ITOI
ダーリンコラム

<目を閉じて見える美しい景色>

瞑想だとか、気分転換だとか、したいときに、
「とてもよく晴れた草原をイメージします」とかって、
よく、いうじゃなーい?
「とても空気が澄んでいます。深呼吸してみましょう」と、
いうじゃなーい?

落ち込んだときでも、落ち着きたいときでも、
こういうような「気持ちのいいイメージ」を
思い浮かべて、
その場でくつろいでいる自分を想像すると、
いいわけですよ、ね?

それはまったくそうだと思う。
きっといいだろうと思う。
しかし、今日まで、ぼくはそうしてこなかった。

なぜか?

よく晴れた草原だとか、澄み渡る青空だとかが、
ほんとに自分のお気に入りのイメージかどうか、
ちゃんと考えたことがなかったのだ。
そういう景色のなかに自分を置けば、
きっと気持ちがらくになって、寛げる、
そういう場所のイメージが、
ぼくのなかで、まだ決まってなかったのだった。

あなたはどうですか?
これこそが、自分の憧れの景色だというイメージ、
ありますか?

別に、ね、草原に限らないと思うのだ。
湖だって、雲の上だって、珊瑚礁だって、
なんだっていいのだ、きっと。
自分が落ち着けさえすれば、
岩山のてっぺんだっていいはずだ。
「そこに自分がいることをイメージしてみる」
そうすると、気持ちがおだやかになって、
嫌なことをすっかり忘れてしまうような場所。

いままで、そういう場所について、
ちゃんとまじめに考えてきてなかったから、
ぼくは、いつまでたっても
ナイスな瞑想ができないのではなかろうか?

いまからでも遅くはないと思う。
自分用のオリジナルないい景色を、創作しなきゃ。
いままでの経験とか、資料とか、妄想とかを総動員して、
「最高の景色」をひとつ用意しておくほうがいいと思う。

それさえあれば、さみしいとき、その場に遊べる。
そのイメージさえ準備できていれば、
きっと慌てふためくようなことがあっても、
「待て、オレよ。落ち着け、ま、ここに座れ」と、
そのいちばん好きな景色のなかに入り込めるわけだ。
これはいいよなぁ。

そういう景色を今年は、一年かけてもいいから探そう。
映画のなかに見つけてもいいわけだし、
写真集とかも、そういう目で見てみよう。
テレビなんかでも、いい景色があったら、
「それ、もらおう」というふうに、
自分の景色を創作するための材料として収集しよう。

ぼくは、これまで、
「なにかいいこと」や「なにかいいもの」について、
ずっと考え続けてきたつもりだったのだけれど、
それは、たいてい「みんな用」だったような気がする。
「みんな」に理解されなくても、
「自分用」のものを、しっかり持っているほうがいい。

これさえあればゴキゲンになれる食べ物。
うっとりしちゃうような理想の女性像、
何を捨てても求めたい時間や遊び、
そういうものが、ぼくにはまったくなかった。
なかったということで、きっとよいこともあったとは思う。
けれど、価値の中心軸がない人生とも言えそうではないか。

見つからなくてもいいから、
そういう「自分用」の
「なにかいいもの」や、「なにかいいこと」を
探してみようと思いついてしまった。

まずは、「晴れ渡った青空と緑の草原」でない、
自分を最高によろこばせてくれる景色を、
ひとつ想像できるようにしてみよう。

あ、なんでこんなことを思いついてしまったか、
というとですね、
「瞑想」という習慣を持ちたくなったのですよ。
しかし、「瞑想」をする入口というのが、
おそらく自分を解き放つ「場所のイメージ」だと思った。
そしたら、そんなイメージ、持ち合わせてないぞと、
気がついてしまったというわけです。
キレイとは言えない景色とか、
欲しくもないものとか、うまくもない食いものについては、
いくらでも思いつくものなのにねぇ。
情けないなぁ、自分。

目を閉じると見える、美しい景色って、
あなたは持っていますか?


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2005-01-24-MON

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