感心力がビジネスを変える!
が、
感心して探求する感心なページ。

第2回 クリエイティブを実業にする挑戦。




スティーヴ クリエイティブ・センター構想の背後には、
現実的に世間がどう動いているか、
っていうことへの関心があります。
例えば、今の教育の制度っていうのは、
若いクリエイターが学校に行って卒業しても、
ビジネス的な文脈の中でモノを創って売る、
そういう経験が
まったくない人でしかないんですよね。
そういう若いクリエイターの多くは、
自分が受けた教育っていうのに
何かだまされたような気がしてしまう。
卒業した時に非常に孤独に感じるし、
まわりに自分と自分のやりたいことと
社会を結んでくれる経験を
サポートしてくれる人が
誰もいないって感じる。
だから、多くの若いクリエーターが、
トマトの
ワークショップに来るんだと思うんですね。
このワークショップの一部は、
クリエイティブビジネスについての
セミナーっていうのもやるんですけれども、
そこでクリエイティブの会社を
始めるにあたっての
基礎知識やノウハウの話をするんですね。
ほとんどの人は
そういうことにまったく何の知識も持っていない。
その作品をどういうビジネスの文脈の中で、
お金にしていくかというあたりの
実践的な知識っていうのも
このワークショップの一部となっています。
クリエイティブ・センターが受け止める
一番のニーズっていうのは、
今言ったような
若いクリエイターの方が持ってるニーズです。
田中 なるほど、
クリエイティブの
ビジネススクール的な機能も
備えていらっしゃるんですね。
スティー ヴ そして、もう一つのニーズは、
地方自治体が持っている経済の活性化、
クリエイティブを利用した経済の活性化のニーズ。
いろんな地方自治体で、
一次産業が衰退して、
街の経済が不況になっているというところが
たくさんあって、
そこがどうにかして
今までとは別のやり方で
活性化したいと思っています。
例えばスペインのビルバオに建った
グッゲンハイム美術館みたいなのが
非常によい例で、
http://www.guggenheim-bilbao.es/idioma.htm
死んだに等しかった町が
あれで生き返ったわけですよね。
グッゲンハイム美術館は
ただ単なる美術館というギャラリーですけれど、
そこでクリエイティブなものが
生まれているわけではありませんけれども、
それでも都市に与えた影響は
ものすごく大きかったわけなんですよね。
で、それを見たいろんな地方自治体が
何か自分たちも
クリエイティビティというものを
うまく都市活性化に
使えないものかと思っている。
でもどうやったらいいのかが
さっぱりわからないというのが現実で。
田中 その通りですね。
うまく出来そうでも、
方法論が無いんですよね。
スティーヴ 実は札幌で2001年、2002年と
ワークショップをやっていることもあって、
札幌市の方とはもうお話をしてるんですね。
このインタークロス・
クリエイティブ・センターというのが、
そもそも札幌市の経済局が
やってるものなんですけれども。
http://www.icc-jp.com/
田中 ええ、サイトを見ました。
自治体にしては野心的な試みですよね。
スティーヴ で、プロジェクトの中心が、
文化の部署じゃなくて、
財務局だっていうところが
キモなんですけども。
田中 計画がすぐに予算化されやすいというのが、
やっぱり大事なんでしょうね。
スティーヴ ええ。
ですから商業的なコンテクストへ
直接結びつくっていうところで、
札幌市の方は
非常に興味を持ってくださっています。
田中 イギリスの場合、
クリエイティブ産業を
国として活性化しようという
国策としてやってるじゃないですか、今
で、実際のところ、うまく行ってる例って、
イギリスにあるんですか?
スティーヴ 政府がイニシアティブを取っている
プロジェクトっていうのは
いろいろあるんですけれども、
目立って成功しているものはないんですね。
政府がやることの難しさは、
減税措置をするとか免税措置をするとか
そういうことはできても、
クリエイティブ自体に刺激を与え、
活性化するってことはなかなか難しい。
で、政府がイニシアティブを取った
プロジェクトっていうのが
非常に物議を醸すものだったりすると、
とたんに選挙に影響が出てくるとか
っていうことがあって、
冒険ができないわけですよね。
こういうクリエイティブ・プロジェクトと
政府っていうのは、
そこそこ距離を置いて付き合う関係を
作らないといけないと思います。
田中 日本でも、いわゆる公共投資の発想で
道路を作るとかダムを作るみたいな計画で
やってしまうと
失敗するんだと思うんですよね。
そのあたりどのように成功を導いていくか、
スティーヴさんの考えるポイントを
聞いてみたいんですが。
スティーヴ 一つは国際性ですね。
今回のワークショップもそうなんですけれども、
3都市を結ぶってことが重要なんです。
クリエイティブ・センターも
世界中から情報がやって来て、
そして世界中に情報が出ていくイメージです。
常にクリエイターは
同世代の世界各地のクリエイターたちと
ネットワークをし、
情報をやり取りしながら
仕事をする環境をつくることです。
それともう一つは
ローカルの地元経済に
直接与えるベネフィットです。
というのは、
このクリエイティブ・センターで
出会った人たちっていうのが
2人か3人で一緒に何か仕事を始める、
事務所を始める、
建築の事務所を始める、
商品を作る、
そういう
スタートアップカンパニー(新興企業)が
センターの周りにできるわけなんですね。
それから、
いろんなイノベーションとか
クリエイティビティが
会社の繁栄にとって非常に重要となる、
たとえばソニーやキヤノン、
トヨタのような会社の
支社や出張所が周りにできて、
そこがスタートアップカンパニーと
交流しながらアイデアを吸収し、
それを製品に反映させていく。
ですから私たちは
地方自治体のベネフィットを
持って来てあげますとお話しています。
ですから、代わりに何をしてくれますか
という話になります。
土地の提供なのか、何かはわかんないですけど、
そういうギブ&テイクの関係をつくれれば
理想的です。

