江戸が知りたい。
東京ってなんだ?!

テーマ4 明治大正の女学生ブーム!

その1
みんなのアコガレ、花の東京の学生生活。

今回のテーマは「女学生」です。
明治から大正にかけて、東京の女学生が
ブームになった時期があったんですって!
いわば「お嬢様ブーム」。
そのあたりを、江戸東京博物館の
小山周子さんに、お聞きしていきますよ〜!



小山さん、よろしくお願いします!

ほぼ日 前回のお話で、
新宿のカフェーには早稲田の学生が
出入りしてたっていうのを聞いて、
ちょっとビックリしました。
お金、あったのかな? って。
小山 ちなみに銀座のカフェーには
慶応生とかも行ってたみたいですよ。
慶応大学の学生が
女給さんとつきあってて
どうのこうのとかって。
ほぼ日 あらら。慶応は昔からお金持ちで
プレイボーイだったんですね。
小山

女給さんは、
自分はパトロンが他にいても、
学生とつきあうことがあったことを
小説で石原慎太郎が書いてますよね。
それが昭和20年代の話だから、
戦前もそういうのが
あったんじゃないかと思いますよ。

ほぼ日 ふうむ。学生生活って、けっこう
華やかだったんですね。モテモテで。
今以上に、
大学に行かない時代だから、
東京の学生イコール、
やっぱりお坊ちゃん、
お嬢ちゃんですよね。
小山

そうですよね。
高等学校や大学に行けるっていうことが、
ひとつ大っきなものだったし、
ましてや、私立のそこそこいい大学
っていうふうになると、
やっぱりかかるお金も違うし。

ほぼ日 東京の学生生活は、
マスコミをにぎわしていた感じが
展覧会でも伝わってきました。
女学生の運動会の様子が
絵になってたりしてましたね。
小山 そうなんですよ。
『風俗画報』という、
明治22年から大正5年まで
出ていた雑誌に掲載されたものを
展示しています。
今のお茶の水女子大の
付属高校だと思うんですけど。
ほぼ日 障害物競走かなんかをしてましたね。
袴はいてね。
小山 そう! わたし、あの絵は驚きました。
だって、運動会の種目に
「髪結競争」があるんですよ。
ほぼ日 そう、変な種目いっぱいありましたね。
それが絵になって、
雑誌のグラビアになってることに驚いた(笑)。
憧れだったんですね。
今で言うと、何?
読者セレブみたいな?
小山 うーん(笑)、まあ、
そんな感じだったんじゃないのかな。
やっぱりアコガレの、
東京の学校の女学生ですからね。
ほぼ日 そうですよね。
そんな簡単に行けなかったですよね。
で、地方から東京の寄宿舎のある
女学校に入れる、って、
よほどお金持ちじゃないと!
小山 日本女子大の女学生については
こんな歌があるんですよ。
「ゴールド眼鏡のハイカラは、
 都の西の目白台、女子大学の女学生。
 片手にバイロン、ゲーテの詩、
 口に唱える自然主義、
 早稲田の稲穂がさーらさら、
 魔風恋風そよそよと‥‥」
ほぼ日 ポン女の女学生は、
早稲田の男と恋仲になり、
バイロンとゲーテなんか読んじゃって、
金縁めがねかけてて、
かっこいい〜! みたいな。
すごいな、学生生活が
こんなにもてはやされてたっていうのは、
すごいですね。
小山 憧れの対象は「女学生」だったんですね。
大きなリボンをつけて、
袴を着けて、マーガレットという髪形をした、
東京の女学生っていうのが、
すごーく、憧れだったんです。
この髪形です。
ほぼ日 マーガレットって、洋風の名前なのに
和風の髪形ですね。
で、この人形とかに
なったりしてたんですか。
小山 そうですね。
このお人形のスタイルが
そのまま当時の女学生ですね。
ひな人形と一緒に飾ったんだそうですよ。
ほぼ日 へーえ!
そういえば、学生生活の様子は
絵はがきにもなってましたよね。
小山 そうなんです。
絵はがきって、すっごくたくさん
発売されたんですよ。
何でも絵はがきになってた時代が
ありました。
ほぼ日 何でも絵はがき?
それ、なんだろう?
何の役割なんだろう?
小山 雑誌とか新聞の特集記事に近い役割ですね。
だから「災害」の絵はがきとかも
多いんですよ。
震災絵はがきとか、水害絵はがきとか。
ほぼ日 え? それは、目的はなに?
忘れないように?
小山 いえ、そういう「記念」ではなくて、
実況を伝えるってことですね。
ほぼ日 絵はがきが、メディアだったんだ。
小山 で、そんな中で、よく売れたもののひとつに、
学校の絵はがきっていうのも、あったんです。
ほぼ日 コレクションとかっていうより、
使ってたんですか? 実際に。
小山 コレクションされていたのと同時に、
もちろん使われていますよ。
たとえば早稲田の、
野球の絵はがきを見ると、
「お兄ちゃんが今
 どこにいるのかわかるか?」って。
「早稲田の試合を見に行ったんだぞ」って。
ほぼ日 おみやげで買って、
郷里の弟や妹に出したんだ!
都会生活を田舎に伝えるメディア。
小山 だって、この早稲田の野球選手の後ろ側に、
人、密集してますもん。
ほぼ日 ほんとだ。
小山 おじさんとか若者とか子どもとか。
ほぼ日 帽子かぶってますよね、みんな(笑)。
小山 かっこいいですよねー。
帽子っていうのが、
男の人が洋風なものを取り入れた中で、
最初に近いものだったんですね。
和服に帽子、とかっていうのもあった。
ほぼ日 和服に帽子!
情景が目に浮かびますね。
夏はパナマ帽と麻の着物と。
あ、この絵はがきも面白いですね。
女子美の文化祭?
ほぼ日 この3人はきっと‥‥。
小山 わいわい話してるんでしょうね〜!
ほぼ日 「超すごくない?」みたいなことを
言ってるはずだ(笑)。
小山 「やばくない?」とかって(笑)。
「これってどうよ?」とか(笑)。
ほぼ日 そうそう(笑)。
言葉遣いは変わっても、
なにか、変わってないものが
あるような気がする写真ですよね。
小山 で、真ん中の子が、
草履をもてあそんでる
感じがあるんですよ。
ほぼ日 あ、ほんとだ。半分脱いでる。
お行儀悪い(笑)!
小山 右の子が、真ん中の子の肩に手をかけて。
ほぼ日 仲よさそう。
かわいいですね、すごく。
女子美か〜。
小山 昔は美術学校っていっても、
絵の得意な女の人が、
勉強を続けられるっていったら、
もうここぐらいしかなくて。
日本で絵が好きな女の子にとっては、
憧れの学校だったと思うんですよね。
ほぼ日 そうでしょうねー。


次回は、その「学生生活」をクローズアップ。
「すごろく」を題材に、盛り上がりますよ〜!
おたのしみに!

2003-10-03-FRI
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