The last piece.  ギー・ラリベルテ  シルク・ドゥ・ソレイユという パズルを埋める最後のピース
9 ヒーロー
糸井 創立から25年が過ぎて、
シルク・ドゥ・ソレイユは、
きっと、当時では考えられなかったほどの
成功をおさめました。
その成功はいまも広がっていると思うのですが、
シルク・ドゥ・ソレイユの成功と
ギーさん個人のしあわせは、
いまも一致してますか?
ギー もちろん、そのふたつは互いに
影響しているとは思います。
企業としての成功、私がそこから得る喜び‥‥。
そういう循環も、もちろんあるんですけども、
やはりわたしは生身の人間ですから、
企業の成功のみによって、私ののぞみが
すべて満たされるというわけではないですし、
同時に、企業が抱える痛みが、
完全に私自身の痛みとして
私から離れないわけでもない。
だから、うーん‥‥
シルク・ドゥ・ソレイユと私というのは、
長年、ずっといっしょに生活をともしてきた関係、
というふうに表すのが、
いちばん適切かもしれないです。
糸井 別れたりはしないんでしょうか?
その、個人と組織が。
ギー これまで、私はすばらしい旅に
出させてもらったと感じています。
シルク・ドゥ・ソレイユというものを通じて、
かなりの大きな満足感を得ることができ、
たくさんのすばらしい人々と
出会うことができた。
私はそれを誇りに思っています。
ここから私が離れるというようなことは
いまの時点ではまったく考えられません。
糸井 たぶん、3年前も、
シルク・ドゥ・ソレイユは
「大成功した」と見えていたでしょうし、
いまも「大成功している」と
思えるんじゃないかと思います。
この成功は、今後も、
さらに広がっていくものなのでしょうか。
ギー やはり、将来はわからない、
というのが、正直なところです。
未来は見えないかもしれませんが、
我々が25年前から常に心がけてきたことは
これからも継続して守っていこうと思います。
「熱意を持つ」ということ、
「決心を固める」ということ、
「ビジョン、先見性をしっかり持つ」ということ。
この3つは25年前と同じように
我々の要として継続させていきたいと思います。
私たちがこれからさらに成功していくかどうか、
それを決めるのはやはり、観客のみなさんです。
お客さんにどれだけ真剣に訴えることができるか、
結果的には、そこにかかってくると思いますので
私たちは、気持ちを込めたショーをつくることで
観にきてくださるみなさんとの絆を深めて、
そしてまた世の中の有能なアーティストを探す、
ということを今後も続けていきたいと思います。
糸井 わかりました。ありがとうございます。
昔は「ヒーロー」って個人だったけど、
いま、21世紀の「ヒーロー」って
組織、チームだと思うんですよ。
そういう意味でシルク・ドゥ・ソレイユというのは、
ぼくらがヒーローとして、
ずっと見ていたいイメージなんで、
ぜひ、ずっと見させてください。
ギー 心に響くようなショーを
常に提供していきたいと思っています。
そして、ショーを楽しんでいただくだけでなく、
ショーを通じて、もう一歩深く、
何かを感じ取っていただいて、
そこから波及するプラスのエネルギー、
作用、価値観などが生まれていくとしたら
それほどうれしいことはありません。
そういったことをシルク・ドゥ・ソレイユが
今後、うまく達成できればと思っています。
糸井 どうもありがとうございます。
あの、ジルさんにも、
おなじようなこと訊いたんですけど、
やっぱり、あなたも若いとき
ヒッピーだったんですか?
ギー ヒッピーですか(笑)。
まぁ、その一端だったということは、
もちろん言えると思いますね。
ただ、当時、私はまだ若かったものですから、
ヒッピーの中心をなすような
そういう存在ではなかったんですけど、
ヒッピーの端くれのようなものではありました。
ヒッピーの掲げる、ピース、ラブ、
いうもののメッセージは非常に好きでしたので、
ヒッピーと言えるのかなと思います。
糸井 あ、そうか、あなたは
ジルさんやぼくよりも若いんですよね(笑)。
今日はほんとうにどうもありがとうございます。
ギー ほんとに来ていただきまして、
ありがとうございました。
(最終回につづきます)

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2010-01-27-WED

HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN
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