身近な医者の底力シリーズ かかりつけ医だから できること。

本田 さきほども患者さんからの
お電話を受けておられましたけど、
診療時間外の相談というのも、
多く受けられるんですか?
松村 電話は携帯に転送されるようになってるので、
出ますよ。
移動中や電話をとれないときももちろんありますけど、
メッセージを残してもらったら折り返しますし、
患者さんには、心配ならお電話くださいと
言ってあります。
本田 じゃあ、夜間でも?
松村 夜間については
ぼくはアバウトな24時間で、
自分が疲れたときはごめんなさい、なんです。
でも、患者さんはわかってくれますよ。
本田 いずれにしても緊急のときには、
緊急で行くべきところを紹介したり。
松村 そうです、紹介します。
ただ、だいたいは電話で済むことが
ほとんどですけれどね。
ほぼ日 ちなみに患者さんひとり当たりの
診察時間は何分ぐらいですか?
松村 単純計算だと、ひとり3分くらいかなあ。
でも、お母さんと、お父さんと、子供のように、
家族3人をいっぺんにみたりしますしね。
ほぼ日 家族をまとめて。
松村 お母さんとお父さんと子どもがいて、
同じ風邪をひいていたら、
別の薬を出すのは逆におかしいと思いません?
だから単純計算では成り立たないんですけど、
長くなる人と短くなる人がいて、
それを平均するとだいたい3分ぐらいになるのかな。
ほぼ日 カルテのこともそうですが、
家族単位で診てもらえるというのは、
きっと、かかりつけのお医者さんならでは、ですよね。
本田 そうですね。
ご家族がどんな病気にかかったかもあわせて
把握してくれている先生がいるということは
ご自分の健康を守るのに
とても役に立ってくれると思いますよ。
ほぼ日 健康手帳にも自分と家族の病歴を
まとめておくページがありますが、
病気って、遺伝が関係するものが
多いんでしょうか。
松村 そういうものもあります。
たとえば、お父さんが40歳ぐらいで
胃がんになったという人が、
胃が痛いって言ったら、
胃がんの可能性は、やっぱり頭に浮かべます。
本田 考えますね。
大腸がんのご家族がいるかたが、
お腹が痛いといえば、念のため
きょうは便の検査をしてもらおうかな、とか。
松村 一般的に、この年代の人は
これとこれの検診を受けたほうがいい、
というものはあるんですよ。
それは、みんながやったほうがいいんです。
でも、たとえば
お母さんが乳がんで亡くなったということであれば、
その人にはより強く乳がん検診を勧めますね。
本田 そのかたにも乳がんの素因が
あるかもしれないということでね。
松村 一昨年に受けたけど、去年は検診を受けてない、
ということだったら、
「今年は絶対やりなさい」って
すすめるほうも力が変わってきます。
ほぼ日 家族がかかった病気って、
そこまで重要なものなんですね。
本田 そう。家族の病歴を医者に伝えるということも、
自分の健康を守るために、とても役に立つんです。
松村 こんなこと関係ないかも知れないけど、
って思ったとして、
ほんとうに関係ないこともあるんですよ。
関係ないかもしれないんだけど、
でもとりあえずね、聞きますよ。
それから、職業歴っていうのも大事。
ほぼ日 そういう、今の症状だけじゃなくて、
昔の職業、何をやっていた人かとか、
そういうことまで含めて知ることで、
何かプラスになることがあるんですか?
松村 あります。診断がつきやすくなる。
ほぼ日 診断がつきやすくなる。それはすごい。
松村 会社でどういう仕事をしてるかとか。
あと、居住地とか、出身地とかも
大事なことがあります。
本田 そうですね、
環境が原因となる可能性のある病気もあるし。
松村 子どものころから同じ場所に住んでいて、
ずっと同じお医者さんにかかっている人は、
お医者さんのほうでそういうこともわかってるけど、
でも、はじめて行った病院で、
そこまでよく知り合うのには、
時間がかかるじゃないですか。

そういうときに、健康手帳みたいな
自分の健康のことをまとめたものがあると
すごくいいと思いますよ。
少なくともお医者さんにとって、
重要な情報は、まとまってます。
綿貫 ここ、いいぺージですよね。



救急外来で患者さんを診ていて、
こういうことがまとまっていてくれると
すごく助かるんだけどなーってことが
全部書いてあります。
ほぼ日 こういうものをお医者さんに見せるのは、
気が引けるという声もあって、
それが「近さがない」ということなのかなとも
思うんですが‥‥
松村 「おくすり手帳」は、
もうぜんぜん抵抗なく出しますよ、みなさん。
でも「おくすり手帳」だけだと、
昔にかかった病気や手術歴までは
わからないんですよね。

このあいだも、新しい患者さんで
おなかにこんなに傷があるのに、
胃は取ってないっていう人がいて、
「いや、取ったでしょう」
「ああ、そういえば取ったわ、思い出したわ」って、
胃を取ったことすら忘れちゃうことがあるんですよ。

だから、書いておくことは必要ですよね。
あと、アレルギーもね、大事です。

(つづきます)



2010-04-11-SUN