CHILD
これでも教育の話?
どんな子供に育ってほしいかを、
ざっくばらんに。

第2回 「ひとりじゃない」ということ

綾戸智絵さんのプロフィールはこちら。

糸井 綾戸さん、「努力してる」って
言ったけど、その努力のポイントって、
発見をしていくわけなんですか? 
綾戸 やっぱりお客さんに気づかせてもろて、
やらさせてもろて、また気づかせてもろて。

・・・これはほんま、嘘とちゃうねん。
わたし、ステージで努力しようとして
無理に努力してるんやない。
ふつうにやってるねん。

やっぱり、面倒くさいことは面倒くさいんです。
だけど、なんで努力するかといったら、
お客が見るから。
それは単なる「ウォッチング」じゃなく、
観察の「観る」もあるのね。
みんなの「見る」が全部わたしに来てるのよ。
そうするとアホできへん。努力するねん。
糸井 「アホできへん」と思ったら、
そこを埋めたくなるの?
綾戸 うん、何かで埋めたい。
人が嫌な気持ちにならないことで埋めたい。
こっちからちゃんと投げると、
お客さん、みんな喜んでくれはるねん。
そんで、私またやる。もうイヌ状態。
ウワーン「もっといこう!」って。
糸井 お客さんがいなかったら、
綾戸さんはきっと、昔のままだったんだ?
綾戸 そのまんまやわ、たぶん。
人間、ちょっとやそっとじゃ進歩せん。
そんな簡単に努力できない生きもんや。
そりゃもう、お客さんのおかげやな。
糸井 お客さん以外に影響を受けた人は?
綾戸 たくさんいるけど、
まあ、事務所の社長かなぁ。
糸井 社長は綾戸さんを褒めるの?
綾戸 褒めるねぇ。けど、
いやなこともちゃんと言う。
あのおっさんとは相性がいいみたいやね。
しゃべりやすいもん。
糸井 社長と綾戸さんは、
漫才のコンビみたいだよね。
綾戸 わたし、嘘ないねん、あの人には。
もう、全部言うねん。
ちょっと、お母ちゃんにも
言えんようなことでも言うとくねん。
何ぞあったときに、
「この人は助けてくれる」という気があるから。
命を救ってくれるという意味とは違うて、
ビジネスにおいて。
糸井 誰かにきちんと言っておくことで、
あらゆるものに関して
自分で悩まなくてよくなる部分が
出てくるんだよね。渡せちゃうから。
綾戸 そうやねん。
いっこずつ渡さないとね。

こんだけ仕事させてもろうてたら、
ちょっとずつ責任をみんなにわけて、
「信頼」で進めんと、やっていけないし、
成功しないと思う。
ひとりで全部を負ったら、どうなります?
百貨店の帰りと一緒よ。
袋いーっぱい持ちすぎてたら、
どこかで1個ぐらい落としてしまう・・・。
全部持ったらあかん。

これはあの人、これはあの人、というかんじで、
預けな、いかん。
ひとりで抱えてて
「どっか行ったあ!」って騒いでも
誰も助けてくれないからね。
糸井 じゃ、その「荷物」を預ける人が
まわりにいなかったときは、
自分ひとりで抱えたんだ? 重かった?
綾戸 重かったぁ。
いまは、預けられへんのは家に関することだけ。
あとは全部預けられるな。
糸井 家のことはきちんとしてるほうなの?
綾戸 いやぁ、これだけは他人に譲れませんわ。
糸井 あいかわらず、たんす整理とか・・・。
綾戸 バッチリです。
糸井 (笑)生活はものすごく守るんだよね。
綾戸 守る。
きのうも大阪でコンサートがあって、
みんなは1泊したけど、わたしは帰った。
洗濯物の取りこみから何から、
やっぱりちゃんとしておかないと。

「晴れ」が何日続くか、計算してるし。
「そろそろ雨やな」とか、考えたり(笑)。
糸井 それって、ふつうは
「そんなに考えて、気苦労でしょう?」
と言われるようなことだよねぇ(笑)。
綾戸さんには、平気なことなの?
綾戸 というよりも、
「やっときたい」わけ。
糸井 やってないと気分悪いんだ。
綾戸 うん。
女だからとか、主婦だからとか、
そんなもんじゃなく、自分の問題。
家のことをきちんとやっておかないと、
安心して歌えない。
糸井 歌姫じゃなかったら、
すっごい口うるさいババアになったかもね。
綾戸 こうやって誰かが水を飲もうとして
コップをもち上げると、
その瞬間にわたしはテーブルを拭くからね。
もう、餅つきだよ。
上げたらポーン、掃除されてる。
糸井 病気に近いですね。
綾戸 だからわたし、絶対に
息子の嫁と同居しないもん。
いまからそう決めてるもん。
糸井 綾戸さんは、そういうしつけを
誰かから厳しく受けたりしたの?
綾戸 ぜんぜん。
糸井 じゃあ、なんでなの、それ。
綾戸 そういうことを、
おふくろが一切しないから、
それがすごく嫌だったの。
糸井 反面教師ってこと? 
綾戸 そう。
例えばね、おふくろは、
目刺しをついこの前買ったのに、
また買って、新しいほうを食べてる。
「冷蔵庫の中で目刺しをつくるなよ」
と言いたいぐらいよ、わたしは。
古いほうがカリカリになっちゃっててね。
もう「very目刺し」になってる。

もったいなくて、わたしはいつも
古いほうを隠れて食べてた。
「捨てなさい!」と言われても、
「もったいない!」って言い返して食べてた。
糸井 すごい。言い返して古い目刺しを食べる子ども。
綾戸 それにね、たんすをあけると、
パンツが一枚も入ってないのよ?
洗濯物のとこに全部、山積みにされてる。

おふくろは、株の情報を見ながら
「平和不動産 300、ザルバ 200……。買いや!
 ウワァーッ、こら天井やなぁ!」
とか、叫んでる(笑)。
糸井 おふくろは、男なんだ(笑)。
綾戸 小学生のわたしが、
「お母ちゃん、パンツないねんけど」と言うと、
「買うたらええがな、もうけてるねんから」。
糸井 すごいわ。
綾戸 わたしは、
「ウワーッ、そんなことできへん」
って思ってしまって、それからは自分で
ちゃっちゃっと、何でもするようになった。

子どものころから何でもやってるから、
仕事は早いんよ。
糸井 ・・・この対談のテーマは、
綾戸さん、知らないかもしれないけど
「教育について」なんだよね(笑)。
綾戸 ああ、そしたらちょうどいいねぇ。
糸井 つまり綾戸さんの少女時代からわかる教訓は、
「いい子にしたかったら、何も教えるな」(笑)。
綾戸 そうやな(笑)。
(つづく)

2002-02-12-TUE

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