担当編集者は知っている。

最新のオススメ本


『中空』
著者:鳥飼否宇
出版社:角川書店
価格:1300円+税
ISBN:4-04-873299-4



担当編集者/角川書店・池田和人さん

ほぼ日からデビュー!?

第21回横溝正史ミステリ大賞・優秀賞受賞作「中空」
作者鳥飼否宇と聞いて、
新人のミステリ小説家のデビューと思われる方、
正解ですが、まだまだです。

竹の写真をバックに“中空”と書いてある表紙の本と
思われる方、良く書店に行っているめざとい方ですが、
もう一歩です。

「ほぼ日刊イトイ新聞」をよく読まれている方なら、
是非「ハブの棒使い」の筆者・鳥飼久裕氏とも
お答え下さい。
「ハブの棒使い」には
奄美大島の色々な生物の日記が書かれています。
「ハブの棒使い」の以前からのファンの方々、
是非「ほぼ日刊イトイ新聞」が生んだ
ミステリ小説家のデビューとしてお祝い下さい。

鳥飼否宇さんの説明をいたしましょう。
本名・鳥飼久裕。1960年福岡生まれ。
九州大学理学部卒。出版社勤務を経て現在フリー。
現在、奄美大島在住。
というのが簡単なプロフィールです。

なぜ奄美大島に行ったのかというと、
生物観察をしたかったからという理由で、
会社を辞めて移り住んだそうです。
現在も出版社に勤めている身からすると
すごくうらやましい話だと思うんですが・・・。
晴れた日は生物観察に外に出て、
雨の日は読書と執筆をする。
そんな生活から生まれたのが、この「中空」だそうです。
そしてこれが
初執筆、初投稿、そして受賞とあいなりました。

さてさて、この「中空」の魅力について、
選考員の選評では。
「心地よいバランス感覚で創られた本格ミステリの秀作」
(綾辻行人氏)
「おとなのお伽話といったストーリー」(内田康夫氏)
「荘子や竹の花を大道具や背景にすることにより
 観客に席を立たせない舞台とした」(北村薫氏)
「会話の滑らかさや竹林の描写の美しさなど、
 美点のたくさんある作品」(宮部みゆき氏)
と、語られています。

あらすじは、鳶山と猫田の二人は、
数十年に一回という竹の花の開花を撮影に、
荘子の思想を規範に暮らす大隅半島の南端の
鄙びた村・竹茂村に来た。

そこは20年前に村人7人が殺害されるという
惨劇の爪痕が残る村であった。
そして猪の罠に首がかかり、
腹部に矢が刺さっている姿で発見される
忌まわしい殺人が起こる。
村は外部との連絡を断ち、
村の中で解決することを決める。次々と起こる殺人。
鳶山と猫田の二人は、真犯人を見つけられるのか?

横溝正史作品からミステリを好きになり、
ミステリを書いてみようと思い、
応募するなら是非、横溝正史ミステリ大賞だと思っていた
鳥飼さんだからこそ書けた、
横溝正史ミステリ大賞にふさわしい、
閉ざされた空間で、惨劇が繰り返され、
それを推理する作品です。

帯で「正統・本格ミステリ誕生」
というコピーをつけてみました。
謎解きのおもしろさが楽しめる工夫が
こらされているからです。
また、主人公の二人、
探偵役的な鳶山と、ワトソン役的な猫田との掛け合いも
読む楽しみを加えてくれます。
推理小説はやっぱり、
勘違いな推理をしてくれる相棒が味わいですよね。
奄美の自然の中で生物を追いかける
「ハブの棒使い」の筆者が、
以上のようなミステリを書いてしまった、
というミステリを楽しむのも手かも・・・。
とにかくよろしくお願いしますの一冊です。

2001-06-12-TUE

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