Drama

第3回 ともだちと組むことについて。



沼澤尚さんとdarlingの対談を、
ひきつづきお届けしていきます。

誰かと組んで何かをするという機会が、
ふつうのアーティストや作家よりも、
けっこう多いと言われるふたりですが・・・。

どうして、ひとと組んで、何かをしたいの?
ともだちと組んで、どうしたいの?

今回はそのようなことについて話しています。
さっそく本文に入りますので、読んでみてね。


糸井 井上陽水って、あの方、
根が王様なのに、それでいて、
売れる売れないってことを、
ちゃんと重要なこととして気にするんですよね。
売れないったって、俺らから見れば、
あの人の「売れる・売れない」の波なんか、
すごい上空のほうの話なんだけれど。
やっぱり、あれは、作り手として、
もっと言えばプロデューサーとして、
「なぜ、届かなかったんだろう」ということが、
知りたくなるんだろうなぁ。
王様じゃないぼくなんかは、
そういうこと、いつも気になってるけれど、
彼は王様だからねぇ。
いわば、美空ひばりの次元の人だから・・・・。

・・・でも、こうして喋ってると、
懐かしくなってくる人だね。妙に(笑)。
沼澤 (笑)はい。
若いミュージシャンたちが、無条件に
ものすごく尊敬しているアーティストですし。
山崎とかスガくんは、
ほんとに陽水さんを尊敬してますよ。
糸井 陽水のほうは、
「みんなはぼくを
 好きじゃないんじゃないか?」
と、思っているんじゃないか(笑)。
沼澤 さっき言った、
陽水さんと同じイベントに出た時、
スガくんが
「何で(陽水さんじゃなくて)
 自分たちがトリなのよ」と・・・。
糸井 そこを敢えて、
「トリじゃないところで
 ぼくが出るから意味がある」
みたいに陽水は考えてるんだろうね。
顔が想像できるなぁ。
沼澤 そういう感じです。
ぼくら、陽水さんが歌っている時に、
前で待っているわけです。
そしたらそれが、スガくんが、
「何で本気になるんだよ〜っ」
と言うくらいにすごくって。
糸井 陽水って、いざはじめると本気になるのよ。
ずるいくらいに本気なのよ。
あの人、時々、いまの自分が、どのくらいの
力量を持っているのかを、知りたくなるんですよね。
で、発作的に若い奴に会いたくなったりする。
奥田民生くんと大槻ケンヂくんとデーモン小暮と、
いっぺんに呼んで会ったみたいだよ、前に。
あと、みうらじゅんにちょっと会って、
「そのうちまた」なんて言っていたら
「・・・いま、近くにいるんだけどさぁ」
って陽水からの電話が入ったとか・・・。
それって、勝負師の手合わせみたいな気分が、
根っこにあるんじゃないかしらね。
伝説の手塚治虫さんのように。
新人のうちの自分の認めるやつと、
剣をまじえたい。
沼澤 「近くにいるんだよ」って(笑い)。
糸井 みうらが言ってたけど、
「あなたがディランが好きなわけでしょ?
 若いのにねえ・・・」なんて話すわけで。
ほんとは若くないんだよ、みうらは(笑)。
沼澤 山崎くんとは、今度NHKで競演するって言ってた。
糸井 若い人と組むことに、ものすごく積極的ですよ。
どっかーっと、ケモノが飛びつくみたいな、
そういう動きが、陽水はすごいよね。
沼澤 海外のアーティストは、ものすごくで、
ディランにしてもストーンズにしても
エリッククラプトンにしても、
いまものすごく売れている人と組んで
新しいアルバムを出したりするじゃないですか。
日本はそういうのほとんどないから、
陽水さんは、自分より若い人に何かを感じた時に、
積極的にものを作りに向かう姿勢としては、
日本で唯一ぐらいだと感じます。
糸井 奥田くんと陽水の組んだレコードを、
なんかひねくれたかたちで批評していた人がいて、
ぼくのほうが、代理みたいな気持になっちゃって
すっごい腹が立ったことがあるんですよ。
そんなことを言っちゃったらさあ、
もう、友達なんて世の中にひとりもいないじゃん。
沼澤 そうですよね、日本では、割と、なぜか
一発売れた人は、次からぜんぶ自分でやってて。
アニタ・ベイカーが誰かと組んで、だとか
ホイットニー・ヒューストンが誰かと、だとか、
そういうのが、日本の土壌にはまったくないのに、
なのに陽水さんはやるんですよ。
糸井 あと、実はその対極みたいだけど、
永ちゃんもそうなんです。
有名になる寸前の人が、永ちゃんのバンドで
ギターを弾いていたりするんですよ。
沼澤 陽水さんと糸井さん、同い年くらいですよね?
糸井 うん。同い年ですね。
同い年のぼくらの、あえて似てるところは、
人と組むのが好きなところですよね。
それをやっかむ奴らは、
「利用してうまいことやってる」
とか言うんだなぁ。ったく。
別に組んで得をしたいわけでもないし、
得をするわけでもない。
それよりも、ただ単純に、ぼくは、
自分に持っていないものを持っている人を見ると、
嫉妬するんですよ。
人間にというよりは、そのナニカに嫉妬するの。
奴にあって、ぼくにないものは何だろう?
それを知りたくて組むというか・・・。
それが、マゾで気持がいいんだ、また。
沼澤 ぼくもすごくそうです。
なんでこんなに若いのにこんなに表現できるの?
それは、もちろん音楽だったら
一緒に何かやんない?ってことになるし・・・。
糸井 もてるやつが、
女の子いたら声かけたくなるのとおなじで、
ぼくたちが人と組む時も、
「ふたりでいたら何ができるのかなあ?」
というところで、やっぱり、仕事を通しての
共通の子どもをつくりたくなるんですよね?

その子どもが不良化しようが、どうでもいいし、
種はあるんだから、あとで育てようと思うし、
また今度何かやろうよっていうのもあると思うし。

ぼくは、そこのところは、
誰とどう組もうと、自分が本当に思ったことを
やっている限りは大丈夫だと感じているんですよ。
沼澤 ある程度、自分に自信があればいいですよね。
自分のやることに意味があるわけだから、
「こういうことが、ぼくのやることで、
 だからぼくは、君と組んで何かをするんです」
ということをアピールしないといけないわけで、
人と組むことによって、
より自分の持っているものを
明確に出さないといけなくなりますよね。
そういう意味では、相手が乗ってくるくらいに、
「いいよねえ、それ!」と思われるものを
出していかないと、要らないと思われるから。
糸井 そう、その過程では、テクニックも出すし。
組みかたとしては、5分の2だけ組むやり方も、
自分が6を出して相手が4というやり方も
いろいろあるし、その時の呼吸ですよね。
沼澤 人によりますよね、ほんと。
その人が、自分とどういう関わりを
持ちたいか、持たせてくれるか、
主導権は、どこで誰がとるのか・・・。
糸井 そこでの変化によってやることが変わって、
そういうのって、楽しいよね〜っ。

ビジネスの世界って、みんな、
お金を介してそういうことをやってるんだよね。
でも、沼澤さんやぼくのように、
ビジネスを介さないでそういうことばっかりやると
人からは、珍しく見えちゃうんでしょう。

やっぱり、陽水は、珍しいもん。
あの人は、何になるかはわからないけれども
人に会って、新しい血を入れますよね。
沼澤 ぼくの場合、自分のために
人と組むというのは、大前提です。
自分が楽しいとか、何かを吸収できるというか、
山崎くんにしても民生くんにしても
ものすごく魅力を感じるから組んでるし。

そうしたら、その中で、普段はできないことを
できたりだとか、結果的にみると、自分が更に
どこかにいけるためのきっかけになってますね。
糸井 そういうのが、好きでやってるんだもん。
組むってことについて、
あれこれと言いたがる風潮ってのは、
なんなんだろうなぁ。
ぼくの組むっていうのは、
まったくの素人とだって組むし、
絶頂期のアイドルとだって、老人とだって、
めちゃくちゃに組みまくるもん。
沼澤 たぶん、そのへんを批評したがるのは、
そうでもしないと、批評家たちは、
自分が仕事しているとは思えないから、
という場合も、あるんでしょうね。


(明日に、つづきます)

2000-12-06-WED
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