好きな人の言葉は、よく聞こえますか。
補聴器って、あるのは知っていたけれど。

「よく聞く」コツを
darlingによく聞く。

ほぼにちわ。
通天閣あかりです。

「聞くコミュニケーションってどういうことなのか」を
読者のみなさんと一緒に考えているこのページですが、
今日は、近くにいる「よく聞く人」、
darling糸井重里に話を聞いてみました。

聞くことが仕事のインタビュアーと呼ばれる人は、
世の中にたくさんいらっしゃいますが、
みなさんそれぞれに、人の話を聞くコツというか
スタイルがあるのではないかと思います。

darlingの「聞く」スタイルから、
コミュニケーションのヒントが
見えてくるといいのですが、さて、いかがでしょうか。




人に話を聞くのが好きなんです

こんにちは、イトイです。
ぼくは、いわゆるインタビューのプロではないのですが、
インタビューの仕事をやる機会がすごく多いのです。
意識してそういうお仕事を
増やしていたわけではないのですが、
気がつけば、すっごく多くなっていました。
なんでかな、とよく考えたら、ちょっとわかってきた。
実は、ぼくは誰かに会って話を聞くっていうことが
大好きだったんです! もう、それはすごく。

インタビューは、本を読むのとは違って、
「もっとそこを聞かせてください」
「今の話はわかりにくいからもう一回」
「そこは飽きました」などと言えます。

そうやって聞いていくと、インタビューされる側も、
「人が面白いと思う話」が何なのか、
見えてくるんですよ。
聞く人と聞かれる人の、ふたりでつくる空間が、
家族や恋人の関係に似てる
と思うんです。

すごく親しい相手と話すときには、
「この人だから言える」ということが
たくさんありますね。
でも「他人同士」という前提があると
会話のフローチャートの中心になることしか
言えなくなるんですよ。
 
よく例に出してることなんだけど、
昔、ビートルズのことを
「英国の4人組コーラスグループ」って
新聞に書いてあったのを読んだんです。
確かに何も間違ってないんだけど、
その表現じゃ伝わらない。

でも「じゃあビートルズって何だ?」って言われても、
なかなか表現できないんです。
それが、誰かとビートルズのことを
色々と話していくうちに分かってくるわけです。
そのゲームが、すごく面白いんですよ。

ビートルズのことを1対1で、
「もっと教えて、もっと教えて」
って言える。それが、インタビューなんです。


「無内容だったけど、面白かった」

ほかの新聞や雑誌などに書いてあることを
前もって勉強して、
それを確認するためにインタビューするのは、
基本的には、ぼくには向いてないんです。

確認作業をなくしちゃえば、そこから
とんでもないコラボレーションが
できるかもしれないでしょう。
だから、ぼくはあえて、
その人について知りすぎないで
インタビューに行っちゃうこともあります。

何かの記事に既に書いてあることを平気で聞いたりして、
ほんとに申し訳ないと思うこともあるんだけど、
ぼくはあえてインタビューしちゃうんです。
事実が知りたいんじゃなくて
そこで感じてたことや驚いたことを知りたい。

この人のどういうところが面白いんだろう、
何が魅力なんだろうっていうのを
本人が気づいてないところまで
含めて知りたいんです。


だから、内容はないけど、面白かった
ということもあるんです。
アーカイブにして、
何かの資料になるようなインタビューというよりは、
その時間をお互いにエンターテインするための
インタビューにしたい。
「ほんとに無内容だったね、
 でもまた会いましょう」
というのが理想なんです。
そういうインタビューができた時は、
必ずその人の持ってる、
その人ならではのものが出てくるから。

話の途中で「関係ないけどさ」って
話が出始めたら、それは面白いインタビューなんですよ。
雑誌や新聞だと、紙面のスペースが限られているから、
「関係ないけどさ」という部分は
盛り込めないことが多い。
でも、関係ない話のほうが、うま味があるんです。

ですから、インターネットとインタビューは
ものすごく相性いいんですよ。
「関係ないけどさ」のかたまりにできる。
いろんな方向に話を膨らませたり、
自由に転がる
ボールみたいなやりとりができるんです。

自分は「ゼロ」で。

インタビューの基本は、
できるだけ自分が「ゼロ」になること。
討論会をやってるんじゃないですからね。
できるだけ「相手の考えがたっぷり出せたな」
っていうように
話をもっていきたいんです。

