糸井 さきほどのお話を聞いていて、
妙にうれしかったことは、
出発点に「お金が必要だ」っていう
切実な欲求があったということです。
つまり、ピュアなアマチュアとして
趣味を磨いていく延長上に
シルク・ドゥ・ソレイユができたんじゃなくて、
はじまりからそれは興業で、資金が必要だった。
ジル ああ、そうですね。
糸井 お金のため、というと言い方が悪いけど、
生活のためにというよりは、
自分がクリエイティブであるために
お金が必要だったわけですよね。
ジル うーん‥‥
いや、生活のためでもありました(笑)。
糸井 ああ、いいですね(笑)。
ますます、いいです。
ジル 竹馬に乗ってケベックを目指したとき、
私には3人の子どもがいました。
糸井 あ、そう! 3人?
それは、思いも寄らなかった(笑)。
ジル 子どもたちからは、
「(竹馬から)下りろ、下りろ」
って言われましたよ。
糸井 子どものころはお父さんから
「下りろ」と言われ、
オトナになってからは子どもたちから
「下りろ」と言われ(笑)。
ジル そうなんです(笑)。
そのころ、父はもう亡くなってましたが、
もしも生きていたら、
彼は私の竹馬をカットしたことでしょう。
糸井 はははははは。
ジル 母親はまだ生きていて、やはり、
私が竹馬に乗ることにひどく反対しました。
子どもがいるのに何をやっているんだ、
もっと真面目になりなさいと言われました。
いまさらクラウン(ピエロ)になるなんて、
おまえは愚かだと言われました。
けれども、私は、ハッピーだったんです。
私は愚かだけど、ハッピーだった。
糸井 いいなぁ(笑)。
ジル そして、無事に
ケベックまで竹馬で歩き終えたあと、
私は子どもたちのために
小さな竹馬をつくってあげました。
糸井 (笑)

(続きます。)





観客の前で進化を遂げる。

シルク・ドゥ・ソレイユの
トライアウト公演のチケット先行販売がはじまりました。
こちらのサイトで販売されています)
シルク・ドゥ・ソレイユの公演はいつもこの
「公開直前の演目をお客さまに観せる」
トライアウトというプロセスをはさみます。
いったいなぜでしょう?
シルク・ドゥ・ソレイユ シアター東京の
カンパニーマネージャーである
マイク・フォールズさんに訊ねたところによると‥‥

「何か月もかけてトレーニングを重ね、
 クオリティーの高い技を
 習得できたとしましょう。
 しかし、アーティストのもっとも大きな進化は
 お客さまを前にして演技をした瞬間の
 積み重ねが生む、と言うべきかもしれません。
 観客を前にショーをすることは、
 アーティストにとってひじょうに緊張すること。
 お客さまの視線にふれながら
 アーティストたちは演技をブラッシュアップし
 芸術的に進化していくのです。
 トライアウトは、
 我々にとって必要なプロセスです」

観客がどの瞬間にどういうリアクションをするのかも、
トライアウトの幕を上げてみないと
わからないことが多いのだそうです。
スタッフもアーティストも
この期間、お客さんの反応を注意深く見て
たくさん勉強するんだそうですよ。

(スガノ)

2008-04-11-FRI

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