担当編集者は知っている。



『京都伝統工芸
 名工と若き職人がつなぐ心と技』

著者:柴田敦乙(しばたあつと)
価格:1,470円(税込)
発行:現代書林
ISBN:477450680X
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京都の専門学校
「京都伝統工芸専門学校(TASK)」。
今まで主に徒弟制度だった
伝統工芸を学校で教えるという
京都ならではの学校です。
先生は熟練した第一線の職人たち。
門外不出・一子相伝の壁をとりはらい、
匠の技を後世に伝えようとする
新しい教育現場を徹底取材したのが
このご本です。
編集を担当された武藤さんに
お話をおうかがいしました。
(「ほぼ日」渡辺)

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担当編集者
/現代書林 武藤郁子
(企画担当:坂江真)


京都といえば、日本の伝統文化の宝庫。
1200年のながきに亘り育まれた文化と土地柄が
生み出す風土、建物、庭、それらを彩る工芸品‥‥。
まさに「美しい日本」の象徴です。
とはいっても、伝統工芸界を取り巻く状況は、
京都と言えど例外ではなく、大変厳しいものがあります。
後継者不足、材料の枯渇‥‥。
そして作り手側にある問題だけでなく、
買い手側の文化衰退も、
非常に深刻な問題といえるでしょう。
そんな中、京都の伝統工芸界が
新しい試みを始めています。
後継者の育成を目指して、
従来の徒弟制度によらない人材の発掘を急務とし、
平成7年に「京都伝統工芸専門学校(TASK)」という
学校を作りました。
この学校の素晴らしいところは、
先生方が「現役の名工」だということ。
最高の技を学校で教えてもらえるという
驚きのシステムなのです!
(京都伝統工芸専門学校のホームページ
 http://www.task.or.jp/

本書は、その京都伝統工芸専門学校(TASK)さんの
ご協力をいただき、
新しい試みが現在どうなっているかを取材したものです。
現在TASKで教えてもらえる工芸品は
陶芸、京指物、石工芸、蒔絵、仏像彫刻など
大きく11あるのですが、
それぞれの工芸品について
その担当教授である名人の先生と、
その先生の教え子であり現在プロとして頑張っている
若い職人さんたちに取材させていただきました。



今回執筆をお願いした柴田敦乙(しばたあつと)さんは、
とても丹念な取材をされる、
言うなれば「ライティングの職人さん」です。
もともと陶芸の世界などに詳しく、
また古いもの、美しいものをとてもお好きである
ということを以前からよく聴いていました。
ですから、この企画が持ち上がったときに、
ぜひ彼女にお願いしたい、と思ったのです。
そんなわけで、以前から
「古いものが好き、美しいものが好き、
 職人さんの世界が好き!」
とアツク語り合っていた私たちにとって、
この企画はまさに「夢の企画」でした。
普段はなかなかお会いできない京都の名工に
大手を振ってお会いできる! お話を伺える!
さらに、未来の名工にもお話が聴けるとなれば、
もう言うことはありません。

ただ、問題なのは、欲張りにも、
11ジャンル(陶芸・京指物・竹工芸・漆工芸・
金属工芸・石工芸・仏像彫刻・京人形・木彫刻・彩色・
蒔絵)もの伝統工芸を一気に取材し、
一冊の本にまとめよう、としたことでした。
一つをとっても一冊の本が
出来上がってしまうような奥深いものです。
それを11もまとめて
一冊にするということは、
かなりの荒業‥‥。
しかも、好きなジャンルはあるとは言え、
ほとんどがまったく知らない世界である、
ということも大問題。
好きは好きですが、知識や体験をもっている
というわけではないのです。
ちょっと冷静になって考えてみると、
ものすごく恐ろしいような気がしてきました。
しかし、確かに私たちは「素人」。
だけどきっと読者も「素人」! 
素人にもわかりやすい伝統工芸の入門書なら
我々にもつくれる。
下手に背伸びをせず、
素直に感じたことを伝えるような本にしよう、
と腹を決めたのでした。

こうして喜びの日々は始まりました。
取材は、限られた時間ながらも、
それはもう最高に楽しい時間でした。
学校での様子、また工房での様子を
一つのジャンルにつき
それぞれ一人の先生とそのお弟子さん(元生徒さん)に
取材させていただきました。
そして、取材の中で私たちは何度も目頭を熱くしました。

折々に名工の方々の人間的魅力に触れ、
圧倒され感動し、癒されました。
そして若い職人さんたちの、
自らの望む道を見つけた人のみが持つ
キラキラとした瞳ときたら‥‥。
もちろん彼らが作り出す、魔法のように
美しい工芸品にも感動しましたが、
いつのまにか彼ら自身、
人間そのものにすっかり魅入られ、
惚れ込んでしまっていました。

彼らの輝く瞳を見ていてつくづくと感じたことがあります。
ここには、本当の意味での「教育」があるのではないか、
ということなのです。
なんだかんだ言って職人さんの世界はとても厳しいです。
努力してもすぐにうまくなるものでもないし、
お金をたくさん稼げるというわけでもありません。
それでも彼らの瞳がキラキラしているのは、
圧倒的な腕を持った素晴らしい先達が
厳然と目の前にいる。
そして、「この仕事は、ほんまに楽しいで!」
と、目をキラキラさせて言ってくれる。
50年、60年続けている人が
これほど幸福な笑顔をするなら、
自分だってきっとそうなれる、いやなりたい!
と思えるんじゃないだろうか、そう思いました。
「ああいうひとになりたい!」という
はっきりとした目標がある、これこそ最高の教育。
心から尊敬できる人を師とできること、
こんなに頼もしいことはないように思うのです。

こうして私たちが取材を終えて、
柴田さんが出した結論は、
やはり「人」なんだということでした。
私たちの祖先が何百年と受け継いできた美しいもの、
それはまた新しい人によって受け継がれていくのです。
くさいことを言うようですが、
それは「心」によってつながっていくものだと思います。
そしてそれは新しいシステムの中でも、
確かに息づいていたのでした。



本書は、工芸ごとに章だてています。
ぜひ、お手にとって興味のあるところからお読みください。
専門書のように、工芸の細かな技術や工程が
記されている本ではありませんが、
職人さんたちの生き生きとした姿を通して
その工芸の素晴らしさを
おわかりいただけるのではないかと思います。

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『京都伝統工芸
 名工と若き職人がつなぐ心と技』

著者:柴田敦乙(しばたあつと)
価格:1,470円(税込)
発行:現代書林
ISBN:477450680X
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2006-02-14-TUE

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