ですからニーズの一つは、
若いクリエイティブが
自分のクリエイティビティを
発揮できる場所を持つというニーズ。
もう一つはクリエイティビティを通じて
そのローカル経済を活性化させるというニーズ。
もう一つは企業にとって、
クリエイティビティを
その企業に反映させるというニーズ。
その3つですね。
世界中の企業の多くが自分たちの社員の
クリエイティビティを
いかに活性化する必要があるかってことに
気がつき始めていて、
例えば日産が一例ですけれども、
クリエイティビティを研ぎすますことで、
その会社の経営状態が
好転するっていう例があるわけで、
自分の会社のクリエイティビティを
いかに発展させるかってことが
重要になってきています。
くり返しになりますけれども、
その3つのニーズっていうのがあって、
その真ん中にクリエイティブ・センターがあって、
それはその3つを適当な距離に保ちながら、
その3つが
ゴッチャゴチャになってしまうのではなくて、
でも3つがそれぞれにお互いに刺激を得あって、
商業的な利益を生むための
エネルギーの通り道、
となるというイメージなのです。

<ワンポイント考察>
スティーブさんの熱い語りに
すっかり引き込まれ、
ひたすら感心にふんふんと
スティーブさんが外人であることも忘れ、
日本語でうなづいておりました。

よく企業ブランドを語る際に、
将来どういう姿に成りたいのか、という
ビジョン(目標像)、
そのために何をすべきなのか、という
ミッション(使命)、
そして、それを実現していくために
強めていくもの、という
バリュー(価値)の、
この3点セットで整理されますが、
スティーブさんが、
実にくっきりとした
将来イメージをお持ちなので、驚きました。
とくに行政を巻き込んで、
クリエイティブの経済効果を
高めようというあたり、
実に目線が高い考えだと思いました。
クリエイティブの経済性や社会性を高めるために、
クリエーター、行政、企業の
ニーズをうまく合致させる。
そのために、
クリエイティブの価値を高める、
クリテイティブセンターという拠点をつくる。

たいへん論理的にも
整理された構想だと感じました。
ただ、そこで志されているのは、
鉄鋼業や自動車産業のように、
クリエイティブは実業になれるのか?、という、
大きな挑戦です。
おそらくそれが成し遂げられた時には、
商業高校があるように、
一般の学校でも
「クリエイティブ」に特化した学校ができたり、
授業科目に「クリエイティブ」が
入ったりするんでしょうねえ。
「札幌クリエイティブ実業」なんていう高校が、
甲子園に出場する時が来たりして。
 


あと一回、トマトインタビューは続きます。

田中宏和さんへの激励や感想などは、
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2003-10-28-TUE

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