正直に言うと、その場では読者のことは忘れます。
読者のことを考えすぎてると
どうしても「やらせ」になっちゃうから。
ある言葉を引き出すために
話を聞いているかんじになる。
相手が道具になっちゃうから、嫌なんです。

それから、インタビューの一番のタブーは、
聞き逃すことなんです。
「大筋で、だいたいこんなことだろう」と
予想をつけて聞くことほど、だめなことはないんです。
ほんのちょっとした言葉ひとつでも、
聞いたか聞かないかで全然違う。
もう、しゃべりかたも接続詞でも
ぼくは気になってしかたがないんです。

だから、ぼくは体調が悪かったりすると、つらい。
そういうときは、
取材の現場に行くまでのタクシーの中で
もう死人みたいになって
めっちゃくちゃに体を休めるか、
あるいはどんなに疲れてても、
エンジン全開までふみこむか、
どっちかしかないんですよ。

ひとつずつの現場は、ものすごいんです。
着くまでつらくてしょうがないくらいだよ。
オリンピック選手が
水泳のスタート台にたつときに
慣れてるからへっちゃらかといえば、大間違いで、
やっぱりその時点でも震えるでしょう。

飯を食ったり車を運転したりするのとは全然違う。
人とコミュニケーションするのは、
特に、一対一で話をするのは、
ものすごく気合いが要る。


歌を唄ってもいいくらいだ。

ぼくはインタビュアーとしては特殊だと思います。
だから特殊な本ができる。
「海馬」だってヘンだもんね。
あれは、池谷さんとお互い手伝いあって
ふたりの作り上げた場からできている本です。

人と会って楽しいことって、そういうことだからね。
取材の現場で、
歌を唄ってもいいじゃないか、
と思うくらいなんですよ。
でも、それだけでは
やっぱり興味が満たされないんで
色んなこと聞くわけです。

あるものごとに対してどういうよけかたをしたか、
ある飯をどう食ったか。
そういうことの中にその人がいる。
それを聞き出したいんです。

骨の中にその人がいるんじゃなくて、
肉の中にその人がいるんです。

本人が気にしてるのは、
レントゲン写真のなかの骨の形より
「ちょっと痩せたんじゃない?」とか
「筋肉ついたんじゃない?」とか
そういうことだと思うんです。
骨組みは後で資料として、置いておけばいい。

「この人になら」と思われる人になる

ぼくは人の話にうなずくとよく言われるけど、
ほんとうに、うなずいています。
「はっはー」っと、心の底からうなずいています。
これまで自分の培ってきたものぜんぶで
相手の話を理解するんです。
むこうが「この人になら通じる」と思うから
言ってくれるわけです。
「この人に言ってもわかってもらえないかもしれない」
って思ったら、通り一遍のことで
すませてしまうでしょう。
あ、わかってくれるんだったら
もっと言っちゃおうかな
って思ってくれる。それが面白いんだよ。

「インタビューしてきたけど、つまんなかった」
っていうことがあれば、それは
そのインタビュアーのせいなんだよ。
インタビューする力を育てるのは
どうしたらいいのかはぼくにもわからない。

でも、おそらく
自分が生活していく中で、
怒ったり喜んだり悲しんだりしたことを
ひとつずつ大事に観察することだと思います。
「自分はこういう時にこういうことを思うのか」
ってことをみんな意外に知らないんですよ。

ほんとはびっくりすることが
自分の中にいっぱいある
んですよ。
それをやりすごさずに、大切にすることが
相手を知りたくなる、インタビューする力を
伸ばすコツかもしれません。




darlingによると、
インタビューで一番いけないことは
「聞き逃すこと」。
勝手にタカをくくって話を聞いたのでは
相手のことをほんとうに知るチャンスを
みすみす逃しているようなものなんですね。
ほんのちょっとした言葉のひとつでも、
聞いたか聞かないかで全然違う。
ちいさなひとことに耳をすますことを
もっと大切にしたいと思います。


8月25日(日)の
イベント締め切り迫る!

たくさんのご応募を頂いております
Communication AID 2002のイベントの
応募締め切りが、7月31日(水)24時です。
最終日はつながりにくい可能性がありますので
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2002-07-26-FRI

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