糸井 脳は頑固になりがちという話、
やっぱり聞きたかったんです。
池谷 脳は、自分が見ているものが
すべてだ、と思ってしまうし、
人に教えられたりとかすると、
先入観を持たずには見られないという……
そういう性質がどうしてもあるんです。
それを、どう打ちやぶったらいいのか、
という問題になるわけですね。
もちろん、答えはまだ出ていませんが。
糸井 ぜんぶの先入観を打ちやぶると、
きっとヘンになっちゃいでしょうし。
池谷 人格が破壊しちゃえばまずいわけです。

ただ、ある程度何かを発見していったり、
新しい自分を発見したりでもいいですし、
科学的な真実を発見していくという時も、
ぼくはやはり頑固な頭をときほぐすというか、
ちがう視点を加えてあげるというところから、
スタートしようとはしています。

何かを発見した時には、かならずそういう
「ちがう視点」があることに思いあたるので。
糸井 ただ単に掘り進めるだけではない、
「ジャンプする瞬間」というのがあると、
おもしろいなぁ、と思いますよね。
池谷 「フェイズシフト」と言うんですかね……
連続でというよりは、
一気にものごとが変わる瞬間があって、
確かにそこには興味があります。
糸井 うん。
ドラマとかでもよく出てくるし、
快感があるからその跳躍がほしいけど、
ただ、これももしかしたら、
「何もしないで跳躍があると思うなよ」
ということが言えるのかもしれません。

「イヤなことをぜんぶしなくても何かになれる」
「誰も認めてくれないけど自分は何かの天才だ」

こういう人は、けっこう多いですよね。
ぼくもどちらかというとそういう人で、
だからそれに文句を言えないんだけど、
でも、それではやっぱり変わらないよ、
ということが、
最近の暗記と計算でわかりました。

自分を変えることができるかもしれない……
そういうヒントが、脳の話をしていると、
たくさん出てきますよね。
『海馬』という本がみんなに受け入れられたのも、
きっとそういうところがあるんじゃないかなぁ。
「あなたが想像しているより、
 あなたは変わりうる存在なんだ」と言うか。

(つづく)
2005-07-18-MON
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