ITOI
ダーリンコラム

<食物連鎖の王様の座>

今週は、ただのグチね。
誰にぶつけるわけにもいかないグチね。
自分で勝手にやってることなのに、
なんかつらいからって、ぶつぶつ言っている回です。

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ここのところ、たんぱく質中心の食事にしていて、
炭水化物や脂肪をなるべく摂らないようにしている。
そのうちまた、ゆっくりといいバランスに戻すのだけれど、
いまは、とにかくたんぱく質を食料にしている。

これを、ちょっと続けていると、
どうも、肉体ばかりでなく、
精神のほうにも変化があらわれてくるように思うのだ。

たんぱく質を十分に食べられるということは、
人間の歴史のなかで、どういう意味を持つのだろう。
人間という動物が、他の動物を倒して、
その肉を食らうということだ。
倒した動物が、草食であるか肉食であるかは別として、
とにかく、やっつけたからこそ、
そいつの死骸を食えるというわけだ。

つまり、牛を食うオレは、牛を倒せるオレだ。
豚を食うオレは、豚をやっつけられるオレだ。
ニワトリを食うオレは、ニワトリを‥‥
倒せるというか捕まえられるオレだ。
牛がどれだけ強いか知らないけれど、
豚の先祖がイノシシだっていうけれど、
ニワトリだって捕まえるのは大変だけれど、
オレは、それを食うのだ‥‥というわけだ。

身体が、そういうふうに「いい気」になってしまう。
地球上の食物連鎖の頂点に、
自分が立っているのだと、
「王様気分」になってしまうのである。
格闘技の選手とか、力と力をぶつけあって
競争している人たちが、やたらに肉が好きなのは、
こういうことだったのかもしれない。
あらゆる動物のなかで、いちばん強いからこそ、
他の動物の肉を食らえるんだものな。

実をいうと、ぼくには、
この状態は、まことに居心地が悪い。
たんぱく質中心とはいえ、
厳密にそうしようと決めているわけではないので、
ちょっとだけコメのめしだとか、パンだとか食べる。
そうすると、これがうまいんだなぁ。

例えば、冷凍しておいた「ドンク」の食パンなんて、
ただトーストにしてバターもなにもつけないのに、
甘みと塩味のバランスがとてもよくて、
ほんとにうまいのだ。
主食として食べているときには、気づかなかったうまさが、
ほんとうによくわかる。

オレ、食物連鎖の頂点にいなくていいから、
でんぷん中心に食って生きていきたいなぁと、
そんなことを思っている。
頂点にいつでもいられることがわかっちゃったら、
ちょっと頂点から下って、
自分のいちばん居心地のいい場所にいるのが、
いまの時代の「王様気分」なんだろうと思うけど、
ま、いっか。

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2004-10-11-MON

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