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私をリングサイドに連れてって。

徳山衝撃のTKO負け、強打の川嶋新王者!!


用意していたメモに何も書いていない。
1R1:47秒、まさかの展開で
安定王者・徳山がリングに2度倒れ、
レフリー、ジェイ・ネイディが試合終了を宣告していた。

WBC世界S.フライ級タイトルマッチ
「徳山昌守対川嶋勝重」は衝撃の結末となった。
ゴングから出足がいいのは川嶋だった。
距離の長い徳山を牽制するように
ジャブを小気味良く繰り出す。
さらに序盤は右ストレートを2発ほど
クリーンヒットさせる。
徳山には珍しくヒットを許しているなぁ、と
思っていた瞬間、川嶋のワンツーの右ストレートが
綺麗に徳山の顎をヒットし、徳山が崩れ落ちた。
1Rはまだスタミナはあるはずだが、
立ち上がった徳山にはダメージがありあり。
そして試合再開したが、再び川嶋がラッシュをかけ、
再び右フックをクリーンヒットさせて
徳山をマットに屠った。

リマッチとなった今回の対戦。
前回は徳山が川嶋の強打を完全に封じ、
判定で完勝している。
実は前回の試合で、川嶋は腰に故障を抱え
完全な状態では無かった。
それが今回は痛みを完全に取り去る先生にめぐり合い
腰痛を完治し万全の状態で臨んだという。
100%に近い調整でキレと迫力は素晴らしく
完璧な勝利だった。

対する徳山はこのタイトルを8度防衛、
世界的にも長期政権を築いている
ボクサースタイルの象徴的な選手だ。
ジャブとフットワーク、そしてそしてスピードとキレ、
さらに長い距離で幾多の強打を空回りさせてきた
技術の持ち主である。
試合運びは観客の喜ぶ打ち合いとは逆のスタイルで
時として歯がゆさもあったが、
打たれ脆さとパワー不足という欠点を
技術でカバーして頂点に君臨してきた代表格の選手だ。

今回の結果は「まさか」の一言である。
しかし試合前TVインタビューで、川嶋陣営の大橋会長は
「徳山には致命的な欠点がある、間違いなく勝つ」
と言い切っていた。多少割り引いても
前回完敗した相手に対して言い切るのは
それなりの確信があっただろう。
その答えが川嶋の右ストレートにあると推測する。
徳山のガードが常に低く、
ジャブからの右が当てられる方法があったのだろう。

大橋会長は12年前ミニマム級王者として、
リカルド・ロペスの挑戦を受け、5RTKO負けしている。
リカルド・ロペスはその後無敗で王者のまま引退した
素晴らしいボクサーだ。
以前エキサイトマッチの取材で
そのときの状況を聞いたことがある。
ロペスは試合の中で大橋会長の癖を
見抜いていたということだった。
大橋会長は右ボディのディフェンスで
右腕を下に伸ばしてしまう(払ってしまう)癖があることを
ロペスは完全に見抜いていた。
それまでロペスは右ボディを狙うパンチを
単発で打ってきていた。
そして5R同じような右ボディ攻撃に
右腕を下に伸ばしてしまう(払ってしまう)
ディフェンスをしたとたん、
顔面に強烈な左フックを
喰ってしまったというものだった。
ロペスは左ボディフックから左顔面フックの
ダブルパンチをそのとき初めて使い、
フィニッシュに持っていったのだ。

目の前で徳山が崩れる光景を見たときに
そのエピソードがすぐに浮かんできた。
恐らく大橋会長には徳山攻略への「何か」が
明確に見えたのだろう。
それは自分自身が痛い経験をした
世界チャンピオンだったからこそ
導けるものだったのではないか。
それを弟子である川嶋に授け、この日を待っていたのだ。
川嶋本人の全ての要素プラス
陣営の的確なプランが合わさっての
衝撃TKOだった気がしてならない。

川嶋はリング上のインタビューで
「大橋会長に感謝したい」と言っていた。
その言葉に偽りはゼロだろう。
プロは結果を出してのプロ。当たり前の事実である。
しかし勝利に至るまでの果てしない道には
本当に緻密なサポートが注がれている。
紙面は、強打の戴冠と徳山陥落の見出し内容だろう。
もちろんそれもその通りだが、そこに至るまでのプロ集団の
集大成が見事な結果を残した試合だと付け加えたい。


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2004-06-30-WED

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