担当編集者は知っている。




『ほんじょの鉛筆日和。』
本上まなみ著
出版社:マガジンハウス
本体:1500円

活字で書かれているのに、
鉛筆で書かれているかのような
優しさが静かに伝わってきます。
本上さんの涼しい文体に浸って、
クーラーのきいた部屋でほっとしたいです。



「私、原稿は必ず手書きなんです。
 200字詰めの原稿用紙を前に消しゴムを横に置いて、
 鉛筆で、こう、ゴリゴリッと、スラスラじゃなく、
 書いていきます。そのスピードが好きなんです。
 なんていうか、そのスピードでなくちゃ
 見えてこないこととか、
 そういうことを書いてみたいなって。
 だからタイトルは『ほんじょの鉛筆日和。』。
 どう思います?」

打ち合わせの席で、
デザイナーのクラフト・エヴィング商會吉田さんも
僕も、深く頷いた。
吉田さんはその話からイメージを膨らませ、
カバーのアイデアもたちまち固まった。

初めて本上さんと打ち合わせをしたのは2月26日。
都内某ホテルのラウンジにて。
その時はこちらの編集長、副編集長、
アンアンの連載担当者
(もともとこの本はアンアンの連載エッセイ
「ほんじょのへもへも通信。」をまとめたものです)
も同席して、まあ顔合わせといった感じだった。
発売日はアンアンの連載終了と
ほぼ同時期ということで、
すんなり5月23日に決まった。
(ただ、後に、よりいいものを作るため、
 これが1ヶ月後に延期されることになりましたが)

連載は5月29日発売号までと
すでに決まっていたから、
最後の数回はアンアンより
先に原稿を仕上げてもらうことになる。
ドラマ撮影中の本上さんに、
なんとかスケジュールを捻出してもらった。

デザイナーさんは本上さんのたっての希望で、
クラフト・エヴィング商會の吉田さんご夫婦に
お願いすることになった。
昨年、講談社出版文化賞・ブックデザイン賞を
受賞なさったお二人。

本上さんと吉田さんご夫妻の醸し出す
涼しい空気のようなものが
この本の全体を決めるような気がした。

本上さんの希望は
「よくあるタレント本にはしたくない」
ということだった。
彼女はとても文章を大切に考えている。
「いつの日か、童話を作るのが夢です」
という話も聞いた。
でも、彼女は決して急がない。
今はエッセイを書いて文章を磨く時期だと
ちゃんと自己分析している。

「だから、3冊目となる今回の本は、
できれば私の写真は少なめでお願いしたいんです」
と本人から提案があった。
本上さんの独特の文体は編集者仲間でも
話題になっている。
「女優・本上まなみ」という表現もやめようと決心した。

本上さんには連載原稿をまとめてお渡ししていた。
約1年半にわたる連載、当然加筆訂正があるはずだ。
ただ、そんなにはないだろうと、タカをくくっていた。
だが、本上さんの加筆の量が彼女の
本を出すことへの本気度を表していた。

本上さんは本当に忙しかったと思う。
ドラマの撮影と雑誌の連載とを並行して
原稿を見直すのは至難の業だったに違いない。
それでも彼女は締め切りに遅れることなく
きっちり仕上げてくださった。
4月15日、最後の原稿をいただいたときは、
本当に頭が下がる思いがした。
やはり、プロの頑張りだと思いました。
本当にありがとうございました。

同様に、クラフト・エヴィング商會のお二人も、
まさにプロの技だった。
ほとんど危機的な状況でちゃんと仕上げてくださった。
本当に本当にありがとうございました。

帯と口絵の撮影カメラマンは
現アンアン編集部の天日恵美子。
彼女は、実は育児休業中だったのだが、
友人でもある本上さんの単行本ということで、
子連れ親連れで駆けつけてくれた。
本上さんの人を動かさずにはいられない力を感じる。
セッションはとても和やかな雰囲気で行われ、
ヘアメークもスタイリストもいない中、
本上さんはときに子供をあやしながら、
最高の笑顔を見せてくれた。

ちなみに、目次と後書きの扉にある原稿用紙は、
彼女が実際に使っているもの。
でも、カバーの鉛筆は残念ながら違います。
撮影用のものです。あしからず。

産声はとても素敵だった。
だからこそ、この子にはすくすく育ってもらいたい。
みなさん、どうかよろしくお願いします!

2002-08-08-THU

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