日野原重明先生に聞いた 健康についての大切な話。
日野原重明先生をご紹介するのに 多くのことばはいらないでしょう。 でも、ひとつだけ。 日野原先生は、もうずっとずっとずっと以前から 「自分の健康は、自分で守るという意識をもつことが大切」 と説いてこられたかたなんです。 そんな日野原先生は、 「ほぼ日の健康手帳」をつくるにあたって、 おしみないご協力と たくさんの具体的な助言をくださいました。 現役医師としての70年におよぶ経験に裏づけられた 貴重なお話を、 本田美和子さんを聞き手にお届けします。
日野原重明先生のプロフィール

日野原重明先生に聞いた健康についての大切な話。
自分を守るために。 2008-12-16
遠慮しないでください。 2008-12-17
日野原先生の健康の秘訣。 2008-12-18
本田 日野原先生には3年ほど前から
先生が主宰していらっしゃる勉強会に
お招きいただき、とても感謝しています。
それがご縁で先生にご相談申しあげていた
「ほぼ日の健康手帳」が
このような形にできあがりました。
日野原 ほぅ、これは小さくていいね。
女性のハンドバックにも入れられるし、
手帳にはさんでおいてもいいね。
本田 はい。使っていただくかたがたに
気軽に持ち歩いていただきたいと思って
できるだけ小さくしました。

きょうは、できあがりましたことのご報告と、
もうひとつ、
先日お目にかかったときに教えてくださった、
自分の健康状態をまとめておくことの大切さについて
あらためてお話をお聞きして、
「ほぼ日」読者のみなさんに、
お伝えできればと思ってうかがいました。
どうぞ、よろしくお願いします。
日野原 自分の健康状態をまとめておくということは、
つまり、自分の健康を自分で守る
ということなんですよ。
もう30年くらいになるかな、
「自分の健康は、自分で守る」という意識を
一人ひとりがもつことが何より大切だということを
ぼくは、ずっと言ってきたんです。
これは、ぼくが設立した
「ライフ・プランニング・センター」の
ひとつの思想でもあってね。

そのために、まず、自分の健康についての情報を、
医師に正確に伝えることが大事なんです。
患者さん自身が
「自分から提供する」という意識をもつ。
これは、自分のカルテ(診療録)のようにして、
自分の健康状態をまとめておく手帳でしょう。
健康の記録なんだけど、病気のことも、
書いておくということだね。
本田 先生の患者さんのなかには、
すでにご自分でカルテを書いているかたも
いらっしゃいますね。
先日、参考にと見せていただいたものは
とてもしっかりしたカルテでした。
日野原 そう、お医者さん以上によくできているよ。
ほんとに、びっくりするぐらい。
病院では、患者さんが入院するときに、
病歴をとるでしょう。
ある患者さんに、そのときの参考になるようなものを
自分で書いて持っていきなさいと言ったんです。
そうしたら、医師やナースが書くものよりも、
よっぽど立派なものを書いてきてね。
これまでの病歴にしろ、いまの症状にしろ、
経験している本人が、
だれよりもじょうずに書けるんだね。
医師が「いつから痛みました?」とか聞いて書くのと、
本人が自分で書くのとは違うんですよ。
それを見たときにぼくは
あぁ、医療に素人のひとでも、訓練すれば、
こんなに立派なものができるんだとわかったんです。

医療は、システムを発展させるよりも、
人間、ひとりひとりを発展させる、
そのほうがはるかに効果的だという考えを
ぼくは以前からもっていたんです。

自分のカルテの書き方にしても、
医師やナースが教えるのではなく、
それができる一般の人が
書き方の先輩として教えるほうが、
ずっと説得力があるんですよ。
ほぼ日 わたしたちが自分のカルテを書くときに、
書くコツといいますか、気にしておいたらいい
ポイントのようなことはありますか?
日野原 そうだね。できるだけ具体的に、
自分のことばで書くことです。
たとえば、医師がカルテを書くときには、
「胃に違和感を訴える」と書いたりするんですよ。
本田 そうですね、よくあります。
日野原 「胃に違和感」と書いてあったって、
胃が変だということがわかるだけで、
いったいどんな症状なのかわからないでしょう。
もっと具体的に、自分のことばで言うと
どういう表現になるのか。自分で考えて、
そのままのことばで書けばいいんです。

それから、「ムカついた」と
書けばいいようなことも病院のカルテには、
「悪心(おしん)をもよおした」と書く。
本田 カルテに書くときの、医学用語なんですよね。
日野原 「悪い心」なんて、
どうしてそんな字を使うのだろうか。
「つわり」なんかでも、漢字で書くと難しい字ですよ。
「悪阻」と書いてあっても、ふつうは読めない。
医療の現場でも、ほんとはもっと、
生きたことばを使うべきなんです。
最近ようやく、医学用語も、日本語として
もっとわかりやすいことばにしようという
運動がおきてきているけどね。

だから、この手帳を使う人は、
自分のそのままのことばで書くのがいちばんだね。
患者さんが自分の健康のことをまとめていれば
医師にとっても役に立ちますよ。
本田 そうなんです。
病院にはじめていらっしゃったかたのお話から、
健康に関する情報を拾い出すのは
難しいときも多くて、時間もかかりますし、
うまく引き出すことができないこともあるんです。
そういうときに
ご自分のカルテをお持ちになっていると、
すごくわかりやすくて、
問題に早くたどりつけるようになると思います。
日野原 たとえ3分診療だったとしても、
これがあれば、その同じ3分が、
充実した時間になるわけだからね。
本田 ほんとに、そう思います。
日野原 この手帳、できるだけたくさんの人が
持つようになるといいよね。
ほんとはスーパーのレジの横とか
駅のキオスクとかに置くと
パッと手に取れていいんだろうけどね。
一同
(笑)

(明日につづきます)



2008-12-16-TUE