舞台袖のスペースに置かれた、
巨大なベッドとバルーン。
どちらも、『コルテオ』のステージには
なくてはならないものなのです。


大きなベッドは、じつは、
マットの部分がトランポリンになってるんです。


で、こーんな、すごいことをやっちゃう。
ベッドでボヨヨヨンと。
いやいや、子どもが人んちのベッドとかでやる
ボヨヨヨンとはわけが違うんですよ。


一方、このでっかいバルーンは
なんに使うかというと‥‥。


飛んじゃうんです! ほんとに!
夢みたいでしょう? 夢じゃないんですよ。


ヘザーさん
「バルーンの中にはヘリウムが入ってます。
 アーティストがちょうど浮く高さに
 ヘリウムの量を調節しなくてはいけないのですが、
 それはすごく微妙な問題で、
 温度、湿度、なによりその土地の高度が関係します。
 デンバーでショーをしたときは、
 高度が高い土地でしたので
 バルーンをひとつ足さなくてはなりませんでした。
 日本は海に近いですから、その心配はなさそうです」


つぎにヘザーさんが紹介してくださったのが
このコップ。え? ただのコップ? じゃないの?


なんとこれ、楽器なんです。
ちゃんと水の量を変えてチューニングしてあるんです。
コップは下の台に固定されていて、
コップのフチをつーっと撫でたときの音を
拾って増幅する仕組みになってるんです。


さて、おつぎはコスチュームです。
ヘザーさんは『コルテオ』の衣装が
とっても気に入ってらっしゃるみたいで
ニコニコしながら説明してくださいます。


『コルテオ』にはたくさんの
コスチュームがあるのですが、
今回、取材のために、特別にいくつか
用意してくださったものがあります。
まずはこちら。とっても小さくてかわいいクラウネス。
ヴァレンティナのコスチュームです。
ちっっっちゃい! あ、大きさがわかりづらいかな。


たとえば、この靴!
下に目盛りがあるの、わかります?
ええと、なにか比較するものは‥‥。


スガノの靴が23センチくらい。
わかります? この小ささ。


26.5センチくらいの
永田の靴も置いてみました。
じゃ、つぎ、大きいほう、行ってみましょうか。
ジャイアント・クラウン、
ヴィクトリーノの靴です。
びっくりしないでくださいよ?


‥‥‥‥‥‥。


‥‥‥‥‥‥。


‥‥‥‥‥‥。
(こう見えて非常に驚いています)


ヴァレンティナとヴィクトリーノの
衣装をくらべてみると‥‥
いやぁ、すごい。


アーティストひとりひとりに合わせて
コスチュームをあつらえるのが
シルク・ドゥ・ソレイユ流。
大きなものも、小さいものも、
ふつうのものも、ぜんぶ特注です。


ヘザーさん
「客席からは見えにくいんですけど、
 それぞれのコスチュームには
 とても細かい装飾がほどこされています。
 これはヴァレンティナの服ですが、
 4枚の布が層になって使われています。
 細かい花の模様が縫い込まれているのが
 わかりますでしょうか?」


たしかに、細かい!


衣装や小道具のひとつひとつに
つくっている人のプライドが感じられます。


かたわらでは担当の方が
コスチュームを手縫いで直してました。
裏方さんなのに、オシャレです。


これは、どうやら、
コスチュームの直しのリスト。
たっくさんありますねぇ。


ヘザーさん
「ほとんどの衣装が
 モントリオールでつくられるんですけれども、
 それは真っ白い布を
 染めていくところからはじまります。
 この布も、真っ白のコットンだったんですが、
 それにピンクを塗ったり青を塗ったりして、
 こういう色い合いを出しています」


ヘザーさん
「多くの衣装は2枚ずつ用意されています。
 というのも、毎日終演後洗わないといけないので。
 肌に直接触れるものは毎日洗います。
 上から着るものは1週間に1度クリーニングします。
 いつも、シルク・ドゥ・ソレイユは
 4人の衣装さんが旅を回るんですけれども、
 現地でもスタッフを雇います。
 たとえば、アイロンがけ専門の人は、
 2人で1日8時間アイロンを
 かけ続けなくてはなりません」


ヘザーさん
「これはホワイト・クラウンが
 胸のところにつけるものなんですが、
 手縫いのビーズ刺繍がほどこされています」


ヘザーさん
「キラキラしててキレイでしょう?
 私のいちばんのお気に入りなんです」

ヘザーさん、ほんとにたのしそう。
『コルテオ』のバックステージツアーは
まだまだ続きます。

(つづきます)



『コルテオ』を支える人たち。つづき。

『コルテオ』の運営スタッフの
フジテレビ田中晋太郎さんに
ひきつづきお話をうかがっています。

次の公演地に
折り畳んで運ぶことのできるモニターラックには
16台の監視カメラの映像をはじめ、
いろんな情報が集結しています。
ちょっとテレビスタジオの副調整室に似ています。

モニターには、天気予報の情報が
詳細に表示されています。


「天気予報は、とても重要な情報です。
 雨の日と晴れの日では、
 お客さんの到着時間がちがいますし、
 エントランスに屋根のないエリアがあるので、
 強い雨の日には、お客さまを
 なるべく早く客席に案内できるように調整します。
 あとは、水たまりの水をみんなでワーッと
 モップなどで吸いに行ったり
 風が強いとわかったら、飛びそうなものを
 みんなでワーッとロープで養生しに行きます」

みんなでワーッと、それを、6人で‥‥

「そうです。お天気だけじゃなくて、
 会場内のいろんな場所の温度を測り、
 綿密に管理しています。
 会場内の空調がこのコントロールパネルで
 一括制御できるようになってるんですよ」

お客さまのために、ですか?

「それもあるんですが、実は
 シルク・ドゥ・ソレイユのアクロバットを行ううえで、
 温度管理はとても重要なんです。
 例えば、暑すぎると、
 アクロバット中に汗で手が滑って危険ですし、
 寒すぎると、筋肉がこわばってしまって
 充分なアクトができない可能性が出てきます。
 シルク・ドゥ・ソレイユとの契約の中に、
 “ビッグトップ内の温度は何度から何度の範囲”
 と、定められているんです」

こちらの計器では、なにを?

「ショーの音のレベルを監視しているんです。
 場所によっては、近隣に
 住宅地のある会場もありますので、
 ご迷惑がかかるといけないからです」

自分たちの音を自分たちでチェックするんですね。
お客さんが騒いでも、影響があるんですか?
「ビッグトップ内でお客さんがワーッとなると、
 デシベルの数値がビッと上がったりはします」

そういうことも、ちゃんと
チェックなさってるんですね。

(田中さんのお話、次回につづきます)


2009-04-13-MON


(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN
Photos:Marie-Reine Mattera ,Richard Termine
Costumes:Dominique Lemieux © 2005,2007,2008 Cirque du Soleil © 2007 Fuji Television