だからからだ
だからからだ
谷川俊太郎と覚和歌子、詩とからだのお話。

第8回
からだが目覚めていくかんじ。

谷川 僕のやってる身体術は、
ぜったい無理なことはしないんです。
痛いことはしないかわりに、
・ゆっくり動く。
・丁寧にやる。
・動きをぜんぶ意識する。
そう言われるんですよ。
私の通ってるところでも
似たようなかんじですね。
意識することがすごく大事だって言われる。
谷川 いろんな流派はあるけれども、
わりと共通した考え方だね。
太極拳なんかも、
すごいゆっくり動くでしょ?
知らなかったときには、
「なんだ?あれ。
 ぜんぜんからだを鍛えることにならねぇだろう」
と思ってたんだけど、今はすごくよくわかる。
普段使ってない筋肉を、
ゆっくり静かに使うことで
からだのなかの使ってない部分が
目覚めてくるんです。

そう、目覚めるんですよ。
自分のからだとつきあうということは、
ものすごく楽しいことなんです。
「ここって、こういうかんじだったのか!」
ということの連続だから。
谷川 詩の朗読も
一種の身体術に近いよ。
あれは、
健康に役立ってんじゃ
ないかな。


それから、身体術には、
気功の考えが入ってるものがすごく多いんです。
これまで僕は、「気」というものを
あんまり意識してなかった。
「気分が悪い」とか「気が弱い」とか
そういう言葉はたくさんあるわけだけれど、
それを無自覚で使っていたわけです。
でも、「気」を意識するようになってきて、
例えば人と会ったときに、
その人の気を感じようとしたり、
そこからなにかを判断しようとしたり
するようになりました。
また、ある場所に行って
かんじ悪いとこだな、と思ってたのを、
「気が、なんかおかしい」と
考えるようになったりね。
自然のなかに入ったときには
ただ気持ちいいと感じるだけじゃなくて、
雑木林の木々の気をもらっちゃおうとする。
そんな発想になってくるんです。
エネルギーを
チャージしようっていうような感覚かな。
からだときちんとつきあう以前は、
そういうことを感覚として
ぜんぜんキャッチできてなかったと思う。
── からだをきちんと意識できていると、
身体能力が高くなり、
表現力も出るように思います。
谷川 からだとのつきあいがきちんとできると
頭が働くのは確かです。
やっぱり、からだがベースにあって
頭も働くんだな、と思いますね。
酒浸りとか麻薬浸りで
ものを書いたりする人いるけど、
そういうことも、もちろんある人にとっては
可能なんだろうけど、
自分にはそれはできないな、と思う。
── 身体術をやっていると、実生活でも
動きが丁寧になったり
ゆっくりになったりするんですか?
谷川 なかなかそうはいかないんだよ。
心がけているんですけどね。
さっき話した、
『人は食べなくても生きられる』
という本によると、
食べなくても生きていけると思っていたら、
ぜんぜん食べなくても、
体重はあるところから増えていくんだって。
(納得して)‥‥きっとそうなんでしょうね。
── ひえぇ、覚さん、
そうなんですか?
うん。きっと、意識の問題だから。
からだと意識って関係が密接なんですよ。
谷川 そうなんだよ。
斉藤一人さんの、
「ついてるついてる」という言葉、
知ってるでしょ?
「ついてるついてる」って言えばそうなるんだよ。
たとえば、そうだ!
Oリングテストをやってみましょうか。
── オーリングテスト?
利き手じゃないほうの手を出します。
私の場合は、左手。
人さし指と親指で
輪っかをつくってうんと力を入れてください。
うーんとね。
そうしてから、最近あった
すごく嫌なことを思ってください。
見たくもない食べ物とか、嫌いな人でもいいや。
── マイナスイメージのもの。
谷川 車をぶつけた、とかでもいいし。


嫌なことを考えて指で輪をつくり、
それをほかの人が広げてみる 。

ああああ。
谷川 ほら、指が離れるね。
じゃあ、今度は。
すごく楽しいことを思ってみましょう。
谷川 ほら、前よりかずっと強い。
指が離れないでしょ。


ギューッ。離れない!

これ、Oリングテストというんですよ。
マイナスイメージのことを思ってると
軽い力で、指の輪っかがパッと離れちゃうんだけど
プラスのことを思ってると離れないんですよ。
これはね、例えば、
薬が自分に効くかどうかみたいなことでも
試せるんです。
薬を右手に持って、
Oリングの強さを計るんです。
── 自分が効くと思ってるかどうかが
わかる、ということですか?
谷川 いや、どう思ってるのでもいいの。
その薬のことを知らなくていいの。
ただ、医者にもらった薬を飲もうか
どうしようかというときに
このテストをするといいよ。
効くんだったら指がくっついたままになる。
からだが出してる答えが聞けるというか。
── へえええ!
からだの答えが!!??


(つづきます!)

「青空1号」


sony music shopへ
詩作朗読家でありシンガーソングライターでもある
覚和歌子さんが昨年リリースしたソロCD。
覚さんが作詞した
映画「千と千尋の神隠し」の主題歌、
「いつも何度でも」も収録されています。
空や風や海をとおって届くような覚さんの声に
からだの扉が開かれる気分が味わえるアルバムです。

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2005-02-22-TUE

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