ITOI

頭出し:電波少年的放送局の62時間。
いくつになっても、馬鹿は馬鹿。

臨時更新で、その時その時の会話をお届け!

[格闘家座談会]
<第3回 格闘技は
     「いかに自分を客観的に見られるか」>



糸井 高阪くんと話をしてると、
格闘技全体のことが
ものすごくクリアに見えるよね。
つっぱらずに話すじゃない?
「そのまんま」で話してくれますから。
似てるのは、宇野薫選手ですよね。
高阪 そうですね。
糸井 アメリカで11秒ぐらいで
彼が負けた試合があったんですけど、
ちょっと格闘技を知った人たちどうしは、
「あれは、宇野さんの調子がよすぎて・・・」
みたいな言い方をしていたんですよ。
本人に、そうですってねぇ、って言ったら、
「いや、相手が強かったんですよ」。
その言い方がものすごいストレートで、
謙遜じゃなくて、相手が強かったということを
その時のレベルを知って、
ちゃんとモノサシをあてている。
その様子がかっこよかったなぁ。
高阪 うん。
栗山 なかなか言えないですよね。
糸井 言えないですよ。
格闘をやっていると、
一本倒れちゃうとそのあとに
返すまでが、すごい長いじゃないですか。
野球の選手だと、次の日に返せるけど。
栗山 ええ。次の打席で返せたり。
あぁ・・・ほんとにそうですね。
森川 高阪くん的には、
このあいだの高阪くんの試合は、
どうだったんですか?
高阪 あれは・・・相手が重かったんですよ。
昔だったら、重くて動けないのが
当たり前だったんですけど、
最近は、重くて動けるのが当たり前なんで。
だから・・・自分も重くなります、
っていうのが今後への結論ですね(笑)。
糸井 一試合の中に、ここだ、って言って
攻撃するところは、二回ぐらいなんだよね?
高阪 だいたい二回ですね。
栗山 そうなんすか。そんなに少ないんですか。
高阪 明らかに勝負どころだな、ってわかるのは、
五分の試合ならだいたい二回。
まぁ、偶然的に入っちゃって
気がついたら勝っちゃうという時もあるんですけど、
それは相手がミスったりしているので、
自分の中では、勝ちには入らない。
だから、やはり二回ですね。多くて三回。
糸井 栗山さん、こういう話おもしろいでしょ?
栗山 ええ!
糸井 その二回は、向こうもわかってるんだよね?
高阪 ええ。
糸井 高阪くんは、早さでいっていたんですよね。
でも、今回帰ってきたら
「重くならなきゃ」って・・・(笑)。
高阪 だって、やることやることすべてに
重さとスピードと技術を乗せて
かわされてきたら、そりゃあ、
自分がそうなるしかないっていう。
糸井 (笑)
森川 いまは・・・110キロぐらいを目指すの?
高阪 いや、110行ったら、
自分の場合は、重すぎて動けなくなりますね。
ある程度スピードを保ちながら
最大限に重くするというと、自分は
106キロぐらいかと思っています。
栗山 いまでも100キロ超えていて
スピードを保つの大変だよね。
高阪 今はだいぶできるようになってきたんです。
昔ならぎりぎりだったんですが、
いまは102キロでも足が浮く、
という感触なんですよね。
ケビン(山崎)さんのトレーニングの
おかげだと思うんですけど。

アップしている時なんか、
何やっても息があがらないし。
試合中動いていても、意識して
動いているより先にカラダが行くというか。
栗山 あぁ、なるほど。
高阪 ただ、重くてつぶされちゃう。
向こうも技術がある・・・
だったら、体重を増やして、
今のスピードを保ちたい。
ぎりぎりのラインで勝負しよう、と
思うようになってきたんですけど。
栗山 そうですよね。
動けるんだったら、
重いほうがいいわけですからねー。
しっかし・・・すごいなぁ。
だんだんレベルがあがるんですね。
高阪 ええ。昔は格闘技っていったって
手探りの状態で、これがいいんじゃないか、
といったら返されて、それ以外だったら、
というような理詰めだったはずなんですよ。
情報があまりなかったんです。
でも、今は、そうして試行錯誤の結果、
「こう返すならこうだから、
 入る角度とかを変えながら」
とわかったことは
ぜんぶマニュアル化されていますから。
栗山 あぁ、なるほど。おもしろいなぁ!
高阪 だから、才能があれば、
一回でマニュアルをおさえて、
いままでのスポーツの遺産の厚みに
自分のオリジナルの動きをたしていく、
そういう感じになっていますね。
栗山 そうかー。
森川 野球選手は、体重を
コントロールしたりするんですか?
栗山 自分のベスト体重を探していくわけですけど、
これもさっきお聞きした内容と似てますね。
自分ではこのぐらいだと思っていても
違っていたりするという・・・。

桑田が、入団したあとに
十何キロプラスして、85キロぐらいまで
持っていったんですよ。
毎年3キロぐらい足していって。
たぶんいまは78キロぐらいだと思うんですが、
「やってみなきゃわからない」
というのは、桑田の言うとおりで。

もっと前のぼくらのころは、
このくらい、というイメージのままで、
それ以上超えると罰金とかでしたからねぇ。
キャンプインで一キロにつき一万円とか。
それがベスト体重なのかどうかはわからない。

確かに、同じように、
体重があってスピードがあるとすれば、
おなじスピードなら、体重があるほうが
ボールは遠くに飛ぶところは、ありますね。
森川 自分というクルマを
メンテナンスしてるみたいで、
おもしろいですね。
高阪 ええ。
いかに客観的に自分を見れるか、
でしょうね。
それができないと、はっきり言って、
試合でも勝負にならないですから。

試合をしているんだけど、
頭はちょっと離れたところにいて、
自分で自分のセコンドをするるみたいな
状態にならないと、ぜんぶの動作が
いちいち、遅れてしまうんですよ。

人に言われてやることって、やっぱり、
必ず、遅れちゃうじゃないですか。
栗山 そうだよなぁ。


(※つづく)

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2002-05-28-TUE
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