担当編集者は知っている。


『久世塾』
著者:久世光彦
価格:1,680円 (税込)
発行:平凡社
ISBN-13: 978-4582833485
【Amazon.co.jpはこちら】

作家で演出家の久世光彦さんが
「最高の脚本家を育てたい」
と主宰した「久世塾」の講義をまとめた1冊です。
「ほぼ日」でもご紹介していた「久世塾」
「人を感心ではなく、感動させることです。」
(小林亜星さん)
「どん底であるほど、ていねいに生きることです。」
(内館牧子さん)
「みんな本当は今の時代に不自由しているんです。」
(糸井重里)
など、各界のクリエイターが、今の時代に
「表現」という仕事を選ぶ人たちにむけた
熱い講義が再現されています。
このご本を担当された平凡社の林さんに
お話をうかがいました。
(「ほぼ日」渡辺)

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担当編集者
/平凡社 一般書籍編集部 林理映子


■久世さんが演出家として残した貴重なもの

「ほぼ日」読者の方なら
もしかしたらご存知かもしれませんが、
「久世塾」とは2000年7月〜9月に
実際に行われた久世光彦さん主宰の
シナリオライター養成講座でした。
(今でもその当時のレポートは
 「ほぼ日」の「21世紀の向田邦子をつくろう。」
 からご覧いただけます!)

「21世紀の向田邦子をつくろう」
というキャッチフレーズのもと、
久世さんをはじめ一流講師陣の方々が
実践的なシナリオ技術を教えてくれる豪華な塾でした。
樹木希林さんや浅田美代子さんが
ゲストとしていらっしゃって、
塾生の書いたセリフを
実際に演じてくれたりもしたそうです。
本書は当時特別講師として招かれた方々による講義を
メールマガジンとして配信したものを、
1冊にまとめました。

作家としても知られる久世さんですが、
演出家として書き残したものはほとんどなく、
演出家・久世光彦を知る上でも貴重な本だといえます。
「がんばるだけじゃだめだ。賢くがんばりなさい」など
実際に久世さんが常に口癖にしていた言葉が
たくさん詰まっていて、
久世さんの奥様からも
「久世がいきいきとこの場にいるようです」
とのお言葉をいただきました。


▲久世塾で講義中の久世光彦さん。


■人生の教科書にもなるプロのクリエイターの話

登場するのは、久世光彦さんのほか、大石静さん、
内館牧子さん、竹山洋さん、青柳祐美子さん、
そしてダーリンこと糸井重里さん、
山元清多さん、金子成人さん、小林亜星さん。
みなさん今でも現役で活躍されているシナリオライター、
クリエイターの方ばかりです。

その人たちがどうやってプロになったのか、
そしてどうやって今でもプロであり続けているのか
ということを率直に語ってくれています。

例えば、40歳でデビューしたという内館牧子さんは、
13年間のOL生活がいかに自分の糧になっているか、
毎日をていねいに生きることが
いかに大切かというお話をしています。

山元清多さんは、
「僕が脚本家になったのは偶然です」といいつつも、
ものを作るときに問われる「自分の考え」の必要性を
シビアに教えてくれます。

糸井さんは、「どうなりたいんだという希望がなくて、
どういう方向に走っていけばいいのかもわからなくて、
技術だけが身についていくということは
ありえないのです。
みなさんにはそれがありますか?」
と問いかけます。
ほかにも実感に基づいた生きた言葉が溢れていて、
なんというのか「ズシン」ときます。
ものを作るという仕事は、
問いかけを持つということなのかもしれません。

シナリオライターを目指す人、
ものを作る人はもちろんですが、
人生の教科書としてもとても役に立つ1冊です。


▲久世さんと糸井さんの対談の様子。
 ふたりともリラックスして
 ぶっちゃけトークをしています。



■次の一歩を踏み出すときに読んでほしい本

なにを隠そう、私も当時「ほぼ日」の読者として
久世塾の存在を知りました。

しかし授業料は3ヵ月で24万円。
とても私が出せる金額ではありませんでした。
メールマガジンは確か3ヵ月2000円くらいで
購読できたと思います。
それならなんとか払えるかな〜と思って
申込みをした記憶があります。
当時はインターネットの振込みサービスもなかったので、
メールで申込みをした後に
走って郵便局へ振込みに行きました。

その頃のわたしは
別にシナリオライターになりたかったわけでもなく、
自分がなにをやりたいのかさえわかりませんでした。
ものを作ってみたいという
漠然とした憧れはあったものの、
自分になにが出来るのかわからなかった。
やってみて、出来なくて、
そして人からバカにされるのがこわかった。
そのくせとってもひがんでいて、
面白いことは常に自分とは遠いところで
起こっている出来事のような気がしていました。
どうしようと思いながらも
次の一歩を踏み出す勇気がどうしてもなかったのです。

その後ポツリポツリと送られてくるようになった
メルマガはとても刺激的な内容でした。

「久世塾」に登場する方たちは、
それぞれの覚悟で仕事をするということを引き受けて、
ものを作るという仕事に携わっています。
わたしはそれすら引き受けようとしていない自分を
恥ずかしく思いました。
そして、いつか来る
「わたしがなにかを引き受けようと思ったとき」に
これを読み返すことが必要になるかもしれないと思って、
毎回毎回のメルマガをプリントアウトして
1冊のファイルに綴じたのでした。

何年も経ってわたしはすっかり
強靭でふてぶてしい社会人になりました。

しかし2006年3月に久世光彦さんの訃報に触れ、
わたしは黄ばんでボロボロになったファイルを
押入れから探し出し、
編集長に「これを出版したいのですが」と
相談したのでした。
その後久世さんの奥様に会い、
当時関わった方々にお話を聞きながら、
『久世塾』という本が出来上がりました。

自分がこの本を作って
こうして「ほぼ日」で原稿を書かせていただける
というのがとても不思議な気持ちです。

なにかしたいのになにをしていいのかわからなかった
あの頃の自分に読ませてあげたいなぁと思います。
そして、自分と似た悩みを持った若いひとたちにも。
シナリオライターになるかどうかは別として、
次の一歩を踏み出したいときに
きっとこの本はヒントを与えてくれると思います。

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『久世塾』
著者:久世光彦
価格:1,680円 (税込)
発行:平凡社
ISBN-13: 978-4582833485
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メールの題名に本のタイトルを入れて、
postman@1101.comに送ってください。

2007-05-11-FRI

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