ITOI
ダーリンコラム

<買わない人を増やすような表示>

タバコのパッケージには、
これを吸うと身体によくないよ、というな内容の
いわゆるデメリット表示がある。

昔のお見合いなどでは、儀礼的な表現かもしれないが、
「ふつつかな娘でございますが」というな挨拶がある。

いま、相談している最中なのだけれど、
「ほぼ日ストア」でも、
さまざまな商品を買ってもらう寸前のところに、
「あなたが買わないほうがいい理由」みたいなことを、
表示しようとしているところだ。

何かモノをつくった場合、
それがいいものであるということで販売をする。

「黙っていてもそのよさはわかる」という考え方もあるが、
黙っていたら、せっかくのよさが発見されないままに
なってしまう可能性もある。
つまり「よいところ」を買ったはずなのに、
それが発揮されないことにもなりかねないので、
よいところについては、黙っていないほうが、
使う人のためでもあるし、つくった人のためにもなる。

しかし、それだけではやっぱり足りないような気がする。
送り手と受け手の関係を、
いちど、冷やしたほうが、
より深く付きあえるように思ったのだ。
そりゃあ、ま、知りあったばかりの恋人に、
「わたしのおならはくさいですよ」などと、
わざわざ先に教えておく必要はないと思う。
だが、ひょっとしたら、結婚届を出す寸前に、
「あなた、わたしがおならをするかもしれないことを、
 忘れてはいませんよね?」と、
ちょっとしらけるようなことを、言っておいたほうが
その後の付きあいが親密になるように思うのだ。
それを聞いて、「え、おならするとは思わなかった!」と、
破談になっても仕方がない。
あとで、そのことが大問題になるよりは、
そういう場合は別れておいたほうがお互いのためにいい。

もちろん、ありとあらゆるデメリットを、
考えられる限りすべて書き出して伝えるなどということは、
不可能ではある。
「赤い色を好きになろうと思って買ったのですが、
 やっぱりどうしても赤を好きになれなかったので
 返品したいと思います」というようなケースで、
「あなたの選んだ色は、
 気に入らなくなる可能性があります」
などと表示するわけにもいかないだろう。
しかし、商品の赤い色が、それを見ているコンピュータの
ディスプレイによって、少しずつちがって見えることや、
写真撮影の状況によって、変化してしまうことについては、
お互いに知っていたほうがいいだろう。

わざわざそういったことを書き出すのも、
買う人がいちいち読むのも、
ほんとうはめんどうなことなのかもしれない。
せっかくの、いいムードが壊れてしまうかもしれない。
もちろん、買い物というのはムードも含めての
おたのしみではあるのだから。

だから、かなり気をつけて表示する必要もありそうだ。
そのあたりで「いやな感じ」を、共有することは、
これまたお互いのためにならないと思うからだ。
そういったことを考えていくと、
デメリット表示をできるだけ書くということも、
けっこう簡単ではないと思える。
しかし、とにかく、はじめてみるつもりでいる。

それなりに、「ほぼ日ストア」も経験をつんできて、
失敗もしてきたし、想像以上とほめられたこともある。
これからも、どうしたって失敗もあるだろうし、
いいところを伝えきれないこともあると思うのだ。
しかし、つくる側と買う側が、
互いに信頼しあえるような関係をつくるための
努力とか工夫とかについては、
とにかくじたばたとやっていこうと思っている。

どうか、ほんの少しでいいので愛情こめて、
見守ってください。
よろしくお願いします。


このページへの感想などは、メールの表題に、
「ダーリンコラムを読んで」と書いて、
postman@1101.comに送ってください。

2004-12-06-MON

BACK
戻る