといい場所に住んでいた、
という喜びがあるんですね。


(※明日につづきまーす。おたのしみに!!)

2002-11-19-TUE


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