海馬。
頭は、もっといい感じで使える。

第5回 脳は疲れない!


前回と今回は、少しだけ特別篇をお送りしています。
『海馬/脳は疲れない』単行本から抜き書きしますので、
発売前のイントロダクションとして、お楽しみくださいね!

・・・抜き書きをするとは言え、
たっぷり300ページの本からの抜粋ですから、
ごく一部の量しかご紹介できないのが残念なのです!

本では、次々に、目からウロコの会話が進みます。
よろしかったら、ぜひ手に取ってくださいませ!!
できれば一気にガーッと読んでいただきたいですね。
そして、あなたが最後のページまで辿り着いた時には……
ほんの少し、まわりを見る視点が変わっていると思います。

今日抜き書き紹介をするところは、
「脳は疲れない」という話題。さっそくどうぞ!






<※『海馬』 第1章より抜粋>


糸井 考えが煮詰まった時に、
人は「脳が疲れる」とかよく言うけど、
あれを池谷さんはどう思いますか。

池谷 脳はいつでも元気いっぱいなんです。
ぜんぜん疲れないんです。

糸井 おおおおおぉっっっっっ!
池谷 脳が止まってしまったら、
体肢も五臓六腑もぜんぶ動きがストップします。
寝ているあいだも脳は動き続けて、
夢を作ったり体温を調節したりしています。
一生使い続けても、疲れないですね。
疲れるとしたら、目なんですよ。

糸井 なるほど。
考えごとをして疲れを感じた時は、
あれは脳が疲れているわけではない。
だとしたら、
「三〇分休憩して疲れを取って」
という考え方をしないほうがいいですね。
目の疲れだとか、
同じ姿勢を取った疲れを補うことのほうが、
実践的なわけだ。

池谷 はい。
糸井 じゃあ、姿勢を変えたり
眼球を休ませたりするためには、
動きながら考えるのって、すごくいいですか。

池谷 はい。
実はぼく、それをよくやってるんですよ。
まわりに「うるさい」って言われますが。

糸井 「脳は疲れない」と知るだけで、
違う休息の方法が思い浮かぶ。

池谷 ぼくは、パソコンの前にいすぎて
疲れたなぁと思う時には、
席を立って歩き回りながらも、
同じことを考えつづけます。

糸井 わかります。
「いったん忘れる」っていうのが、
いちばんよくないんですよ。
企画を考えている時なら、
いったん忘れないで、
考えたまま違うことをするのがいいと思う。
ぼくの場合、トイレに行ったりするのですけど。
経験則だけど、
「考えつづけると、必ず答えが出る」
と信じると、いつもいい結果になる。

池谷 信じることも、重要でしょう。
自分で自分をだまして、
その自分が心地よく動けるというのは、
とても大切だとぼくは思います。

糸井 まずは、「脳は疲れない!」ですね。
これは、覚えておきましょう。
それだけでも、ずいぶん考えが違ってきます。

池谷 ある作家の話で、
「区切りのいいところまで書いて終わりにして、
 あとの続きを書きはじめるのはとても難しい。
 それよりも、区切りのいいところから
 あと数行を書いて休憩をとったほうが、うまくいく」
と聞いたことがありますが、それを聞いても、
いかにほんとうの休憩がよくないかがわかりますよ。

糸井 「脳は疲れない」を聞いて、
ぼくらが迷信のようなものを吸収しすぎて、
いかに間違っていたかがわかります。
「休む時は、休むんだ!」
なんて、あれは妙に説得力があるもの。
そういうことが、たくさんあるんだろうなぁ。

「休まないでほかのことをする」
という内容で言うと、ぼくの場合は
自動車の運転とかパチンコ屋がいい。
考えているテーマと関係のない刺激があるおかげで、
それまでの自分の分類にズレが出てきますから。

考えている時って、
分類がどうしても固定しちゃうんですよ。
そんな時にクルマを運転して、
例えばものすごいピンクの色の洋服を着た
派手なおばさんが前にあらわれるとしますよね。

そうすると、ひとつのことを考えていながら、
「すげぇピンクだぜ」とか、ふと思うんです。
このピンクっていうような余計な考えが混じると、
それまでの分類にズレが出て、
おかげで考えていることを
別のところから眺められたりしはじめるんですね。
いままで考えていたことに、
色っていう要素を付け加えたらどうなるだろうとか。

大家族の中に秀才が育つとよく言われますが、
それも、まわりに
集中を邪魔をするものが多いからかもしれません。

ぼく、居間で仕事をしているんですけど、
テレビつけっぱなしで、読みかけの本を置いて、
かみさんが何か別のことをしていて、みたいな……
そういうふうになっていたほうが気持ちがいいんです。

池谷さんの言い方で言うと、
ものとものとの「つながり」に修正を加えるというか。

池谷 糸井さんは、偶然から生まれる修正を、
すごく大切にされていますね。
実は、脳のはたらきも
ほとんどの部分が無意識の動きです。
無意識なうちに、いろいろなものごとを
かなり適当にランダムにくっつけています。

糸井 試しにやってみる、みたいに?
池谷 はい。すごくやってるんです。
その典型が「夢」です。
じつは、夢は記憶の再生なんです。
その証拠に、フランス語を喋れないぼくが、
フランス語をペラペラしゃべる夢を見ることは
絶対にない。記憶がないから。

夢には、「記憶にあるもの」しか出ない。

ただ、いろいろな組みあわせをしているのです。
トライとエラーのくりかえしですけど、
無意識では常にそんなことをやっています。






(※いまご紹介している部分は、単行本のほんの冒頭部。
  会話はこの後、どんどん濃くおもしろく展開、だよ!
  次回の「海馬」は、来週の火曜日に更新いたします)

2002-05-16-THU

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