江戸が知りたい。
東京ってなんだ?!

テーマ3 カフェーは明治の昔から

その2 かわいい女給さん。

ほぼ日 今回、写真で展示してあるものは、
ええと、昭和の写真ですね。
震災後ですね。
小山 銀座も、いまのように、
飲食店とかがなかなか少なかったんです。
洋服屋さんとか帽子屋さんとかばかりで。
銀座っていうのは、お買い物をして、
すぐ帰るみたいな、
そういう街だったんです。
ほぼ日 この当時のメニューって、
どんなものだったんですか?
小山 メニューは、お店によって、
ぜんぜん違ったようですよ。
ほぼ日 あ、じゃ、今みたいに、
だいたい同じものがあるのとは
違うんですね。
小山 今だともう、どこ行っても
コーヒー、流行はキャラメル入り、
みたいなところがありますけど。
ほぼ日 やっぱり、欧風の
メニューだったんでしょうか。
小山 イギリス風にサンドイッチとか。
ほぼ日 ウイーン風に
ザッハトルテみたいなものとか。
小山 甘いものですね。
不二家とか千疋屋とかも
出てきますからね。
千疋屋とかでは、フルーツポンチ。

ほぼ日 へぇー、すごーい!
小山 不二家は震災の直前にできて、
ちょっと被害を受けて。
千疋屋は、総本店の直営店が、
文房具の伊東屋の地下にあったんですって。
といっても、場所は、
いまの松屋デパートのところですけれど。
あと、キャンデーストア。
ほぼ日 森永の!
でも、そういうふうに、
いまにつながる健全なカフェーも
あったと思うんですけれど、
写真を見るかぎり、
ほら、たとえばこの
「カフェー・ロンドン」なんていうのは、
夜っぽいですよね。
「バー」みたいなものに近い感じが。

ほぼ日 女給さんには、今で言う
ホステスさんみたいな、
そういう役割はなかったんですか?
紳士たちが夜行ってお酒を飲んで、
きれいな女給さんにお給仕してもらって、
みたいなムードは?
小山 そうなんですよ、
震災後、カフェーっていうのが
どんどんできてくると、
お店によっていろいろ
特色が出てくるんですけど、
女給さんのサービスを売りにしたお店、
っていうのが、出てくるんですよ。
ほぼ日 やっぱり!
すると、女給さんって、
どういう立場だったんですか?
たとえば健全なカフェーの女給さんは、
スチュワーデスみたいな、
女性の憧れの職業だったとか、
そういう感じだったのかな。
小山 憧れであり、やっぱり一般の人にとっては、
ちょっとわたしたちとは違うかな?
みたいな感じだったようですよ。
昔って、やっぱり女の人は
まだまだ働いてなくって。
ほぼ日 そうですね。
今以上だったかもしれないですね。
ほぼ日 うーん。
小山 もうこの人たちは、ほんとに、
朝帰りとか、どんどんしてた人たちだから。
もうほんとに一般の人たちから見ると、
きれいなかっこうしてるから
すごく素敵だと思うけど、
あんなふうにはなれないっていうか。
ほぼ日 うちの子はさせられません、
みたいな?(笑)。
お父さん行ってるけど(笑)。
でもこれ、絵葉書になったりしてるから、
ちょっとアイドルっぽいですね。
かわいいですよね。
このふたりは、すっごく若いですよね。
小山 若そうですよね。
ほぼ日 しかも、制服が着物だけど、
めちゃくちゃモダンな柄ですよ。
小山 そうですね。
ほぼ日 太いボーダーというか斜めストライプで、
かわいい。これ、左の子なんて
さぞや派手な感じだったんでしょうね。
小山 このエプロンっていうのも、
昔は今ほどなかったですから。
この真っ白いエプロンって、
すごく目立ったと思いますよ。
カフェーの扉を開けたら、
この子たちが待ってる。
ほぼ日 こないだベトナムの旅番組を見ていて、
ベトナムの喫茶店が今、この状態でしたよ。
すごくきれいなベトナムの娘さんが
もんのすごいたくさんいて、
アオザイを着て、
螺旋階段からコーヒー持って降りてくる。
小山 そうそう、今和次郎が、大正時代、
女給さんの制服を記録に残していますよ。
ほぼ日 おお! 考現学の今和次郎さんについては
あらためてお話を聞こうと思っていたんです。
うんうん、千疋屋とかって
書いてありますよね。
CAFE KIRIN、小松食堂、
千疋屋フルーツパーラー地下室喫茶部、
TIGER、三共、佐々木喫茶、
ばんじゅう本店‥‥なんとなくこの服装で、
カフェーのようすが、
モダンなのかクラシックなのかわかりますよね。
小山 なんとなくわかりますね。
ほぼ日 ばんじゅう本店なんかは、
古式ゆかしい感じがしますよね。
ほぼ日 でも、千疋屋なんて、
すっごいかわいいですよ。
ミニだし。ミニだよ。
すごくかわいいですね。
小山 (笑)。
ほぼ日 エプロンのデザインのおしゃれなこと!
千疋屋。だって、胸でとめてる。
背中のリボンの位置だって高いし。
かわいいですね。
これ見ると、女の子が
憧れるだろうなっていうの、わかりますね。
どうせ働くならきれいな格好したいって人が
いてもおかしくないですよね。
小山 やっぱり働きたくてもなかなか
働けないお嬢さんとかがいっぱいいた中、
きれいなかっこうをして
髪の毛もキリッとさせて、
自分らしく生きていたっていうところは、
憧れたんじゃないかと思います。

今回はここまで。
次回は、だんだんと「カフェー」が
いかがわしい場所に!? というお話です。
お楽しみに!

2003-09-29-MON
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