1951年民間ラジオ開局とともに流れ出した
CMソングの第1号。
その作詞・作曲者は三木鶏郎と言われている。
本書の主人公、大森昭男はその三木の弟子として
CMソングの音楽ディレクターのキャリアを
スタートさせている。1960年のことだ。
それから2007年の現在まで47年にわたり
CM業界の第一線で仕事をし、
1760作品ものCM音楽を制作してきた。
資生堂の「サクセス、サクセス」(宇崎竜童)
「時間よ止まれ」(矢沢永吉)
「君の仁美は10000ボルト」(堀内孝雄)
「夢一夜」(南こうせつ)などのヒット曲を生み出した
CM音楽ディレクターであり、
西武百貨店の「不思議、大好き。」
「おいしい生活。」などの時代を画したCMを
糸井重里、矢野顕子、川崎徹などの
当時の若き才能とともに生み出してきた人物である。
本書はその大森の仕事が縦軸になっている。
そこにCMの父ともいわれる三木鶏郎の仕事を皮切りに、
CMの歴史には欠くことのできない50名余の作り手たちを、
音楽評論家・田家秀樹が足掛け3年にわたり取材し
CMソングそのものの趨勢をも記録した労作である。
小林亜星、坂本龍一、矢野顕子、鈴木慶一、井上鑑、
樋口康雄などの作曲家、
作詞家としての糸井重里、伊藤アキラ、
演出家川崎徹、結城巨雄、操上和美、
アーティスト大貫妙子、齊藤ネコをはじめとする
表舞台の人間から、ミキシング・エンジニア、
プロデューサー、企業宣伝担当者などの裏方までも取材し、
CM音楽の歴史は日本の戦後のサブカルチャー史と
否応なく呼応していることを描き出している。
なお、最終章には日本語ロックの祖といわれる
「はっぴいえんど」の大瀧詠一と大森の対談を収録。
三ツ矢サイダーのCMで出会って以来、
AGFの小林旭の「熱き心に」(1985年)までの
共同作業を振り返る。
「熱風」(2004年1月〜2006年12月)までの連載に加筆。

■四六版ハードカバー・452頁
■定価/1995円(税込)
■2007年8月7日発売
■徳間書店 ISBN:978-4-19-862355-5

田家秀樹/1946年生まれ。音楽評論家。主な著書に
『夢の絆』(角川書店)『吉田拓郎』(東京FM出版)
『読むーJ-POP』(朝日文庫)ほか多数。


『みんなCM音楽を歌っていた。』書籍もくじ
「ほぼ日」立ち読み版でお読みいただけるのは「◎」の章です。

プロローグ

第1章 三木鶏郎の弟子として
■CMソングの誕生
・三木鶏郎という傑出した存在
・“冗談工房”への参加
・“詩”ではなく“詞”の誕生

■三木鶏郎事務所からの独立
・ラジオからテレビへ
・サウンドロゴCM
・インフォマティブ・ソング
・映像化時代と資生堂のCM
・ブレーン・JACK設立

■ビートルズ以後の新しい波
・ブレーン・JACKからの独立
・「MG5」、クニ河内、岡林信康
◎新旧の才能の両立【←立ち読み版第1回】
◎名作「三ツ矢サイダー'73」のCM【←立ち読み版第2回】

■タイアップ戦争の渦中へ
・「はっぴいえんど」の大瀧詠一との仕事
◎CM音楽と山下達郎【←立ち読み版第3回】
・CM音楽のレコード化
◎CMソングからイメージソングへ【←立ち読み版第4回】

■タイアップ戦争の終焉
・「もうここまでかもしれない」
◎資生堂と宇崎竜童&阿木燿子【←立ち読み版第5回】
◎キャロルからの脱皮、矢沢永吉【←立ち読み版第6回】
・「君の瞳は10000ボルト」の堀内孝雄
・南こうせつと阿木燿子という異種交配

■理想のタイアップとは?
・注視箱
・玉置浩二のメロディの行方
・「ワインレッドの心」
・「理想のタイアップとは?」への答え


第2章 CM黄金期へ
■地殻変動の時代
◎YMOそれぞれのメンバーとの仕事【←立ち読み版第7回】
◎“知る人ぞ知る”糸井重里の作詞【←立ち読み版第8回】
・西武百貨店のCM

■プロデューサーの時代へ
・演出家の役割、川崎徹の場合
・MTVの登場と既成洋楽曲の使用
・“海外”には保守的だった
・「禁煙パイポ」の作詞家は吉岡治

■広告音楽制作者の第二世代、吉江一男
・目標
・作曲者、まぶたひとえ
・専属性・著作権・スタジオ
・鶏郎賞

■日本広告音楽制作者連盟、二代目理事長、横倉義純
・1971年、JAM設立
・プロデュース・メインの発想
・異業種とのコラボレーションの結果

■広告音楽作曲家としての鈴木慶一
◎ミノルタの「今の君はピカピカに光って」【←立ち読み版第9回】
・推理と匿名性の面白さ
◎三木鶏郎との縁【←立ち読み版第10回】


第3章 CM音楽史のキーパーソン達
■鶏郎の継承者──いずみたく
・永六輔、野坂昭如との仕事
・明治製菓CM「世界は二人のために」
・師・鶏郎との共通点と相違点

■鶏郎の継承者の三代目──小林亜星
・レナウン「イエイエ」誕生
・「ダサい音楽を全部書き換えてやる」
・「この木なんの木」「ダーバン」「酒は大関こころいき」etc

■大森昭男との長いつきあい
・演出家の役割──結城巨雄の場合
・演出家の役割──今村直樹の場合
・言葉が伝わる歌、槇原敬之と宮沢和史

■レコード音楽にないCMソングの面白さ
・「島唄」と佐藤剛
・「いつでも夢を」と渡辺秀文
・コカコーラ「I Feel Coke」と小池哲夫

■同期の桜──作詞家・伊藤アキラ
・サントリー「純生」と浜口庫之助
・「VIVA純生」のキャッチフレーズとトリロー手法
・ターニングポイントの人──糸井重里と佐藤雅彦

■二人のエンジニア
・フリーランス第一号、伊豫部富治
・“作る”ではなく、“録る”。
・独学のもう一人のエンジニア田中信一
・ミキサーは職人。だけど精神はアーティスト

第4章 クリエイターの肖像
■才能を育てる──井上鑑
・“素人”との出会い
・“師匠”、大滝詠一を紹介
・ジャズでもクラッシックでもない自由さ
・30年間CMに関わって思うこと
■天才音楽家の独自性を楽しむ──樋口康雄
・“天才少年”を紹介される
・映像があったからこそ面白かった
・大森のみを窓口にしたCMの仕事
・趣味で音楽をやりたかった人

■作家性と職人魂──矢野顕子
◎糸井?矢野コンビの発案者【←立ち読み版第11回】
◎西武「不思議、大好き。」【←立ち読み版第12回】
・並外れた集中力
・天才の職人仕事

■CD「斎藤ネコCM作曲集」
・1986年JALでの出会い
・ペンネームの由来
・ふたりの実験精神
・「CMは卒業」の意味

■映像に内在する音楽──操上和美
・写真家が演出家になる
・エンカ──VANのCM
・操上和美と杉山登志の美意識
・「自分の生理が拒否したら辞めればいい」

■染まらない、汚れない、流されない──大貫妙子
・デビュー30周年
・シュガー・ベイブのメンバーとしての出会い
・ボーカリストと作曲者と
・JR東日本のCM音楽「美しい人よ」

第5章 再び三木鶏郎のこと、そして未来へ
■三木鶏郎企画研究所にて
・再評価の動き
・「三木鶏郎と異才たち」というライブイベント
・三ツ矢サイダーCM第一号
・73歳の鶏郎とマック

■1973年という年
・ビートルズの出現
・断筆宣言の頃
・最後のCM、アサヒビール
・糖尿病と仕事
■トリビュート・コンサート
・いまでも古くない。
・1954年のヒット曲「田舎のバス」を、
 1972年生まれの畠山美由紀が歌う
・デジタル・データで再現された「クラリネット五重奏」
・「はるか遠くまできたようで、いまのようでもある」

■社会的影響力──坂本龍一
・初のCM作品「丸井のメガネ」

◎デビュー前の起用【←立ち読み版第13回】
◎CM音楽の黄金期、80年代←立ち読み版最終回】
・アーティストの生き方が問われる時代

第6章 三ツ矢サイダーでの出会いから「熱き心に」まで
対談 大瀧詠一VS大森昭男 (司会・構成 田家秀樹)

・「はっぴえんど」を解散した翌年の1973年、大森と出会う。
・「サイダー'73」に始まり、「サイダー'74」に終わった年
・「サイダー'76」のCMが山下達郎のアカペラになった理由
・大瀧のテレビ出演が予定されていた「サイダー'77」。
 そして幻の「サイダー'79」。
・AGFのCM「熱き心に」で小林旭という大きな存在に出会った。

エピローグ
大森昭男制作CM全作品リスト 450




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