BOXING
私をリングサイドに連れてって。

統一王者はメキシコの英雄
エリック・モラレス!!


7月31日(土)ラスベガスのMGMで
WBCとIBFのS.フェザー級タイトル統一戦が行われた。
WBCチャンピオンはメキシコの英雄、
エリック・モラレス。
IBFチャンピオンはエルサルバドルの英雄、
カルロス・エルナンデス。
チャンピオン同士の戦いは想像通りの激戦となった。

メキシコ人としてはフリオ・セザール・チャベス以来の
3階級制覇(S.バンタム、フェザー、S.フェザー)を
達成しているモラレスは
既にメキシコの生きる伝説となっている。
その強打と誰が相手であろうが
一切ひるまないスタイルは
メキシコ人のみならずボクシングファンなら
誰しも引きつけられる。

エルナンデスは両親がエルサルバドル出身で
同国の血を引く選手としては初の世界チャンピオン。
彼は世界王者だけではなく
エルサルバドルの瀕している飢饉や災害、
飢餓や難病等を救済するチャリティ慈善団体の
キーパーソンとして活躍するヒーローでもある。
ボクシングではヘナロ・エルナンデスと
フロイド・メイウェザーという
その時点で最強の王者に挑戦し、失敗したものの、
不屈の闘志で3度目の世界挑戦で
世界王座についた執念のボクサー。
ロス生まれの彼は非常に貧しく、
友人のガレージで生活し、
物を貰って生活していたという時期を持つ
本当の苦労人である。

この試合のポイントは
モラレスのS.フェザー級での戦いだった。
S.バンタム級(55.34kg)、フェザー級(57.15kg)、
S.フェザー級(58.97kg)と徐々に階級を上げてきた
モラレスのパワーと体力が
ずっとこの階級で戦ってきたエルナンデスに
通用するのか?
簡単にいうと体重が同じクラスでも
自然に過ごしてきた時間が違うので
力の耐久力の違いが出てしまうのはないか?
ということだった。
エルナンデスのボクシングは徹底的に接近戦。
上手さや派手さはないが
体力を全面にガツガツ前に出て、相手に接近し、
徹底的に手を出すというパワータイプ。
今回の統一戦の勝敗は
モラレスの対応力に絞られていた。

階級差におけるパワーが
どれほどまでにボクサーに影響するのだろう。
6月のデラ・ホーヤ対シュトルムが
顕著な例として挙げられる。
この試合でデラ・ホーヤは
史上初の6階級制覇を達成したが、
逆にミドル級でのパワー不足を露呈した形となった。
ボクサータイプのシュトルムの簡単なジャブでさえ
苦しむ場面があった。
その試合のパワー不足は誰の目にも明らかで
9月のビッマッチ、ホプキンス戦のオッズ現れ、
デラ・ホーヤは不利となっている。

複数階級制覇は名誉と裏返しでリスクも負う。
過去階級を上げて消えていったボクサーも山ほどいる。
KOできなくなったり、打たれ弱くなったり、
自分よりも体格、スタミナパワーの勝る選手が
ごろごろいるので当然ではある。

試合のゴングが鳴る。

予想通りにエルナンデスが突進してゆき、
モラレスが応戦。
両者体をつける感じでの接近戦となる。
特にエルナンデスは頭と肘も上手く使い、
徹底した接近戦を挑んだ。
しかしエルナンデス得意な展開を制したのは
モラレスだった。
至近距離からエルナンデスが攻撃のために
手を動かす隙をつき、急所を的確に攻撃する。
さらに必殺の右アッパーも要所で的確にヒットさせる。
相手が止まればジャブで先手を打ち、
的確に右ストレートも繰り出す。

しかしモラレスにも危ない場面はあった。
それはエルナンデスのパワーだった。
大振りのパンチがたまに当たると
モラレスは大きく後退する。
一発当たれば危ないという感じのパンチである。
ナチュラルなパワーでは
エルナンデスがやはり有利である。
このままの展開で行くと序盤はモラレス有利、
しかし試合が進むとモラレスはスタミナを失い、
次第にエルナンデスのプレッシャーに
飲み込まれるのではないか、という感じだった。

しかしこの心配は必要なかった。
モラレスは2つの戦術を駆使して
試合を最後までコントロールした。
一つは足を使い相手を空転させる。
二つめはスタミナとパンチの正確さだ。

全開に近い形で打ち合っていった序盤から中盤。
真っ向打ち合いは体力的に不利とみたモラレスは
5Rくらいから足を使い、ペース配分を行った。
足を要所で上手く使い、無尽蔵のスタミナで
相手と打ち合う場面では打ち合う。
パンチもジャブ、ストレート、フック、アッパーなど
様々なフェイントと見事なリズムで
エルナンデスの顔面とボディを捕らえる。
さらにクリーンヒットをもらうと、
2倍、3倍の手数で
ムキに見えるほどに打ち返してくる。
パンチの接点、交錯する局面全てで勝つという
気概が強く伝わってくる。
そこに「当てる」技術を上手く駆使して
見ている者を興奮させる。
脅威的なのはスタミナだ。
1Rから飛ばして12Rまでノンストップ。
決して止まらず決してひるまず、
渾身のパンチを出し続ける。
想像を絶するトレーニングと精神力の強さがなければ
ここまでの試合は絶対にできない。

初回から激しい打ち合いを演じ、最終ラウンドまで
両者攻撃を譲らなかった。
お互いのボクシングを出し切った試合だった。
結果はモラレスの3−0。
ポイントは大差だったが、
エルナンデスも納得していた。
自分のボクシングが出来た証拠だろうし、
モラレスの実力を
素直に認めることが出来たのだろう。

今回モラレスはさすがだった。
相手の得意な部分をある意味引き出しておいての
完勝に見えたからだ。
序盤、体力のあるうちにエルナンデスを懐に入れて
打ち合ったようにみえた。
さらにノーガードで挑発したり、
少なくても5Rまでは足を使わずに
正面から受け止めた。
チャンピオン対チャンピオンのプライドからなのか、
それとも祖国の英雄としてなのか。
プロとして観衆の求める試合を計算し、
その通りに真っ向から打ち合い勝っていく。
それは自身にとって厳しい戦い方だが、
ボクサーの美学ともいうべき戦い方を
リングで実践しているのではと
感服させられる試合内容だ。
3階級制覇、そして
WBC・IBF世界S.フェザー級統一王者。
すでにボクシングの殿堂入りは確実視されている
スーパースター。
負けてはいけない宿命を背負いながら、
さらに自分を挑戦へと駆り立てる。
次の挑戦はなんだろうか。
しかし今はまず激戦の休息を取って欲しい。
そして次の試合を再び楽しみに待ってみたい。


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2004-08-02-MON

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