ITOI
ダーリンコラム

<目の栄養不足>

なにか根拠のある話じゃないんだけれど、
ふと思いついたこと。
食べ物には「栄養バランス」ってあるでしょう。
いろんな食物をまんべんなく摂るのが、
人間の健康にいいんだっていう考え方ですよね。

肉が好きだからって肉ばっかり食べてちゃイケマセンって。
まぁ、例えば、肉っていうのは食物連鎖では、
いちばん上位の食べ物ではあるけれど、
これだけじゃ足りない栄養素が、いっぱいある。

これって食べ物ばかりじゃないよなぁって、思ったわけだ。
食べ物じゃなくて、例えば「見るもの」のことだ。

いずれもっと進歩して、
文字通りのマルチメディアになるのだろうが、
「パソコンの画面&テレビの画面」は、
他のなにに比べても取り柄のおおい「見るもの」だ。
知りたいこと見たいこと聞きたいこと、
ほとんどがディスプレーに表示される。
これからは、もっとその性能も向上するだろう。
これさえ見ていれば世界も人間もすべてがわかる、
と言えるくらいのものになるにちがいない。

しかし、「それだけを見て生きている人」と、
どんなつきあい方ができるのだろう?

人体というやつが、
栄養素として、
たんぱく質やでんぷんのようなもの以外に、
鉄や亜鉛やマグネシウムやといった、
実感としてはなぜ必要なのかが理解できないような物質を、
微量とはいえ必須としているように、
目も耳も、不完全な人間たちが創作した「世界のすべて」
なんかじゃ、栄養不足になってしまうのだ。

ぼく自身、毎日パソコンとテレビだけで生きてる
ような生活がしばらく連続していると、
ここに書こうと思いつくテーマが、ついつい、
インターネットやテレビから受けた情報に
偏っていってしまうことに気づいた。
ちょっと外にでるだけで、
「書けるぞ」というネタ的な考えから、
「書きたいな」という気持ちの入った考えになる。
毎日のことだけれど、やっぱり
「書きたい」がないと、自分で読んでいても
なんかピンとこないものになっちゃうんだよね。

(ところで、今日のこの原稿は、
前々から半分くらい書きかけてあったものを、
横目後ろ目でテレビを見ながら書いているのよん)

このごろ、ぼくの考えることって、
「運」「鈍」「縁」みたいな、
昔の人がさんざん言ってきたようなことばっかりだけれど、
ほんとにそう思っているのだからしょうがないよね。

【ディスプレーから離れよう、しかも毎日更新がんばれ】
こんな一見矛盾した方針を、
「ほぼ日」スタッフと読者とが、わかってくれるだろか?

1999-09-06-MON

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