ITOI
ダーリンコラム

<2005年はおもしろかったなぁ>

2005年、最後の『ダーリンコラム』です。
今年も、ほんとうにおもしろかった。
いま、リアルタイムで言うと、12月26日の午前4時過ぎ。
『続・はじめての落語』というイベントの興奮が、
まだ冷めやらぬままに、Macに向かっています。
思うままに、とにかく書きだします。

今年も、ほんとうにおもしろかった、と言います。
ほんとうにおもしろかったから。
しかし、じゃぁ、それだけだったかと言えば、
そんなはず、無いに決まってるではないですか。
「ろくでもないことも、もちろんあったけれど、
今年も、ほんとうにおもしろかった。」のです。

嘆いて、怒って、後悔して、
悲しんでいても、一年ですが。
同じ状況にあっても、
ちがった感じ方で一年を過ごすことは
できるはずだと思うのです。
先日、昔の連載『ガンジーさん』を、
蔵から出してきて、紹介しました。
「ガンのじいさん」だから、ガンジーさん。
思えばふざけたタイトルでした。
しかも、臨終のあいさつが、

◆ひとまず中締めだぜ、「あばよ!」
‥‥でしたからねぇ。

痛みのこと、後悔について、うらみたいこと、
たくさんあったに決まっているのですが、
死の直前まで、
できるだけ笑わせようとしていました。
同じ状況にあって、つらい悲しいばかりを言い募って、
同じ時間だけの余命を生きるようなことだって、
あり得たとも思います。
でも、ガンジーさんは、そうしなかった。

目の前の一日一日が、
悲しんだり怒ったりしているばかりでは、
もったいなくてしょうがないから、
だったと、ぼくは想像しています。

もったいないんです。
暗さを数えながら一日を過ごすことが。
うらみながらの24時間というのも、もったいない。
だから、ぼくも、ガンジーさんみたいに言うのです。
今年も、ほんとうにおもしろかった、と。
やせがまんでもなんでも、かまいやしない。
笑っている人のところに、おもしろいことは集まります。
少なくとも、ぼくはそう信じています。

闇の暗さの価値を、認めているからこそ、
明るさの側に身を置いて、
闇を見つめたいのかもしれない。

ろくでもないことは、毎日、毎年、
あるに決まっている。
だけど、そいつをじっと見るために、
自分の目玉があるというのは、もったいない。
ろくでもないことを語るために、
ぼくらは口を持っていると思うのは、おもしろくない。

あなたの2005年は、いかがでしたか。
ろくでもないことも、いっぱいあったでしょう。
それは、認める。いっしょに首肯いてあげましょう。
だけど、ほんとうにおもしろかったよねぇ。
2005年は、ほんとうにおもしろかった。

ちょっとくたびれたけどね。

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2005-12-26-MON

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