ITOI
ダーリンコラム

<わしは無能じゃぁあああ(エコー付き)>

今回は、なんのタメにもならないこと保証つきです。

たまに、イトイさんはマルチなご活躍でとか言われて、
そんなことないですよーと、
無意味な合いの手を入れたりしているのですが、
ほんとにひどいものなんです。
器用でもなければ、上手でもないし、運もよくないのよ。

なんというか、ごっそり抜け落ちているんです。
人間に普通に備わっている能力というか、
普通の人間には備わっていなければいけない能力とかが。

そのうちの大きなひとつは、「記憶力」なのですが、
これは、また話すと長くなりそうなので、
もうひとつの別の大物について告白しましょう。

「事務処理能力」とでも言えばいいのでしょうか?
規則とかルールとかを理解してそれを使いこなす能力が、
劣っている・・・というより、ない。
いや、「ない」っていうのはあんまりだね。
ないも同然なのであります。

お役所関係の手続きとかが、いちばん頭痛いですね。
なにがなんだか、どうすればいいのだか、
怒られるんじゃないかとか、
何か大事なものを忘れてるんじゃないかとか、
いつでも戦々恐々としているのです。

こんなことを書こうと思ったのは、
自分でもあきれるようなことがあったからです。

個人的な用事で、
印鑑証明と、印鑑とを用意することと、
お金の振り込みをすることが必要になった。
もう、それだけで緊張感が走るのよ。

まず、印鑑証明には印鑑カードというものが必要だ。
そのことは知っていた。
探した。
ない。
この時点で、もう失格です。
そういうことの社内人事が変わっていたせいもあるけれど、
「ない」ってのはねぇ。
気を取りなおして、印鑑カードをつくるところから
スタートしなくてはいけない。
代理人が申し込むと一週間くらいかかるらしいが、
本人が区役所に行けば、すぐにできると
パンフレットに記されていた。
しかし、それを読んだのは金曜日の夜。
印鑑証明が必要なのは、月曜日なのだ。

土曜日に早起きして区役所に電話してみる。
区役所みたいなところが、どういう曜日のどういう時間帯で
営業(って言わないか?)しているのか、
インターネットで調べてみてもわからないので、
原始的に、朝の眠りを犠牲にして直接電話してみたのだ。
・・・土曜は、お休みだったのねん。

では、お金の振り込みをするぞ、と、
パジャマを脱いでジーンズはいて、お出かけじゃ。
キャッシュカードというものをカミさんから渡されていた。
彼女のほうは早朝から鎌倉に撮影だということで、
ぼくが銀行に行くことになっている。

待ち合わせ場所になっているF銀行前には、
人だかりがしている。
なかには銀行に用事がなくても銀行の建物を木陰がわりに
している人々もいる。
「へいへい、ちょいとごめんなはいよ」
まず、現金をおろす。うまくいった。
これは前にも何度かやったことがあるからな。
本当は振り込みがしたいのだけれど、
その宛先と金額が、わからない。
自宅にファックスで知らせてくるということだから、
それを待つしかない。
近くでカフェラテを買って、また家に戻る。

家から連絡をとってファックスを催促する。
金額と振込先が判明した。
よし、善は急げだ。すぐにまた出かける。
現金をパン屋の紙袋に入れて、
ひったくりに襲われないようにするところが偉いオレさ。

再び、キャッシュディスペンサーの前に、
決意も新たに、「振り込み」のボタンを押す。

しかし、目の前の注意書きが目に入った。
「現金の振り込みはできません」・・・あ、そっか。
ひったくり用心のパン屋の紙袋に入った現金を持って、
再び家に帰る。
だったら、現金をおろしておく必要はなかったのだ。

一休みしようかとも思ったが、善は急げだ。
またまたキャッシュカードを持って、銀行へ。

機械の前に立ち、こんどこそは意気盛んなれど、
一抹の不安もある。
画面にあらわれる指示どおりに、相手先の銀行名とか、
口座とか番号とかをスイスイ選択していく。
うまくいった。簡単じゃないか、意外と。
で、「あなたの情報」ってやつを訊かれる番になった。
名前とか、住所とか、まちがいなく入力する。
電話番号・・・これもスマートに入力する・・・が、
まちがっていると機械が言うのだ。

ああああ、そうだ。
このキャッシュカードをつくった時点では、
いまのと違う電話番号を持っていたんだった。
それは、何番だったか??
またまた、ぼくは機械の前で立ちつくす。
これ、ビデオカメラにおさめられているんだろうなぁ、
とか、余計なことまで考えながら、
記憶のいれものを撹拌して、出てきた番号を入力するが、
どれもハズレであった。

「取り消し」のボタンを押して、
またまた帰宅する。

結局、この日は、なんにもできなかったのだ。
事務能力がどうのこうのというレベルじゃなかったね。
こんなお使いもできないんだから。

わしは無能じゃああああああっ。
この無能の分を穴埋めしようとして、
いろんなことを必死になってやっているのかもしれないな。

とにかく、月曜日に区役所と銀行の窓口が開くまで、
結局、なんにもできないのでした。
まーた、早起きしなくちゃいけないんだよなぁ、月曜に。

ったく、もう おんおんおん!(強いエコー付きで)

2000-08-07-MON

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