ITOI
ダーリンコラム

<一見、古めかしいお話>

今週は、ふふふ、流行遅れな話をするからね。
冗談めかして言ってみよう、
「さぁ、インターネット時代がはじまった!」と。

ちょっと笑った?
笑って当然だとは思っている、ぼくも。
だって、さんざん「これからはインターネットの時代」と、
連呼されていた時代があって、
あんまりそれを言う人もいなくなって、
そのうちには
「インターネット」という単語を口にするときには、
必ず否定的に使うべきだというような
ビジネス的な不文律さえ感じられる昨今になってしまった。

ぼくの場合、「インターネットは、スゴイ」、
ということは、揺るぎない前提にしている。
インターネットは、流行やブームというようなものではなく
コミュニケーションの基盤に関わるインフラのひとつだ。
水道や電気や電話や道路と同じような、
社会の大きな「しくみ」なのだ。
さらに、インターネットそのものがスゴイというより、
「インターネット的」である考え方や、
「インターネット的」である動き方のほうが
実は重要なのではないか、というふうに思っている。
そのことは、『インターネット的』(PHP新書)という
本にもしているので、
まだ読んでない方は、ぜひお読みください。
この本は、インターネットということばが
流行らなくなってから本屋に並んだインターネットの本だ。
ま、それはさておき。

このところ、小さな新聞記事のなかに、
「さぁ、インターネットの時代だぜ」と
言いたくなるようなニュースが、ちらほらと
紛れこんでいるのに気づいているだろうか。
例えば、韓国のインターネット人口が、
約50%になっていることも、最近伝えられている。
これは、けっこう大きなニュースだと、ぼくは思う。
つまり、紅白歌合戦の視聴率に匹敵する比率ですよ、
50%っていう数字は。
お隣の国で、こんなことになっている。
また、大きな企業が下請けからの部品供給について、
インターネットでの見積もり提出をスタートさせているとか
世の中に「水道完備」のように、
インターネットが張り巡らされてきて、
「使う・使える」を前提にした社会が動き出していることが
ハッキリしてきたと思うのだ。

そこに、1月20日付けの讀売新聞の第一面記事だった。
総務省が、
「国や地方自治体への申請・届け出を、
 原則すべて電子化することを柱とする
 電子政府・電子自治体関連三法案を
 通常国会に提出する方針を決めた。
 成立すれば。2003年度から婚姻届の提出、
 パスポート申請や国税の申告などが
 会社や自宅からインターネット経由で可能になる」
というニュースだ。

「ただ、関係法が膨大に上るうえ、
 各省庁や自治体の機材や人員の受け入れ体制整備が
 遅れ、一部の手続きが2003年度から
 実施できないことが懸念されている。
 また、大量の添付書類が必要な申請を円滑に
 行うには、通信のブロードバンド化の
 進展が必要との指摘もある」
などという部分を読むと、
実はけっこう簡単じゃないよなぁとも思うのだけれど、
逆に、この法案を前に進めるために、
あらゆるところで「過去のシステム」との衝突を
回避することができなくなったとも言える。

ぼくのたった一年間の(『インパク』での)
「公(おおやけ)」との付きあいでは、
衝突さえできなかったように思う。
日本のシステムは
「インターネットがない」時に生まれて、
そのままになっている。
インターネット以後の社会を整備しようと思ったら、
ある意味で「いままでの決りごと」を
ぶち壊すようなことを連続的にしなければならないのだ。
それを、やるということらしいのだ。

そうなることだろう、じゃなく、
「そうする」という方向に、日本が動くというわけだ。
ああ、とうとうインターネット時代がはじまる・・・って、
冗談じゃなかったでしょ。
『インパク』の、あの高校の文化祭的な
合法クリエイティブに悩んでいた季節も、
まんざら無駄じゃなかったんですよ、
全国のインターネット博覧会関係者だった現場の皆さん。
「インターネットでの選挙は是か非か?」みたいな
タイトルのラジオ番組に出てしまって、
「とにかく危険だから絶対に認めません」
なんていう聴取者のご意見に対して、
めちゃくちゃなこと言うなよと怒るのではなく、
落ち着きを装って、
「え、そういうことではないんですね」なんて
紳士的に対応していた自分に、報告してやりたい。

「ほぼ日」を読んでくれている方々なら、
わかってくれると思うけれど、
インターネットという道路網は、使い方によっては、
ほんとに便利で人のためになるシステムだ。
「まーだ、インターネットなんて言ってるんですか」
というようなセリフも、あちこちで聞こえるこの頃だけど、
「インターネット時代がはじまった!」のだ、やっと。

むろん、だからみんなが幸福になりますよ、
なんてことは言えませんけどね。
それと、「ほぼ日」は、
インターネットの内側だけでがんばろうなんて
意地は張ってませんので、よろしく。

2002-01-21-MON

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