CHILD
これでも教育の話?
どんな子供に育ってほしいかを、
ざっくばらんに。

第7回 結論ばかりのアドバイス

内田睦夫先生のプロフィールはこちら。



Photographs:Jiro Fukasawa
内田 わたしは学生時代、
ずうっと野球をやっていたんですけど、
恵まれていましたねぇ。
最初にお世話になったのが
元巨人軍の村松さんという人で、
そんなに偉い人とは知らなかったんですよ。
村松さんは、わたしに素質があるということを
見抜いてくれまして
「一度ちょっと来い、野球を教えてあげるから」
と、野球のおもしろみを教えてくれました。
それからは、わたしは野球ばっかりをしていました。

「野球でどこの筋肉を使うかわかるか?」
って聞くんですよ、
小学校5、6年生のわたしに。
「わかりません」
「ひねる力だけを鍛えなさい。
 そしたら、必ずうまくなる」
それを信じてずうっと、ここまできた。
糸井 ひねり続けてきた(笑)。
内田 ひねりです。
ゴルフでも同じですよ、全部ひねりでしょう。
理屈がそうなっている。
糸井 回転の運動ばかりですね。
内田 あのおじさんにいわれたことを
ずうっと信じてやってきて、
やっぱり正解だった(笑)。
教えてくれなかったら、
全然わからなかったことでしょうね。
あとは、青田昇さんが
すばらしいことを教えてくれましたね。
糸井 青田さんは
ぼくもちょっと知っているんですけど、
すばらしい人ですね。好きだなぁ。
内田 あの人は「プロの教え方」で
アドバイスしてくれました。

青田さんは
野球のデータを大型コンピュータに入れ
日本シリーズ7戦を予想する企画のために、
日立の工場にいらしたことがあるんです。
「ちょっと社会人野球を見させてくれ」
とおっしゃって、
ふらっとグラウンドにおいでになった。
わたしがバッティングをやっていると、
青田さんがつかつかと来て、
「おまえ、インコース、弱いだろう」
とおっしゃった。
わたしはドキッとしたんですよ。
いくら青田さんでも、
4球か5球打つのを見ただけで
そんなのわかるわけないと思った。
「なぜですか」
「君、ボールのどこを見てる?」
「真ん中です」
「だからダメなんだ」
この人、何をいうんだろうと思ってね(笑)。
「どうしたらいいですか」
「ボールの内側を見て、
 それも右目を意識しながら見て、
 そこにバットのしんを持っていってごらん」
というんですよ。
わたしはわけがわからないままだったんだけど、
手とり足とり教えてくれた。
それだけを一生懸命練習していたら
自然とわきがしまっていった。
「うん、そうだ、それで1年間やってごらん」
と青田さんはいって、
その年には79試合で4割ですよ(笑)。
糸井 すごい効果ですね。
コツだけ知ったら、自動的にそうなった。
内田 そうなんです。あのときの教え方というのは、
結果でいわないで、プロセスを重視し
具体的にやることを示す、というものでした。
つまり、
「わきをしめてインサイドで打ちなさい」
とはいわないで、
ボールの見方をそのように保つことで、
自然に動作がそうなるようにしなさい、と。
糸井 仕組み全体の一部分を
いっただけなんですね。
内田 そういうことなんです。
プロだなぁと思った。
アマチュアというのは、
途中のプロセスがなくて、
結果ばかりいうんですよね。
「わきが甘いからしめろ」とか。
糸井 マニュアルの限界
みたいなことはありますよね。
内田 野球で身をもって覚えさせてもらったことが
もとになって、それを
仕事へ持ちこんでいったんですよね、
結局、わたしは。
糸井 青田さんは、ほんとにいい方ですね。
内田 あともうひとつ、
教えて下さったことがあるんですよ。
青田さんは、わたしが監督をやっていた時代に
もういちど、日立のチームに
来てくれたことがあるんです。
「君のチームは盗塁、多いのか?」
「いや、速く走る選手がいないんですよ」
「どこを指導して盗塁させているんだ?」
「いろいろですね。ピッチャーを盗めと
 よくいいますが」
「盗めって、何を盗むんだ?」
「やっぱり左の足とか、いろんな動作からです」
こういうやりとりをしたのち、
青田さんはこう言った。
「そんなことより、右のかかとだけ見てろ」
というんですね。軸足を。
観察してみると、実際そうなんです。
ピッチャーが牽制するときは、
必ず右のかかとが浮くんですよ。
牽制しないフォームのときは浮かない。
十何年も野球やっていて、
そこに気がつかなかった。
ガツーンとショックを受けました。
糸井 ファーストに牽制球を投げるときには、
必ず右のかかとから動くんだ。
内田 そう。右のかかとが動かなかったら、
ランナーは、もう走ってもいいんです。
そうすると、1歩は違いますからね。
糸井 プロが持っているのは、
ほんとうに科学的な目ですね。
以前、ぼくは
絵の贋作の見分け方を
何かで読んだことがあるんです。
絵が本物か偽物かは、
10円玉ぐらいの大きさの、
一部分だけを見比べるとわかるらしいんです。
贋作は全体でバランスをとってごまかす。
でも、筆のスピードなんかの、
細かいところはその人だけの問題だから、
そこだけを比べると、わかっちゃう。
内田 そうです。
選手のときはあまりわからなかったけど、
監督になって教える立場になったら、
そういうポイントを貪欲に集めましたね。
糸井 実際にやってみてうまくいくから、
もっと知りたくなるわけですよね。
いいコーチがいて、
根性がどうのこうの、というのじゃない。
「これはこうだよ」と、全部納得させて
教えてくれる人が少しだけいればいい。
内田 学校の授業だって同じです。
ハイレベルの人の話を聞いちゃった方が早い。
プロのいいアドバイスが
必要とされているんです。

(つづく)



読者のかたから、
こんなメールをちょうだいしています(2)


今日の対談は、いかがでしたか?
ほぼ日編集部には、
お読みくださったみなさんから
たくさんのメールが届いています。
ここで、その一部をご紹介いたしますね!


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このシリーズ、ずっと楽しみに読ませて
いただいてます。
内田さんのお話の中で、
印象的だったのが第3回の、次の部分です。

わたしもちょっと知らぬ振りして、
「それ、何ですか?」という(笑)。
「いや、これから学校紹介を
 やっていかなきゃいけないと思って」
「ああ、それ、いいことだね」
というかんじで、
バックアップするような姿勢をとります。
そうすると、実行されていく。
こういうやり方が
いちばんいいのかなと思ってます。

私は、
「あー、これってヘルプじゃなくて
 サポートだ〜」
と思いました。
結果として「自分が気づいて、自分でやった」
という実感がともなってこそ、
本人の自信や財産に
なっていくのでしょう・・・。

次回も楽しみにしています。
高校の教員をしているオットにも
読んでもらおうと思ってます。

(はこみか)


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いつも楽しく読ませてもらってます。
こんな先生に私も出会うことができれば
よかったなあ〜って思います。
もう私は無理(現在2児の母)ですが、
もし内田先生の高校が近くなら
子どもを通わせたいな。
先生のお話はわかりやすくて説得力があります。
次回も楽しみにしています。  

(はしもと)


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これからもこの場所で
みなさまからいただいたメールを
ご紹介させていただきたいと思っていますので、
どしどしご意見や感想をお寄せくださいね。

2002-05-12-SUN

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