一生を、木と過ごす。
宮大工・小川三夫さんの「人論・仕事論」。
「これでも教育の話」より。

第1回 休みは、仕事の中にある



木のいのち木のこころ 地
小川三夫
新潮OH!文庫
文庫: 215 p
出版社: 新潮社
ISBN: 4102900934

糸井 小川さんは、お休みの日なんかあるんですか?
小川 休みは、そうですね……
「奈良の家に一日いる時」
というのは、年に2日ですね。
糸井 うわ! やっぱり休まないんだ?
小川 正月うちにいるというのは、無理しているんですよ。
あともう1日は、二日酔いで
頭が上がらなくて寝てるぐらいなんです。
正月の1日は長いですよ……無理しているから。
もう、2日から現場へ行きますね。

何ですか、一番ラクですよね、現場にいるのが。
気が休まりますよ。
糸井 気が休まるんですか。
体はいつも動いているわけですね。
小川 体は動く、というよりも、
ただ、仕事が一番ラクですね。
糸井 うすうす、そんな気はしたけど、
やっぱりそうですか!(笑)
「休みたい」なんていう欲望は?
小川 ないですね、休みたいという時は。
糸井 つまり、ふだん、休みは
仕事の中に入っちゃってるということ?
小川 そうですね。
仕事してるときが、いちばん
リラックスして、いちばんラクですからね。
糸井 最高の職業。
小川 そういうことですよね。
自分も、ようこんな仕事に、いちばん
いい仕事に入っているんだなぁとは思いますよ。
糸井 みんなそういう気持ちで
仕事をしたいでしょうね、きっと。
小川 何でできないんでしょうな?
糸井 何でできないんでしょうかねぇ。
もともとは、ご自分で
選んでなさった仕事ですよね?
小川 はい。
糸井 直観的に、わかったんですかね?
小川 うーん、そうでしょうな。
それこそ高校の修学旅行の時に五重塔を見て、
「この建物は1,300年前に建ったものだ」
という案内があった。

そう聞けば、
どういうふうにして材木を運んできたか、
あの相輪をどうやって上げたか、
そういうことを考えてるのが楽しいですわな。
糸井 修学旅行のときから
ずうっとその思いが途絶えなかったわけですか。
小川 うん、途絶えなかったですよね。
高校を終わったときに棟梁のところに訪ねました。
しかし、そのときにすぐ入れなかったのが、
あとから考えたら、良かったんでしょうな。

ちょうど次に入ったのが、それから
丸3年たった、4年目の春でしたから。
ようやく弟子入りが認められた、という感じでした。
すぐに入れば、
それほどの思いがないんじゃないですかね。
糸井 スポーツ選手なんかでも、
小さいころから野球してて、
「野球の選手になりたい」
でも、なかなかなれるもんじゃない。
で、とうとう念願叶って入れたといっても、
それでも、仕事を休みますよね。

その意味では、
小川さんみたいな方というのは、
やっぱり相当珍しいですね。
小川 そんなことないでしょう。
糸井 どういう世界にいるんですか?
小川 うちの弟子なんかでも
毎日のように仕事して、
夜の12時過ぎまでやってますよ。
「もう12時だから寝ろ!」
言って怒るぐらいですからね。
糸井 それだけ魅力のある仕事だという……。
小川 どうでしょうな。
合っている子には、
一つも苦痛ではないでしょうな。
糸井 ぼくなんかも、まあ、似たようなもんで、
確かに仕事してるときは楽しいし、
社員たちもずうっと夜までいますけれど、
あいだあいだに、どういう風にじょうずに休むか、
みたいなものを本気で考えないと、
その日の終わりがなくなっちゃうんですよね。

乗りが悪くなってもやっているとかいうのって、
結局あまりいいことがないので、
休みかたを、仕事のしかたと同じように
大事に考えないといけないと思っているんです。
ただ、休みかたを意識することはするのですが、
なかなかできなくて……。

ただ何にもしない時間を作っちゃうか、
あぁ、キツイなあと思いながらやっちゃうか。
でも、やめるわけにもいかないと言いますか。
そのどちらかだけしかないという循環を
何とかしたいなと思っているんですよ。

小川さんの今のお話を聞くと、
仕事の中に休みは含まれているみたいですね。
小川 そうですなあ。
糸井 いいなあ、それ、できないもんかなぁ。
小川 できないんですかな?
できると思うよ。

(つづく)

2002-09-16-MON

BACK
戻る