ITOI
ダーリンコラム

<ほんの2%の笑顔を試すこと>

「明るくやろうぜ」とかね、
「いつも笑顔で!」とかさ、
「ポジティブシンキングでいこう」とか、
どうも、おれには無理だなぁと思っていたんだよね。

明るさとか、笑顔とかって、
感情の反映だと思うから、
そのときどきの感情に添った表情を抑え込むと、
きっと副作用がくると思うんだよ。

「悲しいときこそ、笑うんだ」という助言も、
悪くないよ。
映画なんかで、そういう場面があったら、
じーんとくるんじゃないかな。
でも、これは「こそ」ってのがカギでさ、
いざという場面で、ぐっと力を入れるってことだよね。

明るくしよう、笑顔でいようというようなことが、
仕事になっちゃったり、義務になっちゃったら、
こころとからだの間に、ねじれがくると思うんだ。

「感情と、表情とをシンクロさせない」って、
つまりは「ポーカーフェイス」とか、
「ブラフ」ってやつだよね。
こういうの、勝負事なんかでは大事なんだろうけど、
いわば「クスリ」を使う感じだ。
しょっちゅうやっちゃぁ、副作用がくる。

「営業笑い」みたいなことを続けていたら、
それなりのストレスがかかりつづけるから、
ほんとうに自分のいいところを、
のびのびと発揮するのには、じゃまになるかもしれない。

あと、無理って、人に見破られるからねぇ‥‥。

というわけで、ぼくは、できるだけ
自然にしているのがいちばんいいと思っていたんだけど、
「自然」というのが、「単なる不機嫌」のあたりで、
安定しちゃいそうだと気づいたのだった。
無理に笑ってるというのも、副作用があるけれど、
わざわざ「単なる不機嫌」で安定させちゃうというのも、
おもしろくなさすぎるなぁと、思ったわけ。

だいたい、ぼく自身が、
微笑みのある人に会ったらうれしがるんだしね。
笑顔のいい人って、まわりにいい雰囲気をプレゼントする。
どんなに真剣な場面でも、
がちがちになっている人ばかりでなく、
落ち着いておだやかな表情をしてる人が混じっていると、
みんなが安心して力を発揮できるだろ。
無理じゃない笑顔なら、最高じゃないか。
そう思ったんだよ、
青山通りの「こどもの城」あたりを歩いてるときに。

そうだ、ストレスにならない程度に
表情をコントロールすればいいんだ。
笑顔と言ったからって、
はっきりと笑顔に見える必要はない。
不機嫌だったり、ぎすぎすしてなければいいんだ。
わざとというには少なすぎるくらいの笑顔って、
どれくらいだろうと、円グラフをイメージしたんだよね。

で、でたよ。結論。
5%でも、3%でも、意識しちゃうと思ったんだ。
だったら、2%でどうだ?
まず、暫定的に2%に決めちゃおう。
というわけで、歩きながらね2%笑ってみたわけさ。
誰にもわからないと思うよ、2%笑ってみてもね。
だけど、「不機嫌そうじゃない」っていうサインは、
出ていると思うんだよね。

これで、歩き出したら、ものすごく快調なんだ。
おそらく、意識してないと忘れちゃって、
また「自然に不機嫌」という状態に
戻っちゃうかもしれないんだけれど、
その都度、思いだしてみるつもりなんだよね。
ひとりでいるときも、ミーティングのときも、
買い物に出かけたときも、散歩のときも、
なにかにつけて、いまは、2%の笑顔を投入してるよ。

この先、どうなるかはわからないんだけれど、
しばらく続けてみるよ。
無理な明るさは苦手だっていう人で、
しかも「自然に不機嫌」という状態に
飽きかけている場合は、この2%の笑顔は、
誰にも気づかれずにできるし、
遠回りだけれど、みんなの幸福につながるぜ。

まぁ、他人にすすめるほど自分ができてないわけだから、
この先、しばらく自分が意識してみて、
快調に続けられるようだったら、また、言うことにするよ。

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2007-09-24-MON